「最高峰のエキスパート×新規事業創出」の新しい形とは

2017/10/23
事業開発・新規事業のためのリサーチ支援を行う株式会社ミーミル。10月16日、各領域の選ばれたエキスパートが企業の新規事業創出を支援する「エキスパートリサーチ」のサービスをスタートさせた。同社のクオリティ・エキスパートとはどんな人材なのか。またミーミルのめざす世界観とは。代表取締役の川口荘史氏に聞いた。
本物のエキスパート人材だけを募る
──「エキスパートリサーチ」はさまざまな領域のエキスパートの知見と経験を生かした、事業創出の新しい形とうかがっています。
川口:ミーミルに登録した人材が、エキスパートとしてその知見を企業の事業創出プロジェクトに提供し、事業創出をバックアップする仕組みを提供します。
われわれは“本当にハイエンドなエキスパート人材”を見極め、業界の第一人者として能力や実績を評価・保証した人材を「クオリティ・エキスパート」として、広く活躍の場を提供していきたいと考えています。
──「クオリティ・エキスパート」の定義を教えてください。
まず、紹介や推薦をいただいたエキスパート人材について、リサーチ案件を紹介し、その実績が積まれ、結果としてその能力と実績を保証できる人を「クオリティ・エキスパート」として、事業創出への知見提供を依頼していきます。
──通常の人材登録と異なるのはどういうところでしょうか。
従来のエキスパート人材の登録は「自己申告制」でした。「私はこの業界の第一人者です」と言えば周りは未知の領域なので納得してしまう。またメディア発信や出版の経験をもつPR力の高い人が認知されやすい傾向がありました。
しかし、そうした方がビジネスの現場で実際に価値を出せるかどうかは別問題です。
そこでミーミルでは、業界関係者による推薦や、実績・評価の蓄積によって弊社が太鼓判を押すハイエンドのエキスパート人材をえりすぐったネットワークを構築し、弊社メンバーと共に企業の事業創出プロジェクトにコミットできるようなサービスを考えました。
現在は、医療費の増加など社会的な課題から多くの企業が新規事業の分野として一度は考える「ヘルスケア領域」の専門家をまず充実させているところです。
重要なのは業界の関係者による推薦と、個人としての実績、それも自己申告ではなく弊社が実績と認定できる客観的なものがあることです。
今は「アイデアを出す時代」でなく「事業創造にコミットする時代」です。アイデアは星の数ほど存在し、似たようなことを考える人は世界中にいる。ただプロジェクトは「人」起点ですから、事業創出の成否は「誰がやるか」に左右されます。
アイデアを業界知見で補強し、そしてプロジェクト推進の鍵を握る人材を自社チームで実働支援により補強するのが私たちの役割です。
プロジェクトベースで事業を作る
──そもそも、企業の事業創出にコミットするサービスを始めたのはなぜでしょうか。
「新規事業は、事業創出のエキスパートと、参入予定の領域に知見のあるエキスパートが組めば成功率を上げられる」という、新規事業を経験した方からの実体験や私自身が感じたニーズから出発しました。
私はこれまで、研究者から金融業界、そして事業立ち上げ・起業といった、異なる専門性が必要なフェーズを5年程度ずつ経験したことになります。M&Aのエグゼキューションや新規事業開発など、プロジェクトベースでの働き方も比較的慣れているかもしれません。
新規事業に外部から関わったり、外部人材を活用しながら事業創出にかかわる経験を通じて、さまざまな領域のエキスパートが“異なる知見”を交えながら価値創出していくことの効率性や可能性を実感してきました。
──それゆえ、事業創出のエキスパートをマッチングで補強すると。
はい。ただサービス内容はマッチングにとどまりません。ミーミルとしてプロジェクトそのものにもコミットします。オープンイノベーションばやりの昨今ですが、さまざまな企業を見ていると外部の意見を取り入れる仕組みを持つところはまだまだ少ないのが現状です。
今後、人材の流動化が進むと、雇用していない人たちでチーム組成することもより一般化し、それらをマネージしていく人材が求められるかもしれません。私たち自身がそうしたプロジェクトの核となる人材組織となることを目指しています。
たとえば、社内に知見のない領域の情報を集める際には、その領域のエキスパートが効率のよい情報収集をサポートします。情報収集に時間や人手をかけすぎなければ、ビジネスモデルの構築や検証やテストマーケティングなどにリソースを割けます。
さらに、エキスパートの中にも、さまざまなプロジェクトを通して経験知が蓄積し、より価値が高まっていきます。
エキスパートと共に新規事業を回し切る
──では、エキスパートリサーチのフローを具体的に教えていただけますか。
まず、エキスパートは登録時に我々がインタビューをし、審査をします。その後登録いただいたエキスパートに、クライアントからのリサーチ依頼をマッチングします。
そうして、クライアントに知見を提供していただくことで、実績が積み上がり、評価の上がる人が出てきます。
https://expert-research-mimir.com/
こうしたエキスパート・ネットワークのビジネス自体は、海外では市場が拡大していますが、エキスパートを多数確保してマッチングしていくこと自体が目的ではなく、法人向けの実績を積み上げ、評価を蓄積することで“本当に価値のあるエキスパート”を見極めていくことが重要です。
こうした経験知に価値を見いだし、価値を与えていくことで、経験知が取引されて流通しやすくなるからです。
