【サッシャ×寺岡歩美】半年間の“PICK ONE”で得た気づき

2017/12/1

「人となり」が声からわかる

──NewsPicksがラジオ局のJ-WAVEと連携した企画「PICK ONE」は、今年4月に始まってから半年が経ち、放送回数は100回を超えました。今回はこれまでの振り返りと今後の展望について、番組ナビゲーターのDJサッシャさんとアシスタントの寺岡歩美さんに語っていただきます。
サッシャ よろしくお願いします。
寺岡 よろしくお願いします。
サッシャ 「PICK ONE」は、J-WAVEで放送しているラジオ番組『STEP ONE』(月曜~木曜、9:00~13:00)の中で11:10~11:20の10分間、NewsPicksのプロピッカーをゲストに招き、今を読み解く話題についてわかりやすく解説するコーナーです。
寺岡 この半年間で、本当にたくさんのゲストの方が来てくださいました。
──「PICK ONE」が始まってからここまでの半年間、まず全体的な印象をお聞かせください。
サッシャ いろいろな分野の専門家にお会いして直接話すことで、ニュースや社会情勢をいろんな視点から深く知ることができ、リスナーのためのコーナーではありますが、僕自身の学びの時間にもなっています。
それに、さまざまなゲストを迎えることは「人との出会い」という観点でも、とても財産になっています。
サッシャ
ドイツ共和国連邦・ヘッセン州生まれ。獨協大学外国語学部卒。ドイツ人の父、日本人の母の間に生まれ、10歳で日本へ移住。ドイツ語、日本語、英語を自在に操る国際派ナビゲーター。ファンクやロックなど、ジャンルを問わず大の音楽好きが高じ、エンターテインメントの世界へ。ライブやコンサートなどの司会からスポーツの実況まで活動は幅広い。
寺岡 私は普段、シンガーソングライターとして音楽活動をしています。しかもラジオでレギュラーを持つのはこの番組が初めてなので、ゲストの皆さんとの出会いは、サッシャさん以上に刺激的です。音楽活動をしているだけではなかなか出会わない方々ばかりですから。
また、NewsPicksは文字媒体ですがラジオは音声なので、ゲストの「人となり」が声から感じられやすいのも特徴だと思います。少し硬めの話題もサッシャさんが面白く誘導してくれるので、知らない分野のこともリスナーの皆さんと一緒に勉強させてもらっています。
寺岡歩美(てらおか・あゆみ)
sugar meとして音楽活動を行うアーティスト。英語・日本語・フランス語を歌い分け、ポップでアコースティックなサウンドと自在に変化する澄んだヴォーカルが各方面から好評を得ている。自身のライブ活動や楽曲制作の他、コンピレーションアルバムへの参加、CMソング、映画出演など、各方面から高い評価と話題を集めている。
──お二人自身、PICK ONEを担当したことで、ニュースの見方が変わったり新しい気づきはあったりしましたか。
サッシャ これまでニュースといえば、新聞やテレビなど大手メディアを通じて知ることがほとんどで、それが長年続いてきました。
しかし今の時代はインターネットを通じて1つのニュースでもいろんな角度、いろんな視点から知ることができる。
NewsPicksのプロピッカーでさえ、同じ分野でもいろんな視点を持った人がいますよね。
情報に敏感な人は、新聞やテレビといった昔からあるメディアもインターネットのような新しいメディアも見たうえで「真実はどうなんだろう」と知ろうとしているとPICK ONEを通じて改めて感じます。
例えば10月の衆議院選挙についても、大手メディアでは「大義なき解散」と言っていましたよね。
でも、多面的に物事を見れる人は「本当に大義がないのか?」「大義とは何なのか」というふうに、そこから一歩踏み込んで考えることができます。
寺岡 そうですね。情報収集するときって、どうしても自分が興味あるもの、手が届くものを中心に見てしまいがちです。
だから色んなエキスパートの色んな考え方に触れるのは大切なことだと、日々実感しています。
サッシャ 新聞やテレビが報道する以外のことを知れるのがNewsPicksの良さだと思うので、PICK ONEではそれをラジオというメディアで音声化し、もっとかみ砕いてリスナーにお伝えしようと心がけています。
番組では「自分がリスナーだったら、どこに疑問を持つだろう」と想定してゲストに質問しています。その積み重ねから、僕自身も多角的な視点を持てるようになりました。
寺岡 話題のジャンルも多岐にわたっていて、社会がずっと取り組まなくてはいけない普遍的な問題から、まだあまりメディアが取り上げていないニッチな話題まで扱います。
過去にさかのぼることもあれば未来を見ることもあるので、ものごとを時間軸でとらえるきっかけを提供できるのも、PICK ONEの特徴だと思います。
サッシャ タイトルコールも「未来を描く羅針盤、PICK ONE」、だしね。

