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2017/11/10
数多くのメジャーリーガーを輩出する中南米野球の伝道師として活動する阪長友仁には、講演やセミナーで全国を回りながら、問いかけていることがある。
「教育って何ですか?」
近年の野球人口減少、そして燃え尽き症候群や小・中学生での投げすぎがたたって故障を強いられる者が多い裏には、“教育の一環”として野球がうまく機能していないからかもしれない。そうした疑念を抱いているからだ。
立教大学野球部の主将、旅行会社勤務を経て、阪長は青年海外協力隊として海外を渡り歩いた。彼の価値観、そして人生を大きく変えたのは、中南米の野球大国・ドミニカ共和国で出会った育成哲学だった。
「メジャーリーグのコーチに話を聞いて、これだけ逆算して指導しているのかと思いました。それで結果も出ています。先を見据える指導に関して、日本が参考にしなければいけないことがたくさんあります」
野球だけでなく、受験、教育のあり方をもう一度、考え直すことが必要ではないだろうか。
そう考えるが阪長が、主な活動の場としているのが大阪府の中学硬式チーム、堺ビッグボーイズだ。筒香嘉智(DeNA)や森友哉(西武)が出身で、何度かNewsPicksでも紹介している。
「子どもたちが野球をやることで、人生にとってプラスに働くような指導ができているのか。そうでなければ、野球人口を増やす必要はない」
堺ビッグボーイズのあり方は、中学硬式野球界で極めて異質だ。
週末の全体練習は昼までしか行わず、目の前の結果よりも10年後の成長を求める。だから試合では思うように勝てないが、将来の飛躍という意味で練習方法は合理的で、グラウンドには笑顔があふれる。まるで、ドミニカのグラウンドを見ているようだ。全国で野球人口減少が進む中、小中学生選手が近隣だけでなく車で4時間かけて通ってくる。
その理由は、堺ビッグボーイズの理念が、教育の目的を突き詰めた形だからと言えるかもしれない。
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コメント
注目のコメント
本当にその通り。「この子の将来に本当に役立つか」。子どもに関する仕事に携わる人は、ここを見失ってはいけない。
どの学校でも、一番練習が厳しいのが野球部、という土壌があるので、良い面としては、雇ってみたときに「苦しいことにいちいち愚痴を言わない」「やり抜く精神力がある」みたいなことは、あるとは思う。
ただ、大きな構造として、甲子園という夢のゴールの一勝負に向かってすべてが出来上がっているので、ものすごいハードな練習をしてきた子たちが、夏を過ぎると気持ちも途絶え、ブクブク太っていったりする。20歳も過ぎると、腹の突き出た元高校球児も多い。
「鍛える」ことばかり慣れて、「自分の健康を管理する」という一生続く最も大切な視点が、ゴッソリ欠落していると思う。
こういう本質的なことを考えている指導者のビジョンが、どんどん広がってくれることを望む。人生は常にリーグ戦。それを踏まえて野球界もトーナメントではなくリーグ戦を増やしてもらいたい。野球児の母としては、本当にそう思います。
とにかく、小さいうちは野球を好きになってもらいたい。ガツガツ怒られることで怒られ慣れたというメリットはなくもないけれど、うちの子も一時「野球を辞めたい。好きかどうかわからない」と漏らしたこともあった。短期の勝利に目を奪われず、長い目で見たときに少年期の「好き」を育てて欲しいと切に願います。
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