2017.11.18

赤字のメガネスーパーを復活させた「プロ社長」の経営者人生

星崎尚彦社長に聞く
メガネスーパーの星崎尚彦社長

メガネスーパーの星崎尚彦社長(51歳)を取材した。三井物産入社後、海外でMBAを取得。その後、「子どもの頃から級長だったから」という理由で経営者となることを決意。プロの経営者として様々な企業の事業を再生、業績を回復させてきた人物だ。彼は、赤字だったメガネスーパーをどう成長軌道に乗せたのか。

事業再生の名手

【強み】

理想のメガネをつくるにはどうしても時間がかかります。「眼に光を当てた時の反射が、左右とも黒目の中心にきているか」等、詳細に検査する必要がある。あっていないメガネを使い続けると、眼に負担がかかります。視力の悪化や老眼が進みかねません。

メガネ業界では、安売りが得意なチェーン店に引っ張られ、歴史ある全国チェーンも次々と価格競争に参加。そんな中、当社の強みは長年築いてきた検査技術、加工技術を使い「眼や使用用途に合った最適なメガネ」をつくることにあります。

私が入社した当時は「今まで30分かかった検査を20分に短縮しよう」といったことをやっていました。しかし私は「いや、1時間やりましょう!」と真逆の提案をしたのです。実はこれが復活のきっかけです。現在では自分専用の最高のメガネをつくるための有料検査「トータルアイ検査」が大変好評です。

【やり手】

初めて社長を務めたのは、スイスに本社があるジュエリーの会社でした。業績を伸ばしたら、仕入れ・加工の資金が追いつかなくなりました。本社の財務状況がよくなかったため日本で資金調達すると、これが本社にとって面白くなかったようなのです。「成長スピードを緩めてくれ」と有り得ない指示を出してきました。結局、知人に社長を代わってもらいました。

次に外資ブランドから出資を受け、靴の会社を立ち上げました。順調に成長したのち、ファンドに売られました。すると「1.5万~2万円のマーケットが大きいからここを狙え」という指示が来るようになったのです。

しかしこの会社は、人員も出店戦略も4万~5万円のマーケットで戦うようにできていました。おかしいと思い、異を唱えたら「後任を探してくれ」ということになりました。

次の会社では、海外のCEOが、日本で稼いだお金を送ってくれと無心してきました。何度断ってもしつこく無心してきて遂には「日本人社員をクビにしてでも送ってくれ」と言うので、さすがの私も怒ってしまい喧嘩になりました。

次に、ファンドからアパレル会社の事業再生を任され、これも成功させたのですが、別のファンドに売却されると、新しいファンドの方は自分たちでやりたかったらしく、ここも退職することになりました。

さすがに「少し仕事から離れたい」と思っていたところ、一緒にアパレルを再生したファンドに「もっとやり甲斐がある会社がある!」と言われ、それがメガネスーパーでした。

 

「なりたい人」ではダメ

【隊長】

経営者は孤独だと言うけれど、そんなことはありません。私は社員の給与以外の情報はすべて開示し、その上で社の将来をみんなで考えます。小売りは社員や店員が指示に対し納得していないと現場が混乱するのです。「いいから黙ってやれ」は禁句中の禁句。

もちろん強いリーダーシップで成果を出す経営者もいますが、長い目で見れば一時的なこと。いつか能力は劣化します。その時「何も考えずについていきます」という社員ばかりでは業績は落ちていくだけ。

私は自身が隊長となって「ホシキャラバン」と名付けたハイエースで毎週、全国を回っています。お客様の声、商品の動向などリアルな情報に触れ、スタッフと対話するためです。

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