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ゼンリン「ドローンの“空の道”構築する」

藤沢上席執行役員に聞く「鉄塔を利用することは大きなアドバンテージに」
 2017年に全国1741市区町村の住宅地図データを完全整備したゼンリンが、飛行ロボット(ドローン)向けルート情報、いわゆる“空の道”構築を急ピッチで進めている。普及が確実視されるドローンだが、現状は厳しい法規制が飛行を制限しており、インフラもハードも未熟だ。事業を統括する藤沢秀幸上席執行役員に課題や展望を聞いた。

 ―ドローン事業推進課を増員するなど体制を強化しています。
 「カーナビゲーションに地図が必要なようにドローンにも同じことが言える。飛行するドローンには航空管制という規制がある。安全に運航させる仕組み作りが整わなければ規制が緩和されることはない。このためには空の道(ルート情報)作りが必要で、3次元(3D)デジタル地図は不可欠となる。当社は平面だけでなく高さ情報を持っているのが強みだ。建物の高さを提供することで、ドローンの安全な運用が可能になる」

 ―東京電力と『ドローンハイウエイ構想』の実現に向けて業務提携しました。
 「安全に飛行させるためには道しるべが必要になる。車に道路が必要なのと同じことだ。東電が管内に保有する電線や電柱沿いに飛ばすことで、空に道を作ることが可能になる。送電鉄塔情報は警備上の観点から非公開で、地図に掲載していない。鉄塔を利用することは大きなアドバンテージになる」

 ―期待する分野は。
 「欧州では農業や物流で運用が始まっている。日本でも農業管理や離島間の物資輸送で利用され、やがては警備、災害対応へと広がるだろう」

 ―課題は何でしょうか。
 「カーナビは道案内や自動運転補助と目的がはっきりしているが、ドローンは用途が広い。バッテリーや航空管制など課題も多い。本格的な事業の立ち上げは20年ごろを予定している。まずはルートデータの提供で25年に10億円の売り上げを見込んでいる」

 ―未来はSF映画のようにドローンが空を飛び交う姿が見られるのでしょうか。
 「都市部や住宅密集地は飛行不可エリアが設定される。古いアニメーションで中空のパイプの中を空飛ぶ自動車が走っていたが、あのようなイメージだろうか。アニメと違うのはパイプが目に見えないだけだ」
藤沢秀幸氏

(聞き手=大神浩二)
日刊工業新聞2017年9月13日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
全国津々浦々の住宅地図データというキラーコンテンツを持つゼンリン。3D化が整ったことで、地図帳というアナログ主体の従来経営からの脱却を目指す。ドローンはその切り札だ。市場は黎明(れいめい)期だが、大規模になる可能性は高い。地図最大手にかかる期待の高さは、提携企業の数と質を見れば明らかだ。 (日刊工業新聞北九州支局長・大神浩二)

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