【サッシャ×寺岡歩美】印象に残った教育、激論、ホリエモン

2017/12/2
【サッシャ×寺岡歩美】半年間の“PICK ONE”で得た気づき

当たり前のことを疑う

──次に、PICK ONEでこれまでに取り上げた個別の話題についてお聞きします。お二人は、印象に残った回はありますか。
寺岡 私が「いいな」と思ったのは、日比谷高校の武内(彰)校長が来られたときの「子どもが自発的に勉強する!名門高校の5つの秘訣」です。
生徒が学習に興味を持てるように、現場で取り組んでいる試みが素晴らしいと思ったし、学校の先生だけあって、人間的にも非常に素敵な方だと思いました。
武内先生のお話から「社会のあらゆることの大前提は教育だ」ということを感じました。
いろんな問題を1つずつ小さく変えていくよりも、子どもの頃の環境や身につけるスピリットを大切にするほうが、結局は社会全体の底上げにつながるんだろうな、とお話を聞いて思うようになりました。
寺岡歩美(てらおか・あゆみ)
sugar meとして音楽活動を行うアーティスト。英語・日本語・フランス語を歌い分け、ポップでアコースティックなサウンドと自在に変化する澄んだヴォーカルが各方面から好評を得ている。自身のライブ活動や楽曲制作の他、コンピレーションアルバムへの参加、CMソング、映画出演など、各方面から高い評価と話題を集めている。
サッシャ 僕も特定の回というわけではないけど、さまざまなゲストを招いていろんな話をすると、「結局は、教育だよね」という締めに行きつくことが多いと感じています。
国の根幹は人で、人の根幹は教育だと思いますす。だから社会的な問題は、ほとんど教育に行き着くんですね。
「家庭でどういう教育をすればいいの?」「今の教育はこれでいいの?」と、当たり前のことを疑って自問自答し続けることが大事だと思います。
疑ったうえで、今のままで良いと思えばそれでいい。僕も子どもを持つ親として考えるし、PICK ONEが、リスナーの皆さんが考えるきっかけになればとても嬉しいです。
サッシャ
ドイツ共和国連邦・ヘッセン州生まれ。獨協大学外国語学部卒。ドイツ人の父、日本人の母の間に生まれ、10歳で日本へ移住。ドイツ語、日本語、英語を自在に操る国際派ナビゲーター。ファンクやロックなど、ジャンルを問わず大の音楽好きが高じ、エンターテインメントの世界へ。ライブやコンサートなどの司会からスポーツの実況まで活動は幅広い。

