ライザップ瀬戸健社長「どん底から人生を切り開く」
2017/11/11
腹筋する保育園児
僕が保育園児だったころ、父が「およげ!たいやきくん」という曲が好きで、よくレコードをかけていました。
せっかく広い海に出た「たいやきくん」が、最後に釣り人のおじさんに釣られて食べられてしまう。
なんとかしてあげたいのに、どうにもできない。こんな気持ちが高まってくると、僕はいつも腹筋と腕立て伏せをしていました──。
あだ名は「瀬戸菌」
先生からはずっと「セトキン」というあだ名で呼ばれたりもしていました。苗字の「瀬戸」プラス、バイ菌の菌で「瀬戸菌」。
今だったらちょっと問題になりそうなあだ名ですが、僕の通っていた北筑高校という県立高校では、その程度でいちいち問題になったりしません。
なにしろ地元でも軍隊並みに規律の厳しい高校で有名だったのです──。
彼女のダイエットを励ます
彼女は体重の減少が一時的に止まる「停滞期」がしょっちゅう来ていたので、彼女のやる気を維持するために、ずっと励ましていました。
でも励ますだけでは維持できないと思ったので、僕も一緒になって運動したりダイエット食品を食べたりして、結果、彼女は2〜3カ月で20キロ以上痩せることができました。
そんなふうに一緒に時間を過ごすうち、僕は彼女と付き合うことになったのです──。
たった3カ月の受験勉強
僕の通っていた高校では、誰も東京の大学に行くということを考えません。当時の僕たちからすると、東京は外国と一緒なのです。
すでに10月になっていました。入試まで3カ月しかありません。しかも僕は今までまともに勉強したことがない。
でも絶対に合格すると決めて、受験勉強を始めました──。
営業力はトークや知識にあらず
パソコンや英語の教材を売る、飛び込み営業のアルバイトを始めました。これが僕には、ものすごく向いていたのです。
営業では、自分のトークに自信を持っている人や、商品知識の豊富な人が売れると思うでしょう。
逆です。パソコンに詳しい人、英語力がある人に限ってほとんど売れなかった。なぜなら──。
本を読んで会社をつくると決める
僕は影響されやすいので、ビジネスで成功した人の書いた自己啓発本などを読むと、いい意味ですぐ洗脳されてしまいます。
「自分も絶対に会社をつくろう」と思うようになっていました。
会社をつくって一番初めにしたことは、ユニクロで白い無地のTシャツを10枚まとめて買ったことです──。
日本中が必要としているものは?
流行るか、流行らないかは意外と重要です。
どんなに社会を元気にしようという思いがあっても、誰も買わなければ無意味な自己満足で終わってしまう。
それよりも、本当に日本中が必要としているものは何かと考え続けました。
イメトレを繰り返す
繰り返し何度も具体的にイメージしなければいけない。当時の僕は「絶対にビジネスで成功する」というイメージトレーニングに余念がありませんでした。
しかしイメージさえすれば、なんでも叶うわけではありません。繰り返し何度も具体的にイメージしなければいけない。
たとえば東京の初台に新宿オペラシティという高層ビルがあるのですが、仕事でそこへ行ったりすると、「自分がここにオフィスを構えたら」という妄想のスタートです──。
毎月赤字
もう社員に給料が払えなくなっていたので、経理から何から全部、自分たちでやるしかない。それでも毎月ほぼ赤字なので、どんどんお金がなくなっていく。
2003年4月に900万円あった資本金は、その年の暮れには13万円にまで減っていました。
がんばり屋でしっかり者の妻も、ついに限界に達したのでしょう。バーガーキングで、泣かれたのを覚えています──。
コンビニのおにぎりで妻とケンカ
当時は夫婦2人、1カ月1万円で生活していました。実家のパンを送ってもらうなど、ギリギリの生活でした。
会社を創業したときから、僕たちはできる限りお金を使わずに生活するようにしていました。
僕が妻と初めてケンカをしたときの原因は、妻がコンビニのおにぎりを買ってきたこと──。
クッキーが会社を救う
「このクッキーを食事の代わりに食べるとお腹がいっぱいになる」という話を聞きました。
そのとき思い出したのが、高校時代の彼女と一緒にダイエットしたときの経験です。空腹でつらそうだった彼女を思い出し、このクッキーを改良すれば、もうちょっと楽にダイエットができるのではないかと考えました。
そんなふうにして生まれた「豆乳クッキーダイエット」が会社の救世主になることを、僕はまだ知りませんでした──。
売り上げの7割が広告費
売り上げが100億円のとき、僕は広告宣伝費を69億円使いました。売り上げの70パーセントを広告につぎ込んだわけですから、攻めに攻めたわけです。
翌年の売り上げは300億円を目指してやろうと思っていました。
ところがある日突然、「豆乳クッキーダイエット」の売り上げが止まりました。何をしてもピクリとも動かない──。
「社長にはついていけません」
「もう社長にはついていけません」
と面と向かって言われたことがあります。
会社が成長しているときは「謙虚」と言われる僕の性格も、業績が悪くなると今度は「芯がない人ですね」と言われる。
すべてが悪いほうへ悪いほうへと逆回転し始めていました。
種を蒔くより苗を買う
種を蒔くより、ある程度育った苗を買ったほうがいい。我々のM&Aがスタートしました。
グループ入りした美顔器の会社が僕の目にとまりました。マーケットがこれから広がることは間違いない。
それが本格的な復活の始まりでした──。
今がどん底でも未来は切り開ける
どうすれば痩せるかという課題についても、情報はいくらでもある。
それなのになぜダイエットが続かないかといえば、一番の原因は知識や情報の不足ではなく、その方法を続けられないということです。
人間には強いところもあれば弱いところもあります。その弱さをサポートするようなサービスがいまの世の中にはないということが見えてきた。
そこで始めたのがライザップです。
社名に込めた思いは「RISE UP」。どんなに今がどん底でも、上へ上へと必ず良くなっていき、未来は切り開ける──。
連載「イノベーターズ・ライフ」、本日、第1話を公開します。
(予告編構成:上田真緒、本編聞き手・構成:長山清子、撮影:遠藤素子、大隅智洋、バナーデザイン:今村 徹)
どん底から人生を切り開け
瀬戸 健(RIZAPグループ社長)
- ライザップ瀬戸健社長「どん底から人生を切り開く」
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