人生を方向転換しようとするとき、いきなり新しい道に飛び込んではいけない。
現状維持か、新たな道に飛び込むか
ビジネス、キャリア、結婚生活、何かの戦略など人生でうまくいかないことがあるとき、多くの人は2つの道のどちらかを選ぶ。
ひとつは変化をかたくなに拒み、うまくいっていないことをそのまま続ける道。もうひとつはすべてを捨てて、新しいことを始める道だ。何でもいいから新しいことを始めたい気持ちに駆られると、われわれは往々にして、いきなりそれまでの道を断ってしまう。
前者の道をとった場合、それはすなわち情熱も達成感も得られない退屈な人生を受け入れることを意味する。いっぽうで、後者の選択肢は人気を集めるかもしれないが、こちらはこちらでまったくの無謀な行為であることが少なくない。
筆者の友人で『Pivot: The Art and Science of Reinventing Your Career and Life』(小さな方向転換:キャリアと人生をやり直す方法と技術)の著者であるアダム・マーケルは「大きな変化を生み出す可能性をもつ、正しい方向への小さな方向転換」のことを「ピボット」と呼んでいる(NP注:もともとは、ダンスやバスケットにおける「片足旋回」のこと)。
このアプローチをとれば、いきなり劇的に変化して、それまでの道を完全に捨て去る必要がない。代わりに「自分が今いる橋の上を渡りながら、別の目標に向けて橋を架ける」ことで、少しずつ変化を起こすのだとマーケルは述べている。
「ピボット」で進むべき道をクリアに
こうした方向転換は、まず自分の進むべき方向をはっきり理解するところから始まる。
マーケル自身がピボットの必要性を自覚したときは、心臓マヒと勘違いするほどの不安発作に襲われ、妻に向かって、このままいくと君はもうすぐ夫を失うだろうと話した時のことだ。
しかし、当時の彼は弁護士として成功し、4人の子どもがいて、2匹の犬を飼い、言うまでもなく住宅ローンを抱える身だった。所有する不動産をすべて売り払って、一家でモンタナ州の山小屋へ移り住むわけにもいかない(たとえ家族がついてきてくれたとしても)。
そこでマーケルは、時間をかけてピボットを実行することにした。3年近くを要したが、目的のある変化を段階的に積み重ねた結果、彼の人生は以前とはすっかり異なるものになった。
「進むべき道がはっきり見えたら、あとはもう可能な限りの機会をとらえて、その方向へと一歩ずつ進んでいくだけだ」とマーケルは述べる。
しかし、自分の人生にとって意味のあるピボットを実行するには、まずは「進むべき道がはっきり見える」状態に到達しなくてはならない。そうしたクリアな視界を得る方法として、マーケルは基本となる6つのステップを示している。
1. 思い込みを捨てる
人生を歩んでいると、いつしか固定観念の鎖に縛られていることが多い。「自分にはこれしかできない」「あんなことは絶対ムリだ」という思い込みは、年月とともに強くなるが、われわれは往々にしてそれに気づかない。
もし、こうした固定観念が邪魔をして、進みたい道に進めないでいるのなら、そうした思い込みを捨ててしまおう。マーケルは、進むべき道を見つけるための第一歩として、自分の持っている固定観念を見直し、望む生き方や叶えたい目標から自分を遠ざけているものがあれば、それを取り除くことを推奨している。
2. 邪魔な荷物を手放す
人生の視界を曇らせている邪魔な荷物を自ら手放そうと思わないかぎり、進むべき道をはっきり見極めることは難しい。そうした荷物には、過去の怒りや恨みもあるだろう。
しかしそれ以外に、目的地までの完全な地図がなければ出発できないという思い込みも含まれる。特に他人を率いる立場にいると、すべてを掌握していると感じたいがためにすべてのことに答えを求めがちだが、すべてに答えが出るのを待っていたら、いつまでたっても走り出すことはできない。
3. 恐怖心に向き合う
変化というのは通常、たとえ少しずつの変化であっても人を安全地帯から放り出すものだ。しかし、怖がることに関しても適切な場所というものがある。運転席に座ってからでは遅い。運転席に座ってしまえば、地図を広げることもGPSを設定することもできないのだ。
自分が何に恐怖を感じているのかを理解し、恐怖心を制御することができないと、自分がどこに向かっているのかもわからず、まして目的地にたどり着くことなど不可能だ。恐怖心に向き合うのは簡単ではないが、進むべき道をはっきりと見極めるためには必要なプロセスだ。
4. 本当の自分を見い出す
われわれはつねに、何かから別の何かへと変化しながら生きている。何から何へ変化するかは、自分のアイデンティティに関わる問題だ。
4つめのステップでは、自分がどんな人間になりたいかを考えよう。そして、マーケルが言うように「ピボットのための電話ボックスに入る」のだ。クラーク・ケントが電話ボックスからスーパーマンになって出てくるように、自分の「本当の姿」に変身しよう。
5. 未来のビジョンを描く
次のステップは、人生の目的を見い出し、それによって未来のビジョンをはっきりと描くことだ。目的が見つかれば、最終的なゴールが定まる。そして、そのゴールを阻む壁に梯子を立てかけて上っていくことができる。自分が築きたい人生や残したい成果に向かって、一歩ずつピボットで進んでいこう。
6. 大きな決断を下す
進むべき道をはっきり見極めるための最後のステップは、これからどう行動するかについて決断を下すことだ。これは、ただのよくある「決断」ではない。マーケルいわく「行動せざるを得ないほどの強力な誓約」であり、ここまでの5つのステップに注いできた労力の集大成だ。
多くの人が犯す間違いは、進むべき道をはっきり見極め、正しい選択をするための内省的な考察を経ず、すぐさま決断を下してしまうことだ。しかし、事前にしっかりとした考察を経れば、自分を信じ、自分が目指すゴールを信じ、そこへ至るための計画を信じることができる。自信をもってピボットを実行できるのだ。
「本当に恐ろしいのは、ピボットを実行して後悔することではない」とマーケルは述べている。「ピボットを実行せず、それをあとから後悔することだ」
原文はこちら(英語)。
(執筆:Steve Farber/Founder, the Extreme Leadership Institute、翻訳:高橋朋子/ガリレオ、写真:Timothy_Wang/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.