【堀江貴文】「CMとばし」から考える動画ビジネスの商機

2017/10/18
サッシャ 未来を歩く羅針盤「PICK ONE」。200万ユーザーが使っている経済ニュースアプリ「NewsPicks」とコラボレーションして、未来を読み解くヒントになるような話題をチョイス。
今週は特別編として、月曜日から木曜日まで、堀江貴文さんをお迎えし、堀江さんがピックされた記事にフォーカスしてお届けします。
寺岡 今日は「ライブ動画戦国時代。視聴者の心をつかむのは誰だ?」(NPコミュニティチーム)を題材に、昨日に続いて、堀江貴文さんにお話しいただきます。

AbemaTVと広告

サッシャ 堀江さん、よろしくお願いします。
さっそくですが、ライブ動画についてどう思いますか?
堀江 実は先日も、AbemaTVに出演したのですが、やはりAbemaTVのようなライブ動画って、他の動画メディアと比べて広告を入れやすいなと。
例えば、YouTubeは皆さん目的を持って見るわけですよね。そこで最初に15秒とか広告が流れると、嫌な気分になるじゃないですか。
しかもユーザーからすると、スマホで見ているのに「なんでYouTubeでこんな広告を見なきゃいけないんだよ」と感じるんです。
でも、AbemaTVのような番組内の挿入動画って、みんな結構見るんですよ。
サッシャ そうですね。わかります。
堀江 AbemaTVのCMってテレビCMと同じで、CM中に視聴者はみんな休んでいるんですよ。
だけど、テレビの場合は放送時間が決まっているので、みんな録画して見ますよね。
録画したテレビ番組を見る場合は、みんなCMをとばしてしまうんです。
だから、制作側からするとテレビって、CMをとばされるのは覚悟しなければいけないわけです。
出典:AbemaTV
ただ、AbemaTVなどもそうですが、普通に見るだけでは、アプリ内でCMをとばせないようにしています。
あるいは、タイムシフト視聴機能を有料にすればいい。タイムシフト視聴で、CMはキャンセルすることができるようになるそうですしね。
サッシャ ちゃんと見てくれるという確証があるからですね。
堀江 そうです。だからAbemaTVのCMも、まあまあ売れているようです。

投げ銭でお小遣い稼ぎ

堀江 LINEライブも今度、同様の機能を実装します。ツイキャスの場合は、社長が儲けるのがそんなに好きじゃないタイプの方なので、あまりやらないみたいですね。
あとは、「SHOWROOM(ショールーム)」のような投げ銭形式のアプリケーションがあったり、他にも、最近SHOWROOMのライバルで、台湾系の「17 LIVE」というアプリがあったりします。
17 LIVEは還元率が高くてすごいんです。おそらく、SHOWROOMよりも還元率が数パーセントは高いと思いますね。
寺岡 17 LIVEも、投げ銭というのは変わらずですか?
堀江 投げ銭は変わらないです。
ただ、この還元率の違いは、規制のグレーゾーンの問題だと思います。
SHOWROOMは、ディーエヌエーという上場企業の子会社なので、コンプライアンスを厳しく順守しているようですね。投げ銭が直接配信者の懐に入らない構造になっているんです。
そして、SHOWROOM内で送金できないので、間にプロダクションを挟んで……といったことをやっています。
出典:SHOWROOM
サッシャ これは、台湾企業だから、台湾の法律にのっとって事業をやっているということですか?
堀江 おそらく、そうですね。だから17 LIVEは、インスタグラマーとか読者モデルのような子が、利用しています。
さらには、一定時間以上配信をすると、「ミニマム保証」というような制度まであるようですよ。
サッシャ そんなものまであるんですね。
堀江 はい。だから、企業もある程度、17 LIVEでフォロワーが多い子と、タレントのように契約を結んでいるようです。
金額は、たいして大きな額じゃないけど、20時間とかやれば、いくらか確実にお金が入ってくるようで、時給に換算しても、まあまあいいぐらいの量がもらえるとのことです。
サッシャ 常にフォロワーが多い子が配信し、配信料も増える。サービスとしても拡充していくということですね。

