[香港 16日 ロイター] - 中国が先週、金融機関に対する外資の出資規制緩和を発表した。中国による金融セクターの一段の開放を長年夢見てきた関係者の間で、このタイミングを予想していた人は少数だ。ただ早速機会を生かそうという向きはもっと少ないだろう。

理論上は、中国の商業銀行への外資系銀行の出資比率は現行上限の20%から引き上げられる。また投資銀行は、中国側との合弁証券の過半数株を取得できる。

しかし実際には、中国の銀行のガードの堅さや分かりにくい規制体系のために、外資系銀行は規制緩和を非常に慎重な姿勢で活用していくことしかできない、と銀行関係者や法律専門家は話している。

中国は厳格な外資規制のほかにも、外資系銀行の事業活動範囲を何十年にもわたって注意深く管理し、国内銀行を保護してきた。そうした状況が一朝一夕に変わると期待する声も乏しい。

北京を拠点に中国の銀行・証券監督当局と仕事をしているある法律専門家は「出資規制の解除は問題のごく一部にすぎない。より懸念されるのは、外国勢が国内勢と平等な競争ができるのかどうかだ」と指摘した。

さらにこの法律専門家は、世界の金融業界では過去数年間で資本配分や法令順守、リスク管理といった分野で経営陣に対する外部の目がずっと厳しくなり、その影響は4、5年前よりもずっと大きくなると話す。

2008年の世界金融危機前に多くの欧米銀行は、中国の銀行に出資したが、国際的な資本規制強化に伴って大半が持ち分の売却を迫られた。この間、中国における事業基盤も期待したほど固まらなかった。

KPMGの銀行部門責任者ポール・マクシェフリー氏は、世界金融危機以降に「ほとんどの外資系銀行は本国市場や海外での重要顧客向けサービスに改めて注目し、一部ではバランスシートの修復を余儀なくされた」と述べた。

国際的な大手行で中国の銀行に対する相当規模の出資を維持している数少ない存在がHSBC<HSBA.L>で、中国交通銀行<601328.SS>の株式19%を保有している。

外資系銀行は、中国の銀行市場が5大国有銀によって支配されているという現実にも直面する。その5大国有銀は不良債権増加などで経営環境が厳しい。ある欧州系銀行のバンカーは、それだけに外資の進出拡大という変化を受け入れさせるのは難しいだろうとの見方を示した。

<合弁証券への期待>

可能性を秘めているのは外資と中国系の合弁証券かもしれない、と業界筋はみている。

外資系銀行の合弁証券への出資比率上限は49%から51%に高まり、3年以内に上限自体が撤廃される見通しだ。

昨年の利益額で見ると、最大手はシティグループ<C.N>が手掛けている合弁証券。クレディ・スイス<CSGN.S>やUBS<UBSG.S>も合弁に関わっている。

これまで外資側は経営権を握れず、他の規制面での制約もあって合弁で提供できるサービスが限られ、国内勢との競争も思うに任せなかった。外資系が関与する合弁は、中国の証券会社トップ70(利益ベース)には1つも入っていない。

一方、今後外資が経営権を持てば、事業運営の主導権を確保し国際的なネットワークと中国事業をうまくかみ合わせることができる。企業統治を強化し、「風評リスク」も抑えられる。

それでも厳しい顧客確認プログラムの実行要求や地元とのつながりの薄さからすると、こうした合弁証券が中国の国泰君安証券や中信証券といったライバルからシェアを奪えるようになるのはまだ何年も先になる、と複数のバンカーは口をそろえる。

フィッチ・レーティングスのアナリストは14日のリポートで「特に売買仲介と引き受けの分野では手数料競争も激しい。売買仲介手数料率は3ベーシスポイント(bp)弱にまで下がっている」と分析。機関投資家の案件を獲得するにはビジネス上の付き合いが重要になるが、外資勢にはそれがハードルになる恐れがあると付け加えた。

(Sumeet Chatterjee記者)