[クリーブランド 26日 ロイター] - イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は26日、インフレ動向を巡り不透明性が存在するなかでも、段階的な利上げの継続が必要との認識を示した。また物価動向をめぐる見極めが困難であることを認めた。

議長は、全米企業エコノミスト協会(NABE)での講演で、インフレモデルの特定や労働市場の基調的な強さ、インフレ期待などを巡り、FRBが判断を誤る可能性はあると指摘。段階的な利上げ計画を撤回するほどインフレ動向が大きく変化したことを示す証拠は揃っていないが、そうなる可能性を含め依然オープンである必要があると語った。

さらに、インフレ率が2%に戻るまで金融政策を据え置くことは賢明でないとも指摘。「フェデラル・ファンド(FF)金利を控えめな形で追加的に引き上げなければ、労働市場が将来的に過熱してインフレ問題が起こり、景気後退(リセッション)を招かず克服することが難しくなる恐れがある」と述べた。

足元30%の確率でインフレ率が1%から3%のレンジのいずれかになると予想されるなか、実際の動向次第でFRBも政策対応の修正を余儀なくされる可能性があるとした。ただ、段階的な利上げが引き続きFRBの基本シナリオであると確認した。

HSBC証券(ニューヨーク)の首席米エコノミスト、ケビン・ローガン氏は、イエレン氏の発言について、弱いインフレが一時的かどうか定かではないが、それでも金融政策は緩和的、との意味合いが含まれていたと分析。その上で「緩やかなアプローチなら、たとえインフレを巡って(FRBが)判断を誤ったとしても、大きな間違いにはならない。こうしたことを伝えようとしているのだろう」と話した。

短期金利先物が織り込む12月の利上げ確率は約76%。一方、来年の利上げ回数1回のみと予想されている。

イエレン議長は、見通しを判断する上で向こう数カ月間、物価および労働市場の指標を注視していくとする一方、「データにはノイズがあり、特効薬にはならない」との見通しを明らかにした。また利上げのタイミングは予想通りとはならない可能性もあるが、「道筋としては段階的となる公算だ」とした。

インフレの議論を巡って、世界経済や世界中の供給網などが国内物価を押し下げているという理論にはまだ、経験的な支援材料が無いとの考えを示した。

また高止まりするパートタイム労働者数など、労働市場の弱さを示す一部状況は循環要因でなく、労働力を巡る恒久的な変化を反映している可能性を指摘した。

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