可処分時間を奪い合う

サッシャ 今後はどうなっていきますか?一応、来年には、地上波のネット配信も拡大するのでしょうか?
堀江 そうですね。僕が一番すごいなと思ったのが「DAZN(ダ・ゾーン)」なんですよね。
実は、Jリーグのアドバイザーなどもやっていまして、そこでDAZNの話を聞いていました。
僕はライブスポーツ動画って、最後にネット化するものだと思っていたんです。
サッシャ こんなに早く来ると思わなかった?
堀江 はい。ただ、インターネットのバックボーン回線(プロバイダー同士や、上位プロバイダーとの間を接続するネットワーク)の高速化の影響で、スマホの高速化と高性能化が、思ったより早く進んでいたんです。
予想以上に、そのあたりが進化して「もう時代がきちゃった」っていう感じです。
「サブスクリプションで音楽・動画を楽しめる」というところに商機を見出して、Spotifyという音楽アプリがリリースされました。
DAZNの運営会社英パフォーム・グループは次は「スポーツ動画が鉄板だよね」ということになり、DAZNをリリースしたわけです。DAZNは、いま、全世界のスポーツ動画の権利を買いまくっており、Jリーグも2017年からの10年間で2,000億の放映権契約をしました。
出典:DAZN
さらに、ドコモのdビデオとも提携したため、1年も経たずに会員が100万人を超えたんです。
僕からすれば、この流れは当たり前だと思います。それはいま趣味や思考が多様化し、「動画を見る」という、可処分時間の奪い合いになってきたからです。
でも「可処分時間の奪い合い」という意味で最強なコンテンツは「彼氏とのLINE」なんですけどね(笑)。
だからいかに「彼氏とのLINE」に勝てるかということが大事になってくるわけです。
サッシャ これは相当ハードルが高い(笑)。
堀江 なので巨額の資金を投入して、ドカンと事業をやる時代になっているわけです。

動画ビジネスの商機

サッシャ そこでいうと、僕は動画ビジネスには商機があるなと思っています。
今までのケーブルテレビや衛星放送は「設置しなければいけない」という初期投資があったじゃないですか。初期投資があることによって、よくあるのが、スポーツ大好きな男の子が10代の頃は実家暮らしで、親のお金で見ていたけれど、社会人になると一人暮らしをはじめ、見なくなってしまう。
ただ、現在はスマホがあれば、誰でも初期投資なしで見れるようになりましたから、若い人たちに対するアピールがこれまでと全然違いますね。
堀江 それもありますね。
もう1つ理由があって、実は動画配信って参入障壁がめちゃくちゃ下がったんです。
配信されている動画は、AWSのようなクラウドサービス上で動いているので、誰でもやれるようになったんですよね。
サッシャ いままでは既得権益があったり、全部スタジオを組んでやったり、いろいろやらなきゃいけなかったわけですよね。
堀江 そうですね。つまり、地上波のマスター室以降のインフラって、第三者が使えないじゃないですか。これを「上下分離」っていうんですけど、つまり地上波のような世界では上限分離がなされていないようなのです。
もっというと、インターネットには、もともとレイヤーが7つあると言われているんです。
例えば一番下の物理層と、みなさんお馴染みの一番上のアプリケーション層を例にとって説明すると、それぞれ全然違うプレイヤーがやっているわけです。
例えば、物理層だったら、ドコモやNTT、KDDIというようなプレイヤーがいる。
一方で、アプリケーション層は、僕らのようにアプリを作ったりする人たちがやっているわけです。
インターネットの世界では、その2つの層が完全に分かれているので、インターネット放送の世界でも上下分離が当たり前になっています。
そして、それぞれのレイヤーで非常に激しい競争が行われているんです。
その中で、いま一番競争が激しいのはアプリケーション層です。
サッシャ そのサービスを提供するための土台が、別のレイヤーで行われているから、いまは参入しやすい、っていうことですね。
堀江 そうです。
サッシャ なるほどなぁ。いったい今後はどうなっていくのでしょうね。堀江さん、明日は最終日ですが、よろしくお願いします。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
また、今回のニュースをはじめとした堀江貴文さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
【番組概要】
放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください。