日本で開戦、スマートスピーカー戦国時代

2017/10/27
欧米で急拡大を続けるスマートスピーカー市場。日本でも、2017年10月5日にLINEが独自開発のAIアシスタント「Clova(クローバ)」を搭載したスマートスピーカーの発売を開始した。この新市場で闘うLINEの強みや特異性は何なのか。
「Clova!」
―(グリーンのライトが光って、応答)
「今日の天気を教えて」
―東京都新宿区の天気は、曇り時々晴れ。最高気温は20度の予報です。
「Clova!」と呼びかけるだけで、反応して、まるでそこに人間がいるかのような会話が成立する―。これが、LINEが発売したスマートスピーカー「Clova WAVE」。
人工知能と音声認識・音声合成技術を搭載し、話しかけるだけで音楽再生や家電操作ができる、AIアシスタントと言われるデバイスだ。
天気予報は序の口。Clova WAVEは、4000万曲以上あるLINE MUSICの楽曲再生、ニュースの読み上げ、テレビなどの赤外線リモコンの操作などが可能。LINEアプリとも連動しており、メッセージの送受信ができるほか、一問一答ではなく連続して会話を続けられるのも特長だ。
開発に携わっている3人に話を聞いた。
「LINE」はキラーコンテンツになり得る
──2017年10月に、日本でスマートスピーカー時代は幕を開けました。GoogleやAmazon、Appleなどが参入する新しい領域で、国産のLINEだからこそできることや、他社にない強みを、まずは教えてください。
村山:スマホの登場から10年がたち、いま叫ばれているのが「ポストスマホ」です。デバイスや情報とのインターフェースが、AIの進化と相まって革命的に変化するタイミングといえるのではないでしょうか。
LINEは、音声によるインターフェースが新しいAIプラットフォームの中心的存在になると捉え、アジアNO.1プラットフォーマーとなるべく、Clovaを生み出しました。
既に市場にはスマートスピーカーがいくつも発売されていますが、その中でもただの音声リモコンになるのか、パートナーになるのかが大きなキーポイントです。
その点、LINEはこれまで培ってきたコミュニケーションプラットフォームやキャラクター性といった強みがあるため、デバイス自体にも愛着を持たせられるはず。そうなれば、日々使ってもらえるパートナーになる可能性は高いでしょう。
加えて、LINEは日本の企業だからこそ、国内トップメーカーと「海外のITジャイアントにも負けない、日本の技術やサービスを作る」という共通の目標をもって、パートナーシップを結べているのも強みの一つ。
すでに、スピーカーだけではなくClovaを搭載した新しいデバイスを大手メーカーさんと一緒に模索しています。
来年以降、スピーカーとはまた違ったClovaと連携したデバイスを提供できると思いますので、「AIアシスタントはこういう使い方もできるんだ」と、世の中を驚かせたいですね。
Clova事業開発室 サービス企画室 村山龍太郎
ローカライズではない、日本発プロダクトの意味
小城:海外製品のローカライズをする場合、ただ言葉を日本語に置き換えるだけでは、日本への定着は難しいんじゃないかと思います。日本に住む人がスマートスピーカーと自然に話してコミュニケーションを取るには、日本の文化や住環境などをしっかり考える必要があります。
日本人になじみやすい“Clovaさん”とはどんなキャラクターだろうか。「夏にピッタリの曲をかけて」と話しかけたとき、日本人はどんな曲を夏にピッタリだと感じるのかなど、日本人の感性で考えるのはとても重要。その点でも私たちが作る意義があると思っています。
私はClovaをテレビのリモコン代わりによく使うのですが、日本で多く使われている赤外線リモコンに対応させたのも、日本発プロダクトならではの発想です。
NAVER×LINEのモノ作り
──スマートスピーカーは音声認識や人工知能というソフトウェアと、ハードウェアを組み合わせたリアルなプロダクトです。LINEとして初挑戦となるプロジェクトをどのように進めてきたのでしょうか。
小城:これまでのスマホアプリとはUXが全く異なるうえに、世の中に前例の少ないプロダクトなので、そもそもどういうものが良いのかを考えるところから始まりました。
:最初は結構イメージがバラバラで、どんな世界観のモノを作っていくのか、プロダクトデザインを含めて検討しましたね。とにかく何がいいか分からなかったので、 Clovaの声も、声優さんを選ぶために全社アンケートを取ったりして。
企画が始まったのが2016年の12月で、実機のClovaが話すようになったのは2017年の春だったと思います。
小城:以降は週に1回、事業責任者の舛田淳も含めて、実際にClovaを動かしながらの議論を重ねました。毎週新しい機能を実装し、本当にこれが良いのか、もっとこうしたほうがいいのではないか、と。
──最初にClovaが話したのは何でしたか?
