人工的に「流れ星」を作り出す。夢を形にするふたり

2017/11/17
ビジネスパーソンの運命の転機には、必ず「人と人との出会い」がある。出会いは人を成長させるだけでなく、キャリアの転換点にもなる。各界で活躍するビジネスパーソンが、自らの転機となった運命の人物と、思い出のレストランで和やかに語り合う「会食対談」シリーズ連載。(全3回)
出会う前から「真鍋さんしかいない」
──お二人の出会いについて聞かせてください。
岡島:直接お会いしたのは、1年半くらい前ですね。
私たちALEの設立は2011年で、世界で初めて人工の流れ星を人の手で夜空に流す「Sky Canvas」プロジェクトの構想を2009年頃から温めていたんです。
天然の流れ星は、宇宙空間に漂う直径数ミリ程度のチリが大気圏に突入することで発生します。チリが明るい光を放ちながら燃えることで、地上から流れ星として確認できるんです。
人工流れ星も、これとほぼ同じことを人の手で行います。
「流れ星のもと」となる粒子を詰め込んだ、600x600x800mm四方の比較的小型の人工衛星を打ち上げて、地上400キロの宇宙空間から粒を放出する。すると、その粒が大気圏に突入するときに明るい光を放ちます。これが人工流れ星です。
でも、出会う前から演出は真鍋さんしかいないと勝手に決めていたんですよ。
真鍋:そんなに前から注目していただいていたとは。ありがとうございます。
岡島:ライゾマティクスのスタッフに知人がいて、直接お会いする前から真鍋さんがかかわった作品を見ていたんですよ。素直にかっこいいし、真鍋さんの演出は私のような理系にはグッとくるんです。
感性だけで、「なんとなく」つくられているんじゃなく、綿密に計算されていて、裏にちゃんとロジックがあるのがわかる。科学を感じるんですよ。そこにすごくひかれます。
真鍋:僕も結局は理系なので、同じ理系にグッとくる、というのはあるかもしれない(笑)。
僕も岡島さんのことは以前から知っていました。共通の知り合いであるPerfumeのスタイリストの三田真一さんとは何度も一緒に仕事をしていて、飲み友達でもあるんですが、彼から「やばいこと考えてる人いるから、絶対に会ったほうがいいよ」と。
岡島:そう言われてましたか(笑)。
真鍋:いざお会いするとなって、岡島さんの経歴を調べたときに驚きました。天文学の博士号を取ってるし、ゴールドマン・サックスに入社されて、その後独立。僕とはかなり遠い世界だし、そんな輝かしい経歴で、なぜ「流れ星」を、と。
岡島:率直に言えば、昔からの夢なんです。今の事業は元上司たちも応援してくれているのですが、ゴールドマン・サックスはやっぱり数字を追うべきところで、ある意味、感情を排する必要があった。「それとは真逆のことをやっているよね」とよく言われます。
夢を夢では終わらせない、二人のやり方
──実際にお会いして、どんな印象を抱かれましたか。
真鍋:研究者っぽいなと感じました。同時に、変わった人だな、とも。
岡島:そうですか?
真鍋:変わった人は、自分では普通だと思っているものです(笑)。
岡島さんは、すごく大きな夢を追っているけど、それを夢物語で終わらせるんじゃなく、どうすれば実現できるかをちゃんと考えている。
僕もやりたいことが浮かんだら、ロジックを組み立てて、資金的な問題を解決するだけでなく、技術的な裏付けを取りながら進めていくタイプなので、そこは近いものを感じました。このやり方は、振り返ってみれば「夢を形にする」にあたって重要な要素なんじゃないかなと。
岡島:たしかにそういうところはありますね。
私の場合、まずは小型の人工衛星を使えば良いのではないかと考えて、小型人工衛星ベンチャーに相談し、小型人工衛星を専門とする先生も紹介していただきました。そのおかげで、流れ星をより明るくするための課題や、人工衛星を作るための課題が明らかになってきます。
次に、プロジェクトを形にするためには開発資金と、継続して収入を得られる仕組みが必要だと考えて、投資家やビジネスの専門家にも相談しました。その結果、人工流れ星をアートと組み合わせるアイデアや、ビジネスにする仕組み、研究開発に必要な資金などをサポートしていただくことができました。
でも、私たちからいきなり流れ星の話を聞かされて、真鍋さんみたいに「どんな見え方になるかシミュレーションできるアプリをつくりましょうか」なんて提案してくれる人は、そうはいませんよ。「実現力」でいけば真鍋さんのほうが上です。
真鍋:夢で終わらせず実現したいと思ったから、自分ができることは何かと考え、シミュレーションアプリならデータとAPIを提供してもらえたら作れると提案したんです。僕だって、最初に「流れ星をつくろうとしている」と聞いたときは、「どういうことだ?」と思いましたよ。
岡島:あのときは流れ星になる粒を運ぶ衛星にしろ、ロケットにしろ、いろいろなことがまだ全然はっきりしていませんでしたから、なおさらでしょうね。
真鍋:そうですね。面白い話もたくさん聞けたけど、宇宙や流れ星については素人なので、わからないことがいっぱい出てきて。少しでも学びたい思いがあって、関係がありそうなプロジェクトを探して、イギリスのジョドレルバンク天文台に行ってみました。
岡島:私も学生のころ、その天文台の観測データベースを使って論文を書いたんです。すごい偶然ですね。
