G型×L型で考える、これから求められる人材とは

2017/12/4
ハイスピードで進む産業構造の変化。それに伴い、グローバルに活躍するG型とローカル(地域)に密着したL型に働き方の二極化が進んでいる。子どもたちの未来に待ち受ける雇用環境を想定した場合、これからの教育はどうあるべきなのだろうか。
半歩先の教育のカタチを考える場として、全国の教員向けに開催された「MANABI MIRAI MEETING2017」で、経営共創基盤(IGPI)CEOの冨山和彦氏が語った。
社会・経済・企業・大学で進む二極化
人材に限らず、あらゆる分野の二極化が世界中で進行しています。企業、経済、社会構造はもちろん、大学などもその対象です。
G型とは、世界のトップで活躍できるグループ。企業でいうとトヨタやパナソニックなどのグローバル企業で、自然科学などの研究分野もG型に含まれます。一方、地域に密着しているのがL型。物流や対面サービスなどがその典型的な産業群です。
日本においては今、非常にグローバル志向が強いので、これからのニーズは「G型」が拡大し、「L型」が縮小すると思われがちですが、実は先進国ほどLの分野で働く人が多くなっていることをご存知でしょうか。
たとえば、日本の雇用におけるL型人材の占める割合は8割、GDPでは約7割です。少し前であれば日本の雇用の約4割をグローバルな大企業が占めていましたが、年々その割合は下がり続け、現在は下げ止まっている状態です。
つまり、日本においてグローバル企業で働ける人材はたった2割しかいないということになります。
アメリカやドイツでは、以前からこのような現象が起きています。世界的にそのような産業雇用構造の変化が起きていて、これからの子どもたちはそういう社会で働いていくということです。
これからの教育を考える上で、社会が必要とする人材像を明確にするためにも、まずはこの認識を持たなくてはいけません。
2割がグローバル企業に勤めるG型人材、そのほかの8割は地域で働くL型人材となるということは、今の子どもたちが資本金10億円以上の超一流企業に就職できる確率は極めて低く、多くは中堅中小企業などLの世界で働くということです。
G型はますますグローバル化し、世界を相手に熾烈な競争を繰り広げていくことになります。つまり、ビジネスの世界でも、オリンピックでメダルを獲るようなレベルを目指すということです。
ITやAIなどが注目されていますが、そこで活躍するためのハードルはかなり高く、G型人材となりうるのは特定の才能に突出した人間だけになるでしょう。
一方でLの世界、つまりローカルな経済圏とはどういう状況なのか。
L型は確かに地味ですが、地域商圏で安定したビジネスが展開できます。L型だからいけない、というわけではまったくない。子どもたちの多くは、このLの世界で「いかに幸せな人生を送るか」を追求する。それがリアルな子どもたちの未来像です。
世界で活躍できないと本当に不幸なのか
ここで改めて考えてもらいたいのは、地方で働くことは不幸なのか、ということです。
私は、世界のどこか、もしくは中途半端な東京の会社で中途半端に働くよりも、地方で身の丈にあった働き方をしたほうがよほど幸せだと断言できます。
繰り返しになりますが、そもそもグローバル企業に入社できる人間も全体の約2割しかいないのです。グローバル企業に入り、世界で活躍できる人材など、日本全体の1%にも満たないでしょう。
圧倒的多数の子どもは、平均的偏差値の私大文系に進学し、よくて資本金10億円以下の上場企業、もしくはもう1ランク下の企業に就職して、平均して3年で辞めていきます。その後は非正規雇用で年収300万円というのが、典型的なパターンです。
東京で年収300万円の生活となると、共働きをしても、結婚も子育ても経済的になかなか厳しい条件です。実際、東京の出生率は日本で最低です。それには、年収だけでないさまざまな理由がありますが、経済的理由で子どもを諦めている家庭も少なくないはずです。
では、地方はどうなのか。たとえば、私たちが盛岡で経営するバス会社の運転手の平均年収は、約350万円です。共働きで年収600万円と想定しても、地方であれば結婚も子育ても十分できますし、ほとんどが持ち家です。
これが、地方で暮らす平均的な人材のリアルな生活で、東京で中堅的に暮らす人たちの条件と比べても幸福度が高いことがよくわかります。
日本経済全体にとってもL型産業の発展には社会的メリットが大きい。そこで働く人の収入が増えれば、年金や医療保険などの社会システムの維持への貢献、出生率の上昇、消費の増加につながります。
それに比べて、グローバル企業の社員の収入が増えるメリットはとても小さい。彼らはすでに十分な給与をもらっていますし、圧倒的少数派です。
ただし、L型産業は、慢性的な人手不足という課題を抱えており、これは先進国では共通の課題です。私たちのバス会社でも、10年前から運転手不足に悩まされています。地方では、人口そのものが減っているので、お客様もいなければ、運転手の成り手もいないのです。
この構造的な人手不足は、地方の医療、介護、小売、そして教育の分野でも起きている深刻な問題です。
少数精鋭のトップ校で優秀な人材育成を
産業構造の二極化と、そこで求められる人材の育成について考えた場合、大学では、一部のトップ校だけがG型教育に特化し、それ以外はL型大学として職業訓練校化させる。そんな構想もあっていいのではないでしょうか。
大学はグローバル化が進み、世界レベルで優秀な人材の奪い合いが起きています。そういう現状で日本の大学の状況を振り返ると、かなり厳しいものがある。
1992年の大学ランキングでは、東京大学は世界20位でした。当時10位だったスタンフォード大学の背中が見えるポジションです。
しかし、現在、スタンフォード大学は世界3位、東京大学は40位にまで転落してしまいました。これでは、将来日本の大学からはノーベル賞受賞者を輩出できなくなる。つまり、世界のトップで戦える人材を送り出せないということを意味しています。
激化する企業のグローバル競争で、ごく限られたトップクラスだけが生き残るのがG型の世界です。そこで活躍できる人材は、少数精鋭化にならざるを得ません。だからこそ、一部のトップ校に限定して高度なプロフェッショナル教育を徹底的に行えばいい。
一方、Lの世界では深刻な労働力不足の影響もあり、安定した長期雇用が見込めます。ここで必要なのは、平均的で汎用的な技能。つまり、ジョブ型スキルを持つ人材です。
G型トップ校以外の大学は、ジョブ型スキルを習得するための職業訓練校的な性格を強めることで、結果的に就職後の幸福度を高めることができます。ジョブ型のスキルがあることで転職もしやすくなるし、スキルを学び直しながら新たな技術を習得していくことも可能となるはずです。
今の日本の大学は、一部の優秀な学生以外の幸せを描けているのでしょうか。
子どもたちの半分は偏差値50以下、しかも子どもの7割が大学進学する時代です。大学のグローバル志向が、子どもたちに中途半端にG型企業への就職を目指させている。大学教育は、もう少し地に足がついた、本当に幸福な未来を考えていくべきだと思います。
21世紀の子どもたちにとって、何が本当の幸せとなるのか。今の時代の産業雇用構造、仕事、人生のあり方を見直し、社会全体の発展のためにどんな教育をしていくべきか。今こそ、私たち大人が真剣に議論すべきときです。
(編集:大高志帆 構成:工藤千秋 撮影:加藤ゆき)