大盛況の「鷹の祭典」。なぜ、大阪で行われるのか

2017/9/2
今年も大盛況のうちに幕を閉じた「鷹の祭典」。
計8試合に、史上最多を更新する29万7194人を動員した。
その大トリを飾ったのは8月14日、京セラドームで行われたファイターズ戦だった。
本拠地の福岡ヤフオクドームではない。オリックスバファローズの本拠地球場である、京セラドームだったのだ。
なぜ福岡ソフトバンクホークスが、大阪の京セラドームで主催試合を行うのか。
京セラドームで行われた「鷹の祭典」に大観衆が訪れた
「鷹の祭典」が福岡県外で最初に開催されたのは2012年の東京ドームだった。
東京進出の理由は容易に想像できる。ソフトバンクの本社があるし、東京MXテレビで2007年から主催試合が放送されている
また、東京ドームの収容力は大きな魅力だ。ヤフオクドームは定員が3万8585人に対して、東京ドームは約4万6000人を収容できる。初開催以降も毎年試合が行われており、今年も4万6808人が来場してホークス主催公式戦史上最多記録を更新した。
だが、京セラドームの定員は3万6477人。これはヤフオクドームを下回る。
それでも大阪で「鷹の祭典」を行う理由とは、その意義とは果たして何なのか。

大阪はホークス発祥の地

ホークス球団の吉武隆取締役、事業統括本部・菊池隆昭副本部長がインタビューに応じてくれた。
「ホークスは福岡、九州の球団であることは間違いありませんし、地域密着を大切にする思いも変わりません。しかし、全国各地にホークスのファンの方がいらっしゃるのも事実です。鷹の祭典が東京に進出したときから、次は大阪で、という気持ちは球団内にありました」と吉武取締役。
菊池副本部長も「ホークスの私設応援団は福岡、東京、大阪それぞれに拠点があります。なので、東京ドーム開催を始めたときからファンの皆様からたくさんの要望をいただきましたし、我々としても大阪開催を実現させたいという強い思いはありました」と話す。
そして、2人が共通して口にした言葉がある。
「大阪はホークスにとって大切な土地。ホークス発祥の地ですから」
野球ファンの方や年配の方はご存じだと思うが、かつてホークスは大阪を本拠地にしたチームだった。
1938年に南海軍が設立。その後名称変更を経て「南海ホークス」に。1950年代は特に黄金期で、その10年間で5度のリーグ優勝(うち日本一1度)を成し遂げた。
その後、福岡に移転したのは1989年(平成元年)のこと。昭和の時代に浪速の街を沸かせた、何とも味わい深い球団だった。
「鷹の祭典を大阪で開催する以前より、オリックスさんと協力をしながら『OSAKA CLASSIC』を行った実績があります。集客も普段の試合より多く、大阪でのホークス戦開催に手応えを感じていました」(菊池氏)
OSAKA CLASSICではホークスが南海、バファローズが近鉄時代のユニフォームを着て戦った。オリックス主催
たしかに現在も“ホークス”を応援し続けるファンは大阪に多く残っている。また、応援の仕方も福岡と少し違っていて、どこかノスタルジックな匂いを残