そして、そういう方が弊社を介しても介さなくても大小さまざまなプロジェクトに参画していく機会が増えていく、業界の第一人者「クオリティ・エキスパート」としてブランディングする仕組みもつくりたいと考えています。「社外で出世していく」ような仕組みかもしれません。
事業創出が“散発的に起こる社会”へ
──ミーミルが「エキスパートリサーチ」によってめざす世界観について教えてください。
人材や情報、インテリジェンスの流動化を促すことです。そしてプロジェクトベースでより多くの新規事業が同時多発的に起こるインフラとなることで、よりイノベーティブな社会をつくります。
エキスパートになる方のメリットとして、外部の企業やプロジェクトとつながることで、自身も新たな視点が生まれます。会社を離れた実績が、個人に積み上がり、その知的資産を生かして新たなプロジェクトに参画できます。
ユーザーとなる企業側には、エキスパートが入ることで新規事業創出をしやすくなる環境を提供します。
イメージするのは映画の製作チームです。映画の世界ではさまざまな領域のプロフェッショナルが一つのプロジェクトに集い、新しい価値を生み出したら散り散りに去っていく。それを新規事業創出の分野でも実現したいのです。
アイデアとファイナンスと情報と知見、執行力が流動的に集まって価値を創っていく。新規事業以外でも、企業のフェーズが大きく変わるタイミング、PMI、ターンアラウンド、事業承継等でもそうした仕組みが機能すると思っています。
一企業の枠内でやるより、流動的に人がマッチングして価値を生み出すほうが効率的で、シナジーも大きい。その価値を伝え続け、イノベーティブなビジネスの世界を創り上げたいと思います。
「興味がある領域は、医師の診療における暗黙知のデータベース、診療時の診断プロセスの技術化です。社会インフラとしての医療ICT基盤を考えていく中で、コアになるのは意思決定。そのシステム化のため、必要なライブラリーやデータ構造についての設計を進めています。ビッグデータは寄せ集めではなく、個人の中の変化をとらえ、シームレスに診療を提供していくことに価値がある。私はその人ごとの生体情報の履歴、ゲノムプロジェクトの生体情報版をつくりたいと考えています」
「イノベーションは具体化がセットであり、海外ではアイデアを持っている人と事業を具体化できる人が組んで事業を始めることが多い。私は医療機器や医療現場、FDAなどの専門性を持っていますが、重要なのはインプリメンテーション。事業を推進していくこと、それらの経験を持っていることが大切です」
「新規事業には、“業界のプロ”と“新規事業のプロ”の双方が必要です。もともとの業界の知見者がもっている知識で通じるのであれば、それは既存事業でしかない。大企業の純血主義のように、社内人材だけでチームを固めるとジャンプはできません。大企業であれば、出島として分離した組織を作り、その中でプロジェクト的に人材を集めて、終わると解散するような仕組みがあっていい。そうした新規事業のエコシステム創りを目指しています」
「医療現場は非効率が大きく、また高齢化や人口減によって市場も大きく変化していきます。そうした変化の中で、最新のテクノロジーの現場応用も興味がありますが、地域の中核病院など、絶対に潰してはいけない病院をいかに残すか、その支援が私のミッション。病院支援は、顧客との線引きをするコンサルタント的なアプローチでは失敗します。病院の中のラインに、現場に入っていくことが重要であり、そうした経験からハンズオンでの経営支援を行っています」
「日本の医療現場における“医師”という専門職に対する過度の依存と、そこから発生する非効率性から脱却することが私のミッション。多死社会の到来は不可避であり、特に都市部では最期を過ごす場所が圧倒的に不足します。その背景の中で“自分らしい最期”を迎えてもらうために、医療のパラダイムシフトを進めたいと考えています」
「エキスパートの条件は、過去の経験だけでは不十分。リアルタイムで情報をアップデートし、現在と未来について把握していることが重要です。現役で医師として働き、厚労省経験を活かした行政の考えも把握でき、かつベンチャーの事業経験からそれらをビジネスワードで話すことができる。そうした医療の3領域を抑えているのが私の強みです。解決できる社会課題はベンチャーと大企業とでも異なります。プロジェクトごとに関わっていくことで、その両方を支援していきたいと考えています」
「医療ベンチャーには、法律・制度上の規制を把握する必要や諸団体との調整が必要になったりと様々な成長へのハードルが存在します。医療ベンチャー業界のオープンイノベーションを促進するべく、情報を一元化するためのプラットフォームとしての日本医療ベンチャー協会を立ち上げました。医療・ヘルスケア領域においてベンチャーが健全に成長できるための仕組みを構築し、新規産業の創出を切り拓いていきたいと考えています」
「製薬企業は、デジタルトランスフォーメーションが今後起きてきます。業界ならではの難しさがありますが、その社会的インパクトは極めて大きい。そうしたデジタルトランスフォーメーションの中から新規事業や業務プロセスの改革が生まれてくると考えています。そして製薬業界でも今後オープンイノベーションを加速していく必要があります。これまで製薬企業は外部とのコラボレーションが決して多くありませんでしたが、その風土をデジタルの面から変革していくことが私のミッションです」
(編集:呉 琢磨、構成:横山瑠美、撮影:岡村大輔)