真鍋:そこの研究者とコラボして、天文台の観測データをリアルタイムで音や光に変換するインスタレーションを行いました(blue dot festival 2017年)。天文台が想像していた以上に膨大なデータを集めていることを知り、流れ星の演出がなおさら楽しみになりました。
「きれいな見せもの」だけではない人工流れ星の可能性
──実際に人工流れ星プロジェクトが実現すると、どんな可能性が広がるのでしょうか。
真鍋:データビジュアリゼーションは僕の演出の重要な要素。データをビジュアル化するときに、わかりやすいだけでなく、格好よく、魅力的に見せたい。
このプロジェクトでは、面白いデータが大量に得られるはずですよね。流れ星を飛ばすという目的の周辺にたくさんの面白いことがある。このプロジェクトはいろいろな方面に影響を与えるでしょうね。
岡島:私たちALEのミッションは、宇宙を舞台にした新しいエンターテインメントを模索すること。そして、その技術やノウハウを生かして、科学の発展に貢献することです。
新しい技術は、根本の理論が一段階進んだところから生まれるんですよ。相対論がなければGPSはできなかったし、量子論がなければ半導体もない。
真鍋:ステージ演出にかかわる者としては、今まで絶対できなかったような演出が生まれるのが楽しみです。花火やドローンの先にある、空を使った演出。しかも自然の流れ星ではなく、人工ですからね。
岡島:プロジェクトをはじめた当初はまったく想像していなかったんですが、流れ星の話をすると、会う人会う人が、「自分だったらどういう楽しみ方ができるかな」と考えてくれるんです。それもすごく面白いですね。
真鍋:人の手で流れ星をつくるのはすごく難しいことだけど、その過程や背景を知らなくても流れ星を楽しむことはできます。だから自分のこととして考えやすいのかな。
岡島:たしかに、「宇宙開発」を身近に感じる人はあまりいませんね。
ALEのことを宇宙ベンチャーとして取り上げていただくことは多いのですが、「宇宙×エンタメ」を目指すこのプロジェクトはまだまだ認知度が低いし、理解者も少ない。
インターネットやテレビ越しに見るのと違い、流れ星は肉眼で見えるので、今後は宇宙との距離もグッと縮まりそうです。
実はこの「CROSS TOKYO」も「野菜×◯◯」という食材の組み合わせを楽しむお店なんです。野菜のクオリティが高く、いろいろな食べ方を提供してくださるので、何度来ても楽しめます。
野菜だけじゃなく、もちろんお肉もおいしいですよ。特にフォアグラハンバーグがお気に入りで、空間的にもとても気持ちがいいお店なので、会社の仲間とよく来るんです。
最先端だからこそ必要な「他者」の視点
──「プロジェクト」がお二人の出会いのきっかけですが、食事など「仕事外」の場所でコミュニケーションをとることもあるのでしょうか。
岡島:真鍋さんとは2回目にお会いしたとき、個室でもなんでもない焼き鳥屋さんに行ったんですよ。私以外みんなアート寄りの方で、みなさんの話を肴にお酒を飲むような感じだったんですが、すごく楽しかったです。
真鍋:僕たち、岡島さんそっちのけで好き勝手にしゃべってましたよね。失礼しました。
岡島:いや、それがいいんですよ。そもそも私、食事中に「当たり障りのない会話」をするのは好きじゃなくて。自分の仕事にまつわる話をしたり、異分野の人の話を聞いたりするのが好きなんです。
まぁ、お酒を飲むと楽しくなってしまって、私自身もいつも以上にしゃべってしまうんですが。
クロスファームの無農薬野菜中心のオードブル・バリエ「テロワール」。野菜のうまみを存分にいただける
真鍋:食事をしながらとか、お酒を飲みながらだと、昼間に会議室で話す内容とは絶対に変わりますね。
岡島:お酒が入ると「ぶっちゃけトーク」が出てくるじゃないですか。それがいいんだと思います。最近の悩みや、困っていることをぶちまけると、「それなら……」と思わぬところから救いの手が伸びてくる。
建前だけじゃどうにもならないことが、食事の席では進展するんですよね。
真鍋:わかります。僕らのようなメディアアート界隈の人間は、作品をつくるためにオープンソースのツールを使うことが多いのですが、その影響もあってかどんなことも「みんなで共有したい」というマインドが強いんです。
だから、会食というより、誰かと会って食事したり、お酒を飲んだりすることを「イベント化」しています。
たとえば先日も海外から有名なアーティストが来て、食事に誘われたんです。でも、「面白い話を自分だけが聞くのはもったいない」と思って、イベントの3日前くらいに告知をしてイベントにしたのですが、250人くらい集まりました。
──最後に、お二人にとって会食という場を共有する意味とは。
岡島:いい意味で心が緩んだ「ぶっちゃけトーク」によって、自分にない視点を与えてくれるのがありがたいですね。「宇宙」をビジネスにする以上、専門外の人を置いてきぼりにしない、他者の視点は大切にしています。
真鍋:僕もそれは賛成です。だから、いい仕事をするためにも、同業であれ、異分野であれ、人との交流は持つようにしています。
岡島:そうそう、最近になって、流れ星の粒の燃焼テストができるようになりました。今度、ぜひ見に来てください。
真鍋:赤坂のオフィスで、まさかそんなテストをしているなんて世の中の人は思わないでしょうね。これからも一緒にどんな面白いことができるか、ワクワクします。
(編集:大高志帆 構成:唐仁原俊博 撮影:岡村大輔)