小城:天気予報です。初めて話したときはチームが沸きました。ずっと「動かない、動かない」と試行錯誤を続けていたので。
ようやくClova WAVEが言葉を話すようになってからは、愛着が湧いて、優しく抱きかかえるようになりました (笑)。そこから、音楽再生や、雑談など、いろんな機能を次々と乗せていきました。
:ただ、初めての発声から間をあけず、6月のLINEカンファレンスで舛田がClovaのデモを披露することが決まっていたんです。大勢が見ている前で、ちゃんとあいさつをして天気を教えて、音楽再生を成功させないといけない。だから急ピッチで機能開発とアップデートを重ねました。
結果、うまくいってホッとしたのもつかの間、8月には先行体験版のリリースを決めていたので、それから約2カ月で商品として販売できる状態まで持っていくなど、なかなか目まぐるしかったです(笑)。
村山:私は7月に入社したのですが、その開発スピードには非常に驚きました。先週うまく動作しなかった機能が、今週になるとしっかりと動作しているといったケースばかりで。
これは、既存のソリューションの寄せ集めでプロダクトを作っているのではなく、音声認識から自然言語処理など、すべての技術をNAVERとLINEで自社開発している強みが存分に発揮されているスピード感だなと思いました。
ユーザーの声をクイックに反映
──先行体験版リリース時は、どこまで機能を追加できたのでしょうか。
小城:メインは音楽で、天気やタイマー、雑談の機能もありました。それから10月の正式販売までに、赤外線リモコンへの対応やLINEメッセージの送受信、ニュース、占いなどを追加していきました。
購入いただいたユーザーさんからは、Twitterで毎日何件もハッシュタグ付きで声をいただいて、本当にありがたかったです。PO(プロダクトオーナー)として自分が担当しているコンテンツに関する投稿は随時確認し、なるべく反映するようにしていました。
:そう、だからユーザーさんに「先週より反応が良くなった」と気付いてもらえるとうれしかったですね。
最初の頃、「使えない」と書かれた投稿を見たときは傷つきましたが(笑)、徐々に「未来を感じる」などの投稿も増えてきて、体感としてはポジティブな声が多かったと思います。
今は、できるだけ早いタイミングでいろんなデベロッパーさんがClovaの機能を開発できるプラットフォームにすべく、頑張っているところです。
Clova開発室 エンジニア 杉義宏
Clovaは家族間コミュニケーションを変える
──他に、ユーザーさんからの声で印象的だったのはありますか?
村山:「先行体験版を買った本人よりも、実はその家族のほうがよく使っている」「スマホなどをまだうまく扱えない小さいお子さんでもClova WAVEには話しかけている」という声もよくあり、スマートスピーカーの可能性を再認識しました。
それから、ユーザーさんからの声ではないのですが、メーカーさんとの商談中に「孫とLINEができるなら買う」と言ってくれた担当者さんもいらっしゃいました。
LINEでつながりたい気持ちがあっても、小さなお子さんやご年配の方にはスマホというデバイスがハードルになることも多いと思うんです。
でもClovaなら、そのハードルを取っ払える。新しい家族間コミュニケーションの世界をClovaが広げてくれるかもしれません。
説明書が読めない小さなお子さんや家電操作に不慣れなご年配でも、直感的にスマートスピーカーに話しかけて何かを調べたり音楽をかけたり、メッセージを送ったりできる。それが当たり前の世界が、すぐに来るのではないかと個人的には思っています。
求む、新しい市場で未来をつくる仲間
──今後、どんな人を仲間に加えて、Clovaを進化させたいですか?
:新しい世界を作りたい人です。現時点で、日本でスマートスピーカーは浸透していません。だけど、数年後には現在のスマホのようにみんなが当たり前のように使っているかもしれない。そういう世界を作れるかどうかは、僕らにかかっている。
この挑戦をおもしろいと思える人こそ、ぜひ参加してほしいです。
また、Clovaは自社技術だけで作っているプロダクト。自分たちのコントロールのもと、日々良いものへと改修していけるのは、開発者にとって醍醐味ではないでしょうか。
Clova開発室 PM 小城久美子
小城:これからやるべきこととして、各種エンジンの性能向上や、コンテンツの作り込みはもちろん、Clovaを外部のデベロッパーが開発できるプラットフォームにすることや、他社との協業を増やすなど、とにかく山積みで、領域も幅広いです。
Clovaでは、企画ごとに自分の裁量で進めていける「プロダクトオーナー制」をとっているので、私のようにPOとして新しい価値を作りたい人は、この上なくおもしろい環境だと思います。
それに、プロダクトの幅も広いから、フィンテックでもゲームでも、どの業界出身でも活躍の場はあります。
一方、ハードを持つリアルなプロダクトなので、生産管理や物流などに関わっている人や、組み込み系のバックグラウンドを持つエンジニアなどにも来ていただきたいですね。
村山: 私は事業開発として、メーカーとの協業提案をしているのですが、よく「AIアシスタントを活用することで、どういうメリットがあるのか」や、「会社としてAIを使った新規事業を作る必要があるが、具体的に何をしたらよいか分からない」といった声を聞きます。
今までなかったモノを作るので、そのメリットや描ける世界観、広くユーザーに届ける方法などを、技術的な実現性や背景を踏まえながら、パートナーとゼロから考えてサービスをグロースさせる必要があります。
その点では新しいテクノロジーを活用した新規サービスの立ち上げ経験や事業開発経験のある方にとっては、とてもよいチャレンジになるのではと思います。
いずれにしても、Clova事業には、ありとあらゆる職種・ポジションがあるので、Clovaに未来を感じる、LINEで未来をつくりたいと思ったら、ぜひ話を聞きに来てください。
日本に新しい市場が生まれ、新しい産業が立ち上がろうとしているタイミングに携われることは、そう多くないはずです。
(取材・文、田村朋美、編集:久川桃子、写真:岡村大輔)