テクノロジーの世界では、毎月のように大きな変化が起こっている。その中で目が離せないイノベーター20社から、後編では引き続き10社を紹介する。

【2018年】注目すべき革新的テクノロジー企業20社(前編)

11. OptimalPlus

自動運転車のハードウェアシステムが運転中にフリーズする、または誤作動や故障を起こすことを想像してみよう。あるいは、飛行機に乗っている時に自分のスマートフォンが発火することを思い浮かべてみよう。
後者の例は、すでにサムソンのギャラクシーノート7で実際に起きているから、簡単にイメージできるだろう。
イノベーションや電子システムへの移行が加速している今の世の中では、ハードウェアの品質が最善でない場合や欠陥が最小限でない場合には、莫大なリスクや法的責任が生じることになる。
ここで登場したのが、OptimalPlus(オプティマルプラス)だ。イスラエルを本拠地とする同社は、電子機器や半導体などの欠陥を減少させるため、ビッグデータを用いた製造分析のプラットフォームを開発した。
このプラットフォームの優れているところは、単に問題を発見して警告を発するだけでなく、それを直すために何をする必要があるかを診断し、さらには人間を介入させることなく必要なソリューションを自ら実行することである。
すべてがつながっている世の中では、システムが完全であることがこれまで以上に大切になっている。その点で、オプティマルプラスは金脈を掘り当てたと言える。

12. Pulsate

アイルランドのダブリンを拠点とするPulsate(パルセイト)は、実店舗を構える企業のiBeacon(アイビーコン)活用をサポートするため、2013年に設立された。
iBeaconは当時アップルが発表したばかりの技術で、店舗の近くでブルートゥースを使っている消費者に情報を送れるようにするものだ。たとえば、小売店がiBeaconを使えば、セールを知らせたり、アプリにロイヤルティ・プログラムの案内を表示させたりすることができる。
設立以降、パルセイトはより包括的なモバイルの小売りプラットフォームとして進化してきた。iBeaconのサポートに加え、いまでは顧客のモバイルアプリにチャットやEコマースの機能を埋め込むことができる。
現在の顧客企業には、ペイパルやテレピザ(Telepizza)、クアーズ・ライトなどがある。同社はベンチャーキャピタルの支援を受けており、2回の資金調達で300万ドル近くを調達した。

13. Rain

ロサンゼルスを拠点とする Rain(レイン)は、地域密着型のモバイル広告という課題に取り組んだ。そのカギとなるのは、ユーザーが移動している間に、そのユーザーが頻繁に利用するアプリ、たとえばインスタグラムやウェイズ(Waze:カーナビアプリ)などに広告を表示させることだ。
マクドナルドやドラッグストアのCVSといったレインのクライアントは、店舗から数ブロックのところにいる消費者にレインを使ってセール情報などを送ることができる(ウェイズでは「Drive there(そこに行く)」のボタンをタップすればそのセールを利用できる)。
もし、あるユーザーが広告を見たものの実際には購入しなかった場合、レインは同じユーザーに対して「再マーケティング」を行う。異なるアプリやウェブを通じてユーザーを追いかけるのである。
一方でレインは広告主に詳細な分析を提供して、広告主がエンゲージメントやコンバージョンレートを追跡できるようにし、広告主の投資収益が明確になるようにしている。

14. Socrata

シアトルを本拠地とするSocrata(ソクラタ)は、政府向けのテクノロジー・プラットフォームをつくっている。連邦政府や州や市の政府機関と連携し、ソクラタは政府のさまざまな記録をツールに変えている。
ダラスやボルティモアでは警察署がソクラタと組んで、警官と一般人との暴力行為を伴う衝突についてモニターし、データを報告している。カンサス州ダグラス郡では、ソクラタが年間予算をデジタル化した。マサチューセッツ州では、州の財政情報を分析・公開して、一般の人々や機関などがより簡単に理解できるようにした。
ソクラタは、全米のさまざまな政府機関にツールを提供する、あるいは作成するなどして、政府がその取り組みの成果を追跡するのに力を貸している。
同社はベンチャーキャピタルの支援を受けて2007年に設立され、現在までに5500万ドルを株式発行で調達している。

15. StartApp

ますますモバイル中心になっている世の中で、市場進出や市場への浸透、収益化のチャンスがこれまでになく広がっている。しかし、ユーザーやデータが限りなく存在するなかで、誰がそのすべてを解明できるだろうか。
ニューヨークを拠点とするStartApp(スタートアップ)は、その洞察力に主眼を置くモバイル企業で、アプリ開発企業やソーシャル・ネットワークなどの企業がユーザーを理解し、ユーザーとより良く交流し、収益化できるよう支援している。
同社はもともとモバイル広告ネットワークからスタートしたが、非常に多くのデータを集めたので、そこから得られた知見を企業に販売して活用するようになった。
同社は今では、モバイルに関するさまざまなサービスをワンストップで提供する。ユーザーの収益化やリーチのための広告ネットワークのほか、広告ユニット制作、企業がユーザーをより良く理解するためのデータ提供、コンテンツ制作などを行っている。

