【堀江貴文】なぜ、デザイナー主体の組織が大事なのか

2017/10/16
サッシャ 未来を歩く羅針盤「PICK ONE」。200万ユーザーが使っている経済ニュースアプリ「NewsPicks」とコラボレーションして、未来を読み解くヒントになるような話題をチョイス。
今週は特別編として、月曜日から木曜日まで、堀江貴文さんをお迎えし、堀江さんがピックされた記事にフォーカスしてお届けします。
寺岡 初回にお話しいただくのは「パナソニック、トップデザイナーを東京に集結。新事業の推進役に」(ニュースイッチ)という話題です。

パナソニックの大改革

サッシャ 堀江さん、よろしくお願いします。
堀江 よろしくお願いします。
サッシャ これはどういう話題なんでしょうか。
堀江 パナソニックという会社は、いま大改革をしようとしています。
例えば、パナソニックには、元々SAPという会社でイノベーションを推進していた馬場渉さんという方が責任ある立場で入られて、今度はパナソニックで変革を推進しています。
今、日本の家電メーカーは、世界的に全く存在感がありません。総花的にいろんな商品を作り過ぎてしまっている。
日本国内では、パナソニックの家電製品も使っている人が一定数いますが、海外に目を向けると、サムスンやLG、そして中国のメーカーが市場を席巻しています。
まず、改革のためには「総花的にいろんなものを作るのをやめよう」という話が出てきますね。
また、パナソニックは、テレビなどの家電関係を扱う松下電器と、住宅設備機器分野の松下電工が合併して出来た会社ですが、現在はどちらかというと、電工寄りの会社になっています。
テレビはすでにコモディティ化してしまい、海外ではフォックスコンのような工場が、ドーンと大量生産し、さまざまなメーカーにOEM供給しています。
テレビでは、もう競争優位性みたいなものは作りにくい。価格も安いですしね。
いまは60インチぐらいのテレビが、数万円で買えてしまう時代です。
テレビというビジネスでは全然儲からなくなってしまいました。
そんな背景から、パナソニックでは「テレビのような分野に力を入れるのをやめよう」「ホーム家電や業務用の照明、例えばスタジアムの大型LEDパネルなど、付加価値を付けて売れるプロダクトに集中しよう」という動きになってきています。
特にいまは、ホーム家電に商機がありそうですね。
(写真:Yagi-Studio/istock.com)

商機は「家のIoT化」

堀江 「家のIoT化」という話は聞いたことはありますか?
いま、IoT化というと、家電などをインターネットに接続して遠隔操作できるという文脈で「既存の家の何かを置き換える」とか、「Amazon Echoのようなホームアシスタントを設置する」という話がメインです。
でも、市場が大きいのは、新築の家なんです。
新築のマンションとか一軒家が、ビジネスとしては実は美味しい。
ITバブルの頃に「イエルネット」というベンチャーを創業した、本間毅さんという方がいます。彼は最近「HOMMA」というベンチャー企業を立ち上げて、10億円、20億円ほど資金調達しています。
彼らが狙っているのも、新築向けのホーム家電分野です。
家って、みんなとてもお金をかけますよね。一生で一番大きな買い物かもしれない。つまり、いわゆる“庶民”と言われるような人でも、何千万円もかけて家を作ります。
おそらく、これからみんながIoT化された新築の家を作るときにも、わりと多くのお金をかけて、まぁまぁいいものを入れますよね。
サッシャ たしかに普段、200万円の買い物は大きいと思いますが、200万円ほど新築の住宅の値段が上がっても、大した差ではないと考えちゃいますね。
堀江 そう。それを35年ローンといった形で分割して払うから「その程度は誤差だね」といった感じになります。本当は誤差じゃないんだけど。
つまり「新築の分野なら、気前よく買ってくれるお客さんがたくさんいる。だからそこにフォーカスしたビジネスをしよう」という話なわけです。

