キャリアの分岐点。“Change”と“Run”、どちらで生きるか

2017/9/28
新卒で入社後、一貫してアクセンチュアで金融業界向けコンサルタントを続けるのが、金融サービス部門を統括する中野将志執行役員。一般的に転職が多い外資系コンサルタントにおいて、23年もの間、同じ所属企業、同じ仕事に携わるキャリアにはどんな思いが秘められているのか。コンサルタント、金融業、そしてアクセンチュアを語る。
「Change」こそコンサルタントの仕事
──中野さんは新卒入社から約23年間、金融業界向けのコンサルタントを続けています。
中野:コンサルタントの魅力は、お客様が大きな転換を断行しようとしている時に「変化」のお手伝いをできることに尽きます。
私は、ビジネスには「Change」と「Run」があると思っています。Changeは、構造改革であったり、新商品や新サービスを生む基盤を整えたり、今ある環境に大きな変化を与えること。一方、Runは今存在するビジネスを安定的に運用したり改善したりすること。
私は、Runがあまり得意ではないというか、Changeを促すことで仕事の喜びを感じるタイプなのです。泳ぎ続けないと窒息死してしまうマグロのようなものです(笑)。一つの事業会社に所属していると、Changeに携われる機会に恵まれることはあるかもしれませんが少ないでしょう。その点、コンサルタントはChangeしかない。だから、私はコンサルタントであり続け今も現場に出ているのです。
優秀な人材と渡り合う喜び
──金融業界向けコンサルティングにはなぜこだわっているのですか。
新卒でアクセンチュアに入社し金融業界担当を志望した理由は単純で、やりたがる人が少なかったから。その当時、コンサルティング業のメインカスタマーと言えば製造業。金融業の方々がコンサルタントを活用する文化はまだ根付いていなく、お客様も少なく、任せてもらえる範囲も狭かったですから、簡単に言えば人気がなかったのです。人と違うことをしたかった私には格好の舞台でした。
シンプルな発想で金融業界に携わりましたが、23年の間、金融業に携わってこられて幸せだと思っています。経済の中心である金融業にはものすごく優秀な方々が集まっています。
中途半端な提案をすればすぐに見破られるし、自分の知識や経験以上のリクエストをいただくこともたくさんあってしんどい思いをたくさんしてきました。だからこそ、短時間で自分を追い込むことができ、他のコンサルタントよりも少しは成長のスピードが早かったかなと振り返っています。
ただ、金融業界にコンサルタントとして携わる醍醐味は、過去よりもこれからのほうが大きいですよ。
──金融業向けコンサルタントが将来面白くなる理由は何ですか。
少し歴史を振り返ると、金融業界は1990年代まで「護送船団方式」という各社が足並みを揃えて横並びでいることが普通でした。しかし、1990年代中盤に入ると、金融自由化をきっかけに大がかりな企業統合・再編が進んでいきました。その結果、日本の金融業は世界と比べてもかなり洗練されて、世界における日本の金融機関の地位は上がってきました。
そして、今は過去にはない大きな変化に直面しているのです。人口減少により国内での経済成長が見込めない中、海外マーケットへのさらなる進出が急務であること。また、金融ビジネス特有の厳しい規制の中、どう収益を上げるモデルを確立するか。さらには、40代以下の若手が少ない社員構成、異業種の金融業界への積極的な参入があります。
すべてチャンスとも取れるしリスクとも受けとめられます。私はこれを当然チャンスと捉えている。金融業のお客様に対し、アクセンチュアの金融サービス部門らしい提案で、Changeを起こせる絶好の時期だと思っています。
──失礼を承知で言えば、アクセンチュアに「金融」のイメージが私にはありませんでした。アクセンチュアらしい提案とは何ですか。
わかりやすい点で言えば、テクノロジーを活用した提案はアクセンチュアらしさがあります。どのよう業界でも同じですが、これからのビジネスを考えた時に、エンドユーザーに対するサービス向上の観点でも、バックオフィスの業務改革でもテクノロジーの活用は欠かせません。
