【論考】楠木建、ライザップの戦略ストーリーを解析する
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いつも「文章が長すぎる!」とお叱りをいただくのですが、僕の場合、ある事象についてまとまった考えをお伝えしようとすれば、どうしても8000字から10000字は必要になります。今回は短めに書きましたが、それでもNPの記事としては長いので、ご関心のある方はお時間があるときにお読みいただければ幸いです。
ライザップ事業は人間の根源的な欲求に応える価値と仕組みを実現しており、継続的な競争力はあるが、近年のアパレルなどのM&Aを「自己投資産業なので強みが連続している」と言うのは無理がある。ただ、瀬戸社長の「人を見抜き引っ張ってくる力」が本当に優れていればコンピタンスになりうるる、というこれまでの書いてきたコメントを理論的にまとめて深めて頂いたような内容で大変共感しました
これはめちゃくちゃ面白い。「一見矛盾しているがよくよく聞くと面白いストーリーをもっている」企業こそが戦略的に優れている、ということを『ストーリーとしての競争戦略』で語っている楠木さんらしい深い洞察。
O企業(外部機会の捕捉=速さ:成長期に適する)とQ企業(内部コンピタンスの強化=深さ:成熟期に適する)でいうと事業レベルではQ企業のど真ん中の事業展開を行う。
でもM&Aにおけるグロース投資(将来に比べて割安な企業への投資:O企業のVC的発想に適する)とバリュー投資(過去に比べて割安な企業への投資:Q企業の事業会社的発想に適する)でいうと経営レベルではバリュー投資というわけでもなく、内部コンピタンスをいかしにくそうな企業を買う。
一見すると事業レイヤーの強みを経営レイヤーではいかしていない、事業戦略と経営戦略がちぐはぐなように見えるが、それがまたライザップの面白いところである、と。
自分自身も、大企業の経営コンサルや事業会社でのM&Aやベンチャーでの経営を通して、この外部機会⇔内部コンピタンス、グロース投資⇔バリュー投資のトレードオフにいつもぶつかってきただけに、この解析は深いし、考えさせられます。わかっていてもぶれちゃうんですよね、最後の意思決定で。
楠木さんのしなやかな戦略論に嘆息しつつ、引き続きライザップの独自の経営戦略をウォッチしていきたいな、と思います。