ドコモも参入。「個人間カーシェア」は日本で流行るのか?

2017/11/15

海外で伸びる個人間カーシェア

11月8日、ドコモのカーシェアサービス「dカーシェア」が始動した。
「dカーシェア」は、「レンタカー」、カーシェアリング事業者が提供する「カーシェア」、個人間カーシェアリングの「マイカーシェア」の3つのサービスを束ねたものだ。
中でも目を引くのは、「マイカーシェア」だ。
「マイカーシェア」とは、ひとことで言うと、個人の車を貸し借りするサービスを指す。Airbnbの車版と言うとわかりやすいだろうか。
自分の車を登録すれば、車を使わないときには、ほかのユーザーに貸し出すことで対価を得ることができる。単価の設定は自由だ。同時に、ユーザーとして、お気に入りの車を各地で検索し、借りることもできる。
個人間カーシェア分野では、すでに国内では、DeNAが運営するAnycaが2年前からサービスを開始。登録会員数は9万人を突破し、登録車数は3500台を超えている。
海外では、トヨタも出資する米国のゲットアラウンド(会員数は20万人超)、パリに拠点を置くブラブラカー(会員数は2000万人超)などが有名だ。スタートアップが手がける新ビジネスとして注目が高まっている。

ハードルは「安心と安全」

ドコモの参入により、日本でも個人間カーシェアは広がるのか?
まだ課題は多い。
まず、マイカーシェア自体の認知度が低い。ウーバー、白タクが認められていない日本では、カーシェアやライドシェアという概念がそれほど浸透していない。他人に自分の車を貸す「マイカーシェア」となればなおさらだ。
次の課題は、わかりにくさ。
会員登録して、車の鍵を相手にどう渡すのか、受け取るのか、保険にどう入るのか、など初心者ユーザーにとってはとっつきにくい面もある。
車の渡し場所は、駅の駐車場やコンビニの駐車場などが一般的。専用のアプリを使って、ユーザー同士がチャットで話し合い、引き渡し場所を決める仕組みだ。いずれ車にスマートロックの機能が搭載されるようになれば、遠隔で鍵を開けることも視野に入れている。
さらに、大きなハードルとなるのが、「安心と安全」だ。
安心面では、「他人に自分の車を使わせる」ことに抵抗のないユーザーがどれくらいいるかがポイントになる。
ウーバーの場合も、自分の車に他人を乗せるが、運転するのはあくまで車の持ち主だ。それに対して、「マイカーシェア」は、車を丸ごと他人に貸し出すだけに、ある意味、ウーバーよりも敷居が高い。
「dカーシェア」などモビリティ事業を担当するNTTドコモ・ライフサポートビジネス推進部の小笠原史氏は、「40代、50代と違って、20代、30代の若い人は、自分の車を貸したり、他人の車を借りたりすることに抵抗がない」と語る。
ドコモは主なターゲットとして、若い層を想定。免許は持っているものの、今は車に乗っていないユーザーへの訴求も強めていく。「今まで車に乗る選択肢がなかった若者にも、選択肢を持ってもらいたい」(小笠原氏)。
安全面でカギとなるのは、事故やトラブルの予防・対策だ。
予防面では、個人間カーシェアのマナーなどを記したパンフレットを作成。車を渡す際のルールなどをまとめている。
また、専用のコールセンターを24時間・365日サポート体制で設置。東京海上日動の1日自動車保険により、タイヤパンクなどのトラブルを無料で補償している。
個人間のカーシェアは、トラブルが起きても、車のオーナーとユーザー間で解決する仕組みになっており、サービス業者は基本的に介入しない。それだけに、ユーザー同士の評価システムが重要になる。
マイカーシェアでは、Airbnbなどと同じように、ユーザー間の評価システムも導入。5つ星で評価できるようになっている。

レンタカー、カーシェアとのすみ分け

現時点で、ドコモは、数年以内に5000台の車の登録を目指している。
個人間カーシェアの認知度を高めるため、dマーケットやメルマガなどでの告知も強化。サービスの運用にあたっては、シェアバイクで培ったノウハウも一部活用していく。
ポテンシャルを感じているのは、地方よりも都市だ。
すでに都市では、レンタカー、カーシェアが普及しているが、「2泊3日の旅行はレンタカー」「数十分程度の移動はカーシェア」「ベンツでデートするときはマイカーシェア」といったすみ分けを一例として考えている。用途によっては、マイカーシェアのほうが、レンタカー、カーシェアより安くなるケースも多い。
「マイカーシェアは車好きの人から広がり、徐々に一般の人にも広がる構図とみている。シェアリングを文化にしていきたい」と語る小笠原氏。
車離れが進む若者の心をとらえることができるのか。ライトユーザーの若者を引き込めるのか。そこが本格普及に向けた最初の勝負所になりそうだ。
(バナー写真:iStock)