「東京で4者会談を」なぜ日本が中東和平を仲介? イスラエルメディアの見る動機
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河野外相のイスラエル・パレスチナ訪問を、イスラエルの各紙がかなり大きく取り上げて論評している。この記事はこれをイスラエルの英字紙の読み比べからまとめようとしていて、新しいメディアの試みとして面白いと思うのだが、導かれる筆者の推測の多くが見当はずれなので、全体としてミスリーディングになっている。惜しい。
(1)日本の提案が交渉へのアメリカの参加を前提としたことについて、イスラエル側から批判の論調がある、という筆者が示すこの記事最大の論点。もしこんな論調がイスラエルのメディアにあったらすごい変化なので、調べてみましたが、まとめ記事筆者の過剰な推測のようです。
【イスラエル側はアメリカを含めた4者会談に前向きだが、首都認定問題で仲介役の資質が疑われているアメリカと組むのは妥当ではないとの指摘も現地で出ている。】とイスラエルのi24の記事を元に推測しているのですが、英語の元記事を読むとそういう話ではないです。
https://www.i24news.tv/en/news/international/middle-east/163664-171226-is-japan-stepping-up-its-role-in-the-middle-east
該当箇所は「アメリカが叩かれている時に、火中の栗を拾いましたね」というぐらいの話です。
(2)タイムズ・オブ・イスラエルの記事が、「日本の仲介は善意ではなく経済的利益がある」と論評したという点。一応確認したらやっぱり違っていました。まとめ記事では、
【しかし、完全に善意の行動というよりは、経済利益を意図した動きであると同紙は見ている。日本が主導する「平和と繁栄の回廊」構想の中核事業である、イスラエルのジェリコ農産加工団地が10周年の節目を迎えようとしており、これに合わせた動きなのではとの見解だ。】
とあるのだが、タイムズ・オブ・イスラエルの記事は経済利益とは書いていない。
https://www.timesofisrael.com/japans-fm-said-to-invite-netanyahu-abbas-kushner-to-tokyo-peace-summit/
筆者が深読みして失敗した理由は、この工業団地が儲かりそうにないから日本企業がなかなか来てくれない、という大前提を知らないからではないかと思います。トランプ大統領の決定後、先日河野外相が他国に先駆けてイスラエル、パレスチナへ赴きました。和平の仲介役として双方から好感を受けていたようですが、交渉のメンバーにアメリカを指定するとなると、パレスチナにとってはアメリカが元の席に戻るための手助けをしているように映るため、いい気はしないでしょう。
国連の特別緊急総会で事実上アメリカへの反対票を投じた日本としては、ここでうまくバランスを取りたいところでしょうが、難しい交渉になりそうです。i24news にある原文は以下の通り。
At a time when so many actors are jostling for role of honest broker --the US, France, Russia, China, the United Nations--Japan has decided to take a side by backing its American ally, even though it could easily have stayed silent.
And in siding with the US, it has chosen to back a country whose long standing position as impartial mediator has been called into question by a critical party to any negotiations, the Palestinians.
やや不明瞭な文章ですね。とはいえ、「たやすく黙っていることもできただろう。だが日本は米国の味方につくことを選んだ。これは、決定的に重要な交渉当事者である、他でもないパレスチナ人によって、これまでの中立的仲介者としての長年の役割を疑問視され始めた米国を支持することを選んだ、ということを意味する」と言っているわけです。つまり、「日本は党派性を鮮明にしてしまったので、パレスチナ人側から中立的とみられることはないだろう」と暗にそのポジションの徒労性を指摘されていると読めると思います。