起業家、科学者、アーティスト必見。『ブレードランナー 2049』が問う【人間】の定義
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本日公開のブレードランナー2049.手鏡映画.
映画内で出てきた色々なSciFiについて,研究視点から考察をリストアップしてみました.専門用語まじりの英論文で紹介するのは読み手にも手間がかかるので,できるだけ国内の研究成果からお話します.
本作では,主観的な意識(魂)をレプリカントの生と死によって表現する場面が多々見受けられました.なかなか主観的な意識を他者が客観的に定義できないため,研究者も意識について定義しかねています.
その定義に大きな問題提起をもたらしているのが本作なのでしょうね.
代表的な研究2つを挙げてみます.
[意識(魂)の定義]
哲学:TED talk哲学者ジョン・サール「意識ー私達人間に共通するもの」
https://goo.gl/n2GudS
生理研研究会2017意識の脳内メカニズム
https://goo.gl/pc2jy5
哲学者ジョンサールtalkは必見です.
これ観るとレプリカントについてまた違った解釈をしたくなると思います.
[人工網膜]
例の社長が使用していると思われる人工網膜.
色々と提案はされ続けていましたが,今年その効果が国内でも発表されていました.医療機器としては2021年に承認を目指しているので,そんなに未来の話はないのですね.もちろん,その後にさらなる改良があるのでしょう.本作では多眼網膜なのでAugmented Humanでもあります.
阪大 不二先生
https://goo.gl/WV3ugW
[空飛ぶ車]
もう各所で開発が進んでいますが,どちらかというと小型の飛行機になるのでしょうか.ただ,本作の空飛ぶ車はKittyに近い挙動でした.
Kitty Hawk Flyer動画 https://goo.gl/jH5rM2
その他の空飛ぶ車まとめ https://goo.gl/VvRMx9
[3Dディスプレイ]
3Dディスプレイは,小型化が難しそうですね.まず屋外での光量が問題です.
ただ,小型プロジェクタはもう一般的なので,光学モデルの問題が今後の課題となるのでしょう.
電通大 小泉先生
https://goo.gl/9J3Z9y
その他にも語り尽くせないポイントがありますが,この程度にいたします.
個人的には,本作の意識(魂)の表現が気になってたまりませんでした.
どうにもこうにも3回は観ないと.実はもう試写会で見てきました!
前作から大好きだったので、30年以上たって一体どんな続編が……?と期待していたら、期待以上。取材のときは玉城さんとも「あのシーンぐっと来ましたね」と感想トークに花が咲きました。
この手の映画は絶対にネタバレ厳禁だと思うので、言いたいことはいっぱいある……けど言えないのが悔しいです。
でも、ライアン・ゴズリングのカッコよさはポスターからも滲んじゃってるので、超カッコいい!! とお伝えしておきます(笑)。
これから先、また伝説になる映画だと思うので、ぜひ劇場でご覧ください。
私みたいに試写会で見た方、海外で見た方も、アツい感想をお寄せくださいね。リアルタイムで興行的には全く当たらなかったブレードランナーを見て、その後ディレクターズカット版も全て目を通していますが、本作の評価は非常に難しいです。
まず163分という上映時間はあまりに長く、しかもヴィルヌーブ監督自体冗長さを愛する人なので、1度や2度は睡魔に襲われること請け合いでしょう。
そして前作は全て定められた上の出来事で本作の主人公も、ある意味その枠の中で生き、死んで行くという一見救いのないストーリー展開は、尺の長さと相まって感動よりも陰鬱な印象を与えます。
しかし、だからといって本作は決して駄作ではなく、むしろ傑作であることが個人的には葛藤するところなのです。
レプリカントという名のこの世界のアンドロイドは、生殖能力がない以外人間とほとんど区別がつきませんが、唯一相手に共感する能力がない、という点が人間と大きく異なります。
人間と創造物の違いとは、つまり共感力なのです。
原作にはマーサー教という宗教が登場します。しかしラスト近くでこの宗教自体、実は俳優が演じたでっち上げのインチキであることが明らかになります。
しかし作り上げられた偽物であったとしても、それに共感して起きた気持ちも行動も本当のことです。では偽物と本物の境はいったいどこにあるのか。
同じように人間と、偽りの命も実はその境目はあやふやなものなのではないか?
表現の方法は違いますが、このテーマは一連の作品を通じた共通した問題提起だと言えます。
ブレードランナー2049では、レプリカントは感情面でも人間とほとんど変わりがありません。
それは「ある奇跡」のためです。彼らはその奇跡ゆえに、レプリカントが人間たろうと、ある行動をしようとしています。
しかし主人公は最後まで人間ではなくレプリカントとして、しかしレプリカントでは決してとらないであろう行動をします。
偽りの命、偽りの愛、偽りの共感、しかしそれは実は偽りではないのかもしれない。あるいはその差なんか最初から存在しなかったのかもしれない。
この物語はブレードランナーの続編ではなく、むしろ原作である「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」をベースにしたもう一本のブレードランナーだと考えると、よりしっくりくるのかもしれません。
私自身手放しの賞賛はできませんが、一方で前作のファンであるのなら、覚悟して鑑賞すべき作品でもあります。