UI/UXデザインを進化させよ

堀江 もう1つ、このニュースで大事なことは、これまで日本の家電メーカーが全く考えていなかったApple的な動きを、パナソニックがしているということです。
それは、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を極限まで洗練させるということです。
例えば、iPhoneって、マニュアルってないですよね。「iPhoneは直感的に使えるから、マニュアルも必要ないよね」っていう考えにもとづいているのですが、日本の家電メーカーのマニュアルって、読めないぐらいの厚さがありますよね。
サッシャ 六法全書かっていうくらい、ぶ厚いですよね。
堀江 他には、例えば日本のメーカーの洗濯機を見れば分かるんですけど、どのボタンを押していいか分からないぐらい、ボタンが多い。
ホテルのテレビのリモコンも、何を押していいか分からないですよね。
寺岡 たしかに。
堀江 ラグジュアリーホテルとかに置いてあるテレビって、スイッチを入れると「ビー」って流れていて、どうすれば地上波に切り替えられるのかさえもわからない。
サッシャ そうそう。電源ボタンをもう1回押したら、テレビの画面まで消えちゃった、なんてこともあります。
堀江 「今日、あのテレビが見たかったんだ」とか、Twitterとかで「今、面白いテレビやってるよ」みたいなことってあるじゃないですか。
例えば「イチローが、最多安打を今まさに達成しようとしてる」みたいなのがあったら、やっぱりテレビで見たいですよね。
サッシャ でも、そんな環境だと、テレビのつけ方を探している間に打席終わっちゃいそうですね。
堀江 そうすると「結局、テレビもスマホでみたほうがいいよね」という状況になるわけです。
このように「スマホでやる方が簡単だ」となりがちなところを「自分たちの製品でも、もっとちゃんとしようぜ」と取り組んでいるのがパナソニックなわけです。
だから、もしかしたらパナソニックは今後すごく大きく変革するかもしれない。
そこに大事なのが、デザイナーの力です。
(写真:Rawpixel/istock.com)
サッシャ それは「製品をどうデザインするか」ということですか?
堀江 パナソニックのホームエックスチームっていうのは、半分ぐらいデザイナーなのですが、実はデザイナー主体の組織はすごく大事です。
特にIT企業や、これからIoTを手がける会社にとって、デザインは欠かすことができません。
例えば、LINEっていうメッセンジャーのサービスがありますよね。
LINEの親会社は、韓国のNAVERという会社ですが、ここはデザイナーがめちゃくちゃ強い。
サッシャ デザイナーが意見も言えるということですか?
堀江 もちろんです。意見も言えるし、会社としてデザインをすごく大事にしているから、NAVERは自社ビルを丸ごと自分たちでデザインしてしまいました。
例えば、トイレとか、机とか椅子に至るまで、全部です。
駐車場とかもすごく面白いですよ。
僕も見学に行ったことがありますが、NAVERには地下駐車場が、5フロアぐらいあります。各フロアで色やデザインを変えていて、それぞれ違う音が鳴るんです。
どこのフロアに止めたのか忘れないようになっているんですね。
まさに、使いやすさとか、居心地のよさを追求しているわけで、これはUI/UXの世界ですよね。LINEっていうアプリケーションは、だからこそすごく受け入れられた。
こういったところが、これまでのいわゆる一般的な家電になかった部分だと思います。
それを僕は、より進化させるべきだと思いますし、これから作る家やホテルは、使いやすさを前提にしたデザインにするべきだと思っています。

IoT化でホテルも洗練できる

堀江 実はこういったことの最先端を走っているのが、APAホテルや、HISがハウステンボスに作った「変なホテル」です。
ああいったホテルが、そういうUI/UX重視の世界に近づいていると思いますが、でも僕は、まだまだこの分野でやれることはいっぱいあると思っています。
例えば、10階建てのホテルで、10階にある部屋を出たときに、エレベーターが9階に止まっているのを見て「なんですぐに10階に来ないんだろう」と思いませんか。
サッシャ エレベーターのボタンを押すまで来ないからですか。
堀江 だって、IoT化されているホテルなら、僕が部屋を出たのって分かるはずですよね。
もちろん、他のフロアに人がいたら別ですが、例えば、深夜に僕がホテルの部屋を出たら、おそらくそれは何かをしに行くわけですよね。
だったらエレベーターが、僕のフロアに止まっていてくれればいいじゃないですか。
寺岡 うん。なるほど。
堀江 これって別に簡単なことです。でも、そんなこと1つ取ってみても、日本のホテルは何もできていません。
そういったところに最先端のIoT技術が入って「便利で快適、かつ無駄なものがそぎ落とされたホテルになったら面白いよね」という話です。
サッシャ なるほど。最初のパナソニックから、ずいぶんと話が広がりましたね。変えるところは、まだまだいっぱいありそうです。
では、堀江さん、ありがとうございました。また明日もよろしくお願いします。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
また、今回のニュースをはじめとした堀江貴文さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
【番組概要】
放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください。