WeWork(ウィワーク)は、テクノロジーを駆使したコワーキングスペースの運用で差別化を図っている。

世界18カ国172カ所、会員数15万人

コワーキング企業のWeWork(ウィワーク)は2017年、快進撃を繰り広げてきた。
WeWorkは建物を借りてリノベーションし、シリコンバレー風の豪華なオフィスにして、そこをデスク単位、会議室単位で貸し出している。2017年だけで、WeWorkは投資家から80億ドルの資金を調達した。
同社の提供するコワーキングスペースは10月時点で世界18カ国、172カ所に広がり、会員数は15万人を超えている。また、従業員数は3000人を超える。
さらに今年の快進撃の締めくくりとして、WeWorkは11月28日「Meetup」(ミートアップ)を買収すると発表した。Meetupは、人々が共通の関心事を通じて実際に集まることを支援するソーシャルネットワークだ。
2010年創設のWeWorkは要するに、職場環境が劇的に変化しつつある状況に目をつけたビジネスだ。「素早く行動し、破壊する」を良しとするトレンドに合わせて、WeWorkは、少し費用をかけても余計な責任を負うのを避けたいという新しいタイプの企業をターゲットにしている。
WeWorkのサービスはとりわけ、成功に伴って急速に事業を拡大していきたい初期段階のスタートアップに適している。もし事業を縮小することになっても、損失を抑えられるからだ。
ほかにも、WeWorkのスペースはリモートで仕事をする多くのチームが小さな仮オフィスとして利用している(リモートでひとりだけ働く従業員が、ひとつのデスクを利用する場合もある)。

企業本社を「WeWork化」するサービスも展開

WeWorkは2017年、ロジスティクスとオフィス管理のツールをバンドルサービスとして提供開始した。これは簡単に言うと、企業本社を丸ごと「WeWork化」できるサービスだ。
「最初からそれを目指していたわけではないが、だんだんとより大規模な企業からの需要が非常に高まっていった」と、WeWorkの調査部門責任者を務めるジョッシュ・エミグは話す。こうした動きは、小さな一歩どころか大きな飛躍となっており、同社のエンタープライズ向け事業はこの1年間に370%も成長している。
しかし、企業本社を「WeWork化」するとは実際にはどういうことなのだろうか。いい質問だ。
「社外の人で、当社の事業を明確に理解している人はめったにいない」とエミグは話す。「とりわけ理解されていないのは、テクノロジーが当社事業の大きな要素であることだ」
WeWorkが競合他社には真似できないと自負するのが、その優れた運用能力だ。同社は、コワーキングスペースの構築と管理に関するすべての要素を調整する、独自のロジスティクスソフトウェアを開発した。
そのほか、カスタムハードウェアを使って、部屋へのアクセス制御(キーレスでの入室制御)などのオフィス機能を自動化する試みにも取り組んでいる。さらには、利用者の好みの高さを記憶するスタンディングデスクまで開発している。
WeWorkが200億ドルというテック企業並みの評価額を得ているのは、そのあたりに理由があるのかもしれない。
とはいえ、同社は不動産抜きには成立しないサービスを主体としているため、同社をテック企業扱いすることを疑問視する向きもある(同社はほかにも、共同住宅や早期教育、さらには波の出るプールなどのビジネスも手がけている)。
200億ドルという評価額は、不動産投資信託会社で自社が保有するビルを貸し出しているボストン・プロパティーズの時価総額(およそ190億ドル)を上回っている。いっぽう、同じコワーキング企業でWeWorkとほとんど同じサービス(無料のビールを除く)を提供するリージャス(Regus)の時価総額は20億ドル弱だ。

事業拡大に伴うバランスという課題

当のWeWorkは、自らはサービス企業であり、ほかとの大きな違いは自社が運営する多数のコワーキングスペースにオフィスカルチャーを創出できる点だと位置づけている。
「現在の当社の評価額と事業規模は売り上げの大きさよりも、われわれの熱意と精神性によるところがはるかに大きい」と、創設者でCEOのアダム・ニューマンは10月『フォーブス』の取材に対して述べている(このコメントはすぐさま、ツイッターユーザーたちによってからかわれた)。
からかいはさておき、WeWorkについては「B2B業界のスターバックス」と見るのがより正確かもしれない。企業価値ではるかに劣るリージャスと比べるより、時価総額800億ドルに迫るスターバックスのほうがふさわしいだろう。
単にコーヒーを目当てにスターバックスに行く人はいない。温かいブラウン系のインテリアやインディーズ系のBGM、世界中の店舗で同じ季節のフレーバーが飲める安心感、そうしたものを求めて店に行くのだ。
WeWorkは、オフィススペースの分野で同じことをしている。もちろん、もともとはデスクとWiFi環境を求めて行くのだが、おしゃれな内装や無料で飲めるフルーツウォーター、仕事帰りに一緒に飲みに行ける「同僚」の存在が魅力で、その後も通い続けてしまうのだ。
ただし、WeWorkが世界でビジネスを拡大し、運営するスペースが増えるにつれて、最先端のテクノロジーと居心地のよさの適切なバランスをとることは難しくなるだろう。
「WeWorkはあまりに急速に成長したため、事業を拡大し、多くのスペースを運営するなかで、グローバル規模のロジスティクスを自社で賄わなくてはならない」とエミグは言う。「そうしたスピードの速さは、当社の売りであると同時に、課題でもある」
原文はこちら(英語)。
(執筆:Sonya Mann、翻訳:高橋朋子/ガリレオ、写真:© 2010 WeWork LLC.)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.