金融業界で働く人材は、あと5年もするとボリュームゾーンでありこれまでの金融業を支えてきた50代の世代が少なくなります。だからこそ、発想を根本から変えることが求められ、個人の高い能力や生産性とデジタルを融合した業務改革が急務です。
また、異業種の企業を巻き込みエコシステムを形成して、新たなビジネスを創出する取り組みも必要になってきて、テクノロジーはもっと必要になる。ほかの業界よりもテクノロジーが必要でかつ受け入れられやすい、活用範囲も広いのが今の金融業なのです。
金融機関でも、ロボティクスやAI(人工知能)を導入するという流れはあります。ただ、その多くは「自動化できる業務を部分的に探してテクノロジーを活用する」という発想。しかし、それではせっかくのテクノロジーも局所的な利用に止まってしまいます。
それに対して、テクノロジーを駆使して人手を不要とする業務を新たにつくるという「デジタル・エンタープライズ」がアクセンチュアの考え方。経営戦略をみたうえで人手をかけたくない業務は全自動を目指し、人でなくてはできない業務もテクノロジーでサポートする。
事業基盤を丸ごとテクノロジーの力で激変させるような提案を私たちは行っているのです。すでに、このようなソリューションはメガバンクを始め、大手地銀、大手保険会社などで実績を重ねているところです。
アクセンチュアの金融機関向けサービスの歴史は数十年あり、お客様の業務を熟知しています。そして、テクノロジーでは他のコンサルティングファームにないビジネス基盤を持っています。
アクセンチュアは、戦略ファームにありがちな「プランを書いてそれで終わり」はありません。プランを描くだけではなくて、それをテクノロジーで支援できるメンバーが社内にいます。お客様が抱く課題の解決方法や成長戦略を描き、そのままシステムの開発やITアウトソーシングサービスを通じて実行に踏み込んでいけるのです。中長期的にお客様に併走し、Changeを実現できる。
私が統括する金融サービス統括本部に関わる従業員のうちコンサルタントは30%弱ですが、そのほかはシステム開発やアウトソーシングに携わるスタッフです。このリソースを十二分に生かしてテクノロジーソリューションをエンドトゥーエンドで提供できるのです。
プランだけでなく実装・実現までビジネスをサポートできる組織があるから、お客様への提案には自信が生まれるし、「できます」と言い切れる範囲が広い。他のコンサルティングファームには持ち得ないアクセンチュアの強さでしょう。
「アクセンチュア一筋」なキャリア
──中野さんは一貫してアクセンチュアでキャリアを積んでいます。転職する人が多い外資系コンサルタントの中では異色な印象です。
中野:私は他社に移ろうと思ったことはこれまで一度もなかったし、もし新しい人生を歩んだとしても、アクセンチュアでコンサルタントになります。取材だからこう言っているわけじゃないですよ(笑)。そう言い切れるほど、この会社は面白い。
アクセンチュアは、アメーバーみたいに自分を変えたり、つくっていったりすることができる会社。クライアント企業のChangeを促したいという強い意識と、クライアント以上に自分ごととして一人称で仕事に取り組む姿勢と覚悟がある人には絶好の成長の舞台だと思っています。
金融の知識・経験を持つ人、一方、テクノロジーのキャリアを持つ人にとっては、それぞれ持ち得ていない経験や知識を身につけることができ、ハイブリッドキャリアを形成できる場でもあると思います。
「人は育てることはできない。自分で育つもの」というのが私の持論です。自分の能力を伸ばしたいという意欲を持つ人であれば、アクセンチュアは十分な機会や環境を提供することを約束します。ぜひ活用してもらいたい。私が培った経験の中で、伝えられることは惜しみなく伝えていきたい。
たくさんインプットして、常に考え続ける。受動的な気持ちではなく、自分からどんどん変化にチャレンジしていく人は、アクセンチュアで必ず成長でき、そんな人を私たちは求めています。
(聞き手:木村剛士、構成:工藤千秋、写真:森カズシゲ)