刺激を受けた堀江さんの発想

サッシャ 特定の回で印象に残ったのは、作家の伊東潤さんと、趣味のあり方について放送で大議論になったことです。
──「趣味に熱中しすぎることは、生産性を低下させるのか」ですね。伊東さんとサッシャさんの意見が完全に分かれましたね。
サッシャ 伊東さんはアニメやゲームの「オタク文化」を挙げて、「趣味には節度が大事で、あまりに熱中するのはどうなのか。業務時間外の時間も会社や自分の利益につながるような自己啓発に充てるべきでは」と問題提起しました。
それに対して僕は、「趣味でリフレッシュできるからこそ仕事も頑張れるのだ、日本のアニメやゲームが海外からカルチャーとして評価されることに、オタクたちは一役買っている」と反論したんですよね。
寺岡 ラジオ番組であそこまで意見がぶつかるのを見るのは、初めての経験でした。放送後、NewsPicks上のコメントでも、いろんな意見がありましたね。
サッシャ 伊東さんは「頑固オヤジが1人くらいいなければ」とヒール役になってくれました。あれは楽しかったなあ、時間が足りなかったくらいです。
伊東さんにはぜひまた来ていただいて、議論の続きをしたいです。
それと、月曜~木曜の一週間丸ごと、堀江貴文さんに来ていただいた「堀江貴文スペシャルウィーク」も印象的でした。新しいものを生み出す堀江さんの発想には、やっぱり刺激を受けますね。Pick数も過去最高でしたよね。
【堀江貴文】今、街づくりに求められる「人」のデザイン
サッシャ 食べ物でも音楽でも、世の中のあらゆるジャンルのものが出尽くしている今、ビジネスを興すには「組み合わせ能力」がものを言うと思いますが、堀江さんは「これとこれを組み合わせると面白そう」と常に脳が動いている。
ああいう話は18歳くらいに聞きたかったですね(笑)。堀江さんの話は若いリスナーにとっても、自分は就職するべきなのかどうか、またどうやってビジネスをつくるかのヒントになったのではないでしょうか。
寺岡 PICK ONEで取り上げるのは、リスナーや私にとって専門外の話題も多いですから、10分間という短い時間だと、その分野のトピックを解説して終わってしまいがちです。
その中で堀江さんが「僕はこう思って、こういうアイデアを持っています」と提案をしていたのが「やはり一歩先を見ているな」と印象的でした。
堀江さんのそのスタンスを見習って、番組としても「こういう話題がありますよ」と紹介で終わらずに、「じゃあどうしたらいいのか」まで考えられればいいなと思います。
ただ現実として10分では難しいので、ゲストの方には何度か来ていただいて、深いお話をしたいです。
サッシャ そうですね、例えばビットコインだと、初回は「そもそもビットコインって何?」で終わってしまいますしね。
ちょっと時間をおいて改めて取り上げると、その変化がわかって時間軸でとらえられるようになる。何度も取り上げて続けることで、連続小説みたいになると思うんですよね。
NewsPicks上には過去の記事のアーカイブが残っているんだから、2回目以降に取り上げるときは、過去記事をまとめてリンクを貼るとわかりやすいし「読み物」としても面白いものになりそう。
寺岡 「ビットコインはこういう変遷をたどっているんだ」とわかりますよね。
サッシャ 「堀江貴文スペシャルウィーク」は季節に一度くらいの割合でやりたいですね。堀江さんの話を聞くと今の時代の流れがわかるし、聞く人にヒントや刺激を与えてくれます。
あとは、あるテーマで過去に来てもらったゲストと、反対の意見を持つ専門家にも来てもらいたい。1つのことを、いろんな角度から知るきっかけをPICK ONEから提供できたらと思います。

「若い人」が今後のポイント

──今後、来てほしいゲスト、もしくは取り上げたい話題のリクエストはありますか。
サッシャ 誰とか何とかいう特定のリクエストはないのですが、「若い人」がポイントになると思います。
「今どきの若者はなっとらん」の逆バージョンでもあるのですが、僕は今の若い人ってすごいなあといつも思っています。
いまの若い人たちは「失われた20年」で育っているだけあって、僕たちやその上の世代より、はるかにしっかりしているし頼りがいがある。
とくに今の男の子って優しいと思う。カップルの男の子は女の子をエスコートしているし、若いお父さんは積極的に子どもの面倒を見ている。
若い世代の特徴や性質は、僕たちの頃から比べると劇的に変わってきていると思うので、僕は彼らを尊敬しているし、これからを担う彼らにとても期待していいます。
だからPICK ONEでも、若い人が「今の世の中ってこれで本当にいいのかな」と疑問を持って、仕事が終わった後、友達と飲みながら話せるような話題を扱いたいと思います。さっきの教育の話もそうですね。
リスナーのマインドを変えるというのはおこがましいと思っていますが、そういう話題を毎日提供できたら、リスナーの選択肢を広げていくことはできると思っています。
寺岡 そうですね。私たちの番組がきっかけで新しいことを知ってもらったり、リスナーのみなさんの議論のきっかけになったりすると嬉しいですね。
あとは、私はIT系にすごく疎く、機械やデジタルのことが全然わかりません。
だからこそ、テクノロジー系の話題になったときは、未来のSF話を聞いているようでいつもワクワクしてしまいます。サッシャさんは、そういうジャンルにも詳しいので驚きます。
サッシャ 寺岡さんの素直なリアクションは、大半のリスナーの反応に近いはずなので、その等身大の様子がいいと思うな。
寺岡 ありがとうございます。
サッシャ ゲストは皆さん専門家なので、その専門性をめいっぱい発揮していただくことがすべてですし、発揮しやすい空間を作るのが僕たちの役割です。
緊張するかもしれませんけど、リラックスしてお話しいただけるよう、僕たちがナビゲートします。
寺岡 あと、スタジオからの景色がいいので、それも楽しんでいただきたいですね。
サッシャ 「スタジオには大きなおっさんだけじゃなく、美女もいますので」とPRしておきましょうか(笑)。
(構成:合楽仁美、撮影:遠藤素子、バナーデザイン:砂田優花)