ラジオの放送で終わらない面白さ

──ラジオで放送された音声を、記事化してNewsPicks上に毎日掲載していますが、お二人はピッカーのみなさんのコメントは見られていますか?
サッシャ もちろん、見ています。
──その反響をどう受け止めていますか。
サッシャ 人の興味は読めないな、と感じています。「この話題でここまで反響あるんだ」というものもあれば、スタジオでは盛り上がったのに、記事を見ると「あれ、こんなものか」というものもある。
意外なところがピッカーに刺さっていたりしますしね。
また、ゲストに招いた専門家とはまったく逆の意見がコメントに書いてあって「そうなの?」とその話題をさらに深く知ることもあります。
ラジオの放送で終わらない面白さがありますね。
寺岡 PICK ONEは、NewsPicks上でピックされた記事とコメントを元に企画を考えていますが、記事化されることでその内容がまたNewsPicksに戻っているわけですよね。そこで新たなコメントも見れる。ぐるんと回っていてとても面白いと思います。
サッシャ そうだね。ひとつの分野を例にとっても、放送したのとは逆の意見をコメントしたプロピッカーがゲストに来て……となったら、その分野を色々な視点から考えることができて、さらに面白くなるんじゃないかな。
寺岡 スタジオではどうしても3人だけのトークになってしまうので、そこにコメントがプラスされることで色んな意見に触れられるし、自分では思いもつかなかったような疑問が書かれていて、NewsPicksのコメント欄にはいつも学びがあります。
「この質問、スタジオで聞けばよかったな」と思うこともあります。
──寺岡さんは記事が上がったら、すぐコメントを書かれていますもんね。
寺岡 そこまで見ていただいてるんですね(笑)。はい、コメントを書くのは楽しいです。実はこの仕事を始めるまでNewsPicksのことは知らなかったのですが、前からNewsPicksを読んでいる友達に「ラジオの記事、見てるよ」と言われたりするので、ちょっと恥ずかしさがありながらも励みになります。

僕たちの役割は“つなぐ”こと

──サッシャさんと寺岡さんは、『STEP ONE』でコンビを組まれて約半年ですが、非常にいいコンビのように思えます。お互いにどういうところが長所だと思っていますか。
サッシャ 何だか答えるのがこっぱずかしいな(笑)。寺岡さん、先にどうぞ!
寺岡 サッシャさんの知識量にはいつも驚かされます。PICK ONEで今日どの話題を取り上げるかは、実は当日の朝の打ち合わせで初めてわかります。
『STEP ONE』全体で他コーナーの話題やゲストもあるなか、サッシャさんはそこから質問を考え、話の流れを作っていく。普通ならなかなかできないと思います。
そして、ゲストには研究者など人前に出ることに慣れていない方もいらっしゃるのですが、サッシャさんはそういう方の心を開く術を持っていて、さすがだなと感じています。
──どうやってラジオ慣れしていないゲストの心を開くのですか。10分間の短いコーナーではなかなか難しいと思います。
サッシャ 本番は短いので、始まるまでの時間で、できるだけリラックスしてもらうよう心がけています。
僕にとっても初対面の人が多いですから、どういう人なのかがつかめればコーナーを進めやすいですね。
──初対面ではどんなことを話すように心がけているのですか?
サッシャ 共通の話題があると人は安心するので、あればそれを話しますね。ないときは、その人がやっている分野について「どういうことをされているんですか」とシンプルに尋ねます。
その答え方で、だいたい相手の性格やタイプがわかります。
ゲストの方はひと言聞くと、ばーっといくつも話してくれるタイプなのか、それとも都度都度質問をぶつけないといけないタイプなのか。僕はそこを見ています。
寺岡 話の内容より答え方で測っているわけですね。
──取り上げる話題について、サッシャさんは知っていても多くのリスナーが知らないこともあると思います。その点について意識していることはありますか?
サッシャ そうですね。なるべく自分目線にならないように気をつけていますが、10分という短い時間なので、専門的な話の場合は特に導入部分を語っているうちに終わってしまいかねない。
いきなり本題に入っていいものか、どこまで深掘りすべきか、いつも悩みどころです。
そうやって話が深くなりすぎたときに、話をふっと元に戻してくれるのが寺岡さんです。
そのバランスを取ってくれるのが彼女の良いところだと思うし、すごく助かっています。
寺岡 いえいえ、知らないことが多いだけです。
サッシャ いや、それは大事なことだよ。あとはどうしても、僕だけが話すと質問や展開の仕方が男性目線になってしまうので、女性目線で質問してもらえるのもありがたいです。
──寺岡さんはラジオでレギュラーを持つのが初めてとのことですが、サッシャさんから見て、この半年で寺岡さんはどう変わったように思われていますか?
サッシャ リスナーとの向き合い方が明らかに変わりましたね。僕は、ラジオDJはリスナーと何かをつなぐ役だと思っています。
PICK ONEでいうと、僕たちはリスナーとゲストや新しい知識をつなぐ役割なわけです。カレーでいうと、ご飯とルーの間にある福神漬けみたいなイメージかな(笑)。
リスナーがラジオを聞いていて心地よかったり楽しかったりすればそれでいいと思うので、僕は番組中に自分の名前もあまり言わないようにしています。
寺岡さんもはじめは当然、番組の進行についていくのに精いっぱいでした。でも最近は「リスナーのためにラジオ番組をやっている」ということが寺岡さんの無意識の言動から感じられるようになったので、それは一緒にやっていてとても嬉しく思っています。
寺岡 なんだか照れくさいですが、ありがとうございます。
──寺岡さんは、シンガーソングライターとしての活動がラジオ番組に生きていると思うことはありますか?
寺岡 最初はその活動がどう生きるのかなかなか分からなかったのですが、最近はライブのMCが一番ラジオ番組のトークに近いと思っています。
ライブでは1時間とか2時間とか決められた時間内で曲順を考えたり、バラード曲の前には落ち着いたトーンで話してみたりします。
それと同じで、ラジオ番組でも1曲や1コーナーだけでなく、番組という「大きなショー」の流れをつかむのが大切だと感じています。
サッシャさんの進行は、曲やコーナーに合わせた話し方をしたり、逆にあえて崩したりしているのですが、そのように常に面白さを考えてショーを作っているところが、とても勉強になります。
サッシャ そういうとらえ方ができるのは、音楽家ならではだね。
(構成:合楽仁美、撮影:遠藤素子、バナーデザイン:砂田優花)