16. Turbonomic

ボストンを拠点とするTurbonomic(ターボノミック)は、ネットワークリソースが必要とする容量を予測し、その需要を満たすクラウドコンピューティング能力を供給する。同社はこれを行うために「オートノミック・プラットフォーム」と呼ばれるものを使っている。
オートノミック・プラットフォームは、つねに需要と供給のシミュレーションを行い、複雑なクラウド環境を自動で制御する。同社の技術を使うと、ネットワークが効率的かつ安定的になり、最終的には企業がコンピューターによる処理のより多くの部分をクラウドに移行できるようになる。
同社の技術の独自性が魅力となり、多くの投資が集まっている。ターボノミックはこれまでに1億ドル以上を調達し、最近ではシスコと買収交渉が行われていると言われている。

17. Vestmark

Vestmark(ベストマーク)は、プロのフィナンシャル・アドバイザー向けに資産管理のプラットフォームを提供する。主な顧客企業は、フィデリティ・インベストメンツやエドワード・ジョーンズなどだ。
ベストマークのソフトウェアは口座数150万、資産合計5000億ドルまで管理できる。デジタルでの口座管理であれば、株式取引のモニタリングから顧客への口座残高の報告まで、ほぼすべての業務を扱える。
しかし、なかでも最も価値がある機能はコンプライアンスだろう。関連する規制やルールがつねに変更されている業界で、顧客企業が法令を順守できるようサポートするのである。
政治が規制と規制緩和の間を揺れ動き、ルールの解釈も頻繁に変わるような時代には、コンプライアンスに関する自動的なサポートは便利な機能というよりも、事業上の必需品になる。
過去1年半だけで、同社は株式で3700万ドルを調達。その間にも、ソフトウェアのアップデートと拡張を続けている。

18. VisiSonics

メリーランド大学で10年間の学術研究を行った後、研究者たちは「3Dオーディオ」技術を2012年に事業化した。 VisiSonics(ビジソニックス)の技術は現在、オキュラスのバーチャルリアリティ(VR)のヘッドセットで、音響に使われることになっている。
ビジソニックの技術を使うと、VRの開発者たちはゲームや映像に、その場所ならではの音を入れることができるようになる。たとえば、プレーヤーの背後から迫って来る足音などだ。プレーヤーが振り向くと、その足音が今度は自分の方に向かってくるように聞こえる。
注目すべきは、この3Dオーディオの効果を一般的なヘッドホンで提供できることだ。一方で、3Dで録音するには特別なハードウェアが必要となる。使われるのは、ビジソニックが開発した球形のマイクで、同社によるとこのマイクは音や場所のデータを「きわめて正確に」記録できるという。
いずれはこうした音響は、没入型のVR体験を創造するうえで不可欠となるだろう。

19. Zebra Medical Vision

医療科学で最も価値のある情報、つまり病院の診療記録を研究者は通常入手できない。Zebra Medical Vision(ゼブラ・メディカル・ビジョン)は、莫大な診療記録を集めて分析することにより、この状況を変えようとしている。
同社の狙いは二つある。一つは、診療記録の匿名化されリスト化されたデータを、公開の研究ツールとして科学者たちに提供すること。もう一つは、新しい診断ツールを開発するため、機械学習を用いて診療記録を分析することだ。
これまでのところ、ゼブラは初期の乳がんを発見するためのアルゴリズムや、肝臓や動脈の病気を見つけ出すアルゴリズムを発表した。創業者のイラッド・ベンジャミン、イーアール・トレダノ、イーアール・グラによると、2017年後半にはさらに新たなアルゴリズムが発表されるという。
長期的には、ゼブラの疾患発見のためのビッグデータ的アプローチにより、医師がより早期に、かつ正確に診断を行えるようになる。初期の段階で診断が行えることは医療的な面でメリットがあるが、病気が進行して高価な治療を施す必要がなくなるため、金銭的な面でもメリットがある。

20. Zive

家電業界のベテラン二人が設立したZive(ザイブ)は「人間的」で「親しみやすい」デザイン哲学をソフトウェアに持ち込んだ。
同社の初めての製品「キーウィ・フォー・Gメール(Kiwi for Gmail)」は、GメールやGoogleカレンダー、Googleドライブなど、グーグルのクラウド・ソフトウェア全体をデスクトップ・アプリに変換する。
この製品により、ユーザーはウェブ・ブラウザを立ち上げることなく、巧みにデザインされたデスクトップ・アプリからグーグルのすべての機能にアクセスすることができる。
ザイブのCEO、エリック・シャショウアは言う。「ブラウザはコンテンツを見る道具としては優れている。だが、コンテンツをつくる上では限界がある」
原文はこちら(英語)。
(執筆:Dave Kerpen/CEO, Likeable Local、翻訳:東方雅美、写真:HAKINMHAN/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.