(Bloomberg) -- 神戸製鋼所は13日、アルミニウムや銅、鉄鋼事業において、新たに9件の製品で検査データの改ざんが行われていたことを確認したと発表した。データが改ざんされた製品の納入先は従来説明していた約200社から500社へと増加。品質不正の対象製品がさらに拡大する事態となった。

国内外のグループ会社が生産する銅管やアルミニウム合金線、銅板条など5件のほか、線材などの鉄鋼製品においても4件の不正が見つかった。顧客と契約した検査データを書き換えるなどして製品を出荷していた。最も古いものでは2007年4月から行われていた。

このうち、鉄鋼製品の4件については既に顧客先と品質に問題がなかったことを確認した。現時点で追加費用は見込んでいないという。今回のデータ改ざん問題を受けての調査以前に取締役会で把握していたが、これまで公表はしていなかった。

同日会見した川崎博也会長兼社長は「ユーザーの皆様、多くの消費者の皆様に多大なご心配、ご迷惑をおかけしていることを重ねておわび申し上げる」と謝罪。データ改ざん製品において「安全性に疑いが生じた場合には迅速かつ的確に対応する」と述べ、納入先企業がリコールなどを実施した場合の費用負担に関しては相談次第だが応じる「腹づもりはある」と述べた。

福島第2に納入の配管も

東京電力ホールディングスは同日、神戸鋼子会社の神鋼メタルプロダクツから福島第2原子力発電所に納入された銅製の配管の一部にデータと不適合な製品が含まれていたとの報告を受けたと発表した。配管の両端の外径や肉厚のうち片側だけを計測し、もう片側については実際には測定せず想定される数値を記載していたという。問題の配管は交換前の未使用の状態で保管されており、原発の安全に問題はないとしている。 

この件について、神戸鋼は実際の配管の品質に問題はないものの、品質を示す書類に不備があったと説明している。

神戸鋼のデータ改ざん問題は、当初発覚したアルミや銅製品のほか、自動車ギアなどに使われる鉄粉や液晶材料などに使用されるターゲット材でも確認された。現在、国内外のグループ会社を含めて、同様の不正がなかったか調査を実施中。その過程において今回の不正が見つかった。川崎社長は12日、記者団に対して「新たな疑わしい複数の案件がある」と述べていた。

神戸製鋼の株価は13日、一時、前日比91円(10%)安の791円まで下落した。データ改ざんが発覚して以降、11日までの2日間で株価は36%下落。12日には小幅に反発して取引を終えたが、13日終値は同77円(8.7%)安の805円と反落した。時価総額は6日と比較して約4割減少した。

野村証券の松本裕司アナリストは12日付の投資家向けリポートで、データ改ざんの対象製品が広がる可能性や自動車などの主要販売先からリコールが実施され、神戸鋼が負担する可能性を今後のリスクとして指摘。株価への影響については「想定し得る全ての悪材料が織り込まれたと判断することは現時点では難しい」との見方を示していた。

【今回発表した追加事例は以下の通り】

  • 製品の品質影響について検証を進めているもの
    • 銅合金管:16年9月-17年8月/顧客数42社/700トン/検査未実施やデータ改ざん
    • モールド:16年9月-17年8月/顧客数137社/5300個/検査未実施やデータ改ざん
    • 銅管:16年9月-17年8月/顧客数28社/出荷量750トン/検査や試験の未実施
    • アルミニウム合金線、合金棒:16年9月-17年8月/顧客数2社/出荷量12.5トン/検査未実施やデータ改ざん
    • 銅板条:16年9月-17年8月/顧客数2社/出荷量31トン/検査データの改ざん
  • 製品の品質影響について検証を完了し、顧客と問題解決を確認したもの
    • 鋼線:11年6月-17年7月/顧客数1社/出荷量3525トン/検査の未実施
    • 鋼線:15年12月-16年4月/顧客数1社/出荷量306トン/検査の未実施
    • 特殊鋼:08年6月-15年5月/顧客数19社/出荷量3990トン/試験データの改ざん
    • ステンレス鋼線:07年4月-16年5月/顧客数1社/出荷量553トン/試験データの改ざん

(会社側の発表を追加して更新します.)

--取材協力: Stephen Stapczynski

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