京都「いちげんさんお断り」に学ぶ、SNSマーケティング戦略

2017/10/25
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
25日は、ファッション業界におけるSNS戦略の第一人者、ナカヤマン。さんが出演。ファッションの領域に特化したデジタルエージェンシー「スクリイム・ラウダア」代表として、ルイ・ヴィトン、グッチなどのラグジュアリーブランドから、GUなどのマスブランドまで、幅広いパートナーと活動するマーケターであり、アーティストでもいらっしゃいます。
今日は、「『いちげんさんお断り』の真実 京都の食文化、その訳あり」(京都新聞)を題材に、京都の「狭く、深い」文化に学ぶ、ブランディング戦略についてお話いただきました。
POINT 1:
舞妓さん芸妓さんが行き交う、京都・祇園の花街。客の求めや好みに応じ、お座敷に芸妓や料理といった全てを手配・提供するお茶屋には、いまだに「いちげんさんお断り」「ツケ払い」などの文化が色濃く残る
「なぜこの記事を選んだかというと、ボクは京都出身なんです。お茶屋さんにも伺うので、書かれている内容はよく分かります。そして生業にしているデジタル戦略の仕事にもリンクしていると思いました。
例えば、SNSを用いたプロモーションでは『深さ』の議論が重要です。どれだけ深く情報が届くかという点に、SNSを用いる意義があります。
マス広告の方が広く届く。反面、浅い。今の時代においては、それでは購入は起こりません。だからこそ、対象を狭めることで深さを生む、という選択肢がある。そこについても書かれていたので、この記事を選びました」(ナカヤマン。さん)
POINT 2:
間口を狭くすることで得られるものがある
「『いちげんさんお断り』は『狭く、深い』事象のメタファーだといえます。入り口はどうしても狭くなる。ただ、ハイクオリティなサービスを追及すると『色々な人が来ても対応できない』のも真理です。提供対象を広げると、元々のファンが離れたり、関係性が浅くなったりもします。
どういうバランスを選ぶかは、商売に寄りけりでよいと思います。ただ、ひとつの極論というのは美しく、参考にもなります。その意味で、京都が選んだ『狭く、深い』文化は価値があると思います」(ナカヤマン。さん)
「『狭く、深く』のメリットは何でしょう?」(サッシャさん)
「ブランディングの成功でしょうか。皆さんが欲するものが、そこにあります。我慢の結晶によって、長寿のブランドは生まれます。分かりやすくSNSに例えるのなら、固定ファンから毎回、高いコンバージョン(※顧客見込みから顧客への変換率が高い状態)で、多数の『いいね』や『コメント』が付く状態。これを『エンゲージメントが高い』といいますが、この本来の言葉どおりの状態が『狭く、深く』によって生まれます」(ナカヤマン。さん)
POINT 3:
高いエンゲージメントを実現するには本質を追求することが大切
「SNSには広く拡散させるものというイメージがあります。SNSで広げることはできるのでしょうか?」(寺岡さん)
「こちらも本質に立ち返ったほうが分かりやすいですね。デジタル化が担うのは往々にして、拡張や効率化です。SNSは友だち関係やファン構造を拡張・効率化するもの。実際に人と会うよりも、簡単につながれる。多数と交流できる。つまり、元々ある実力に対して、数倍のチャンス、効率化ができるというものでしかありません。本人にポテンシャルがないとゼロはゼロ。そこに気づいて必要な努力に特化することが、実は『拡張・効率化する装置』をうまく使うコツなのです」(ナカヤマン。さん)
「記事を読むと分かりますが、京都の『狭く、深い』の背景には文化があります。決してビジネススキーム先行で作られたものではなく、おもてなしの気持ちの積み重ねがひとつの文化を形成している。その文化が『美しい』とか『楽しい』というポジティブな形容詞で捉えられ、離れられないブランドになったーー。その点でもまた、皆さんの参考になるかと思います」(ナカヤマン。さん)
今回のニュースをはじめとしたナカヤマン。さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
26日は、グロービス・キャピタル・パートナーズのベンチャーキャピタリスト、高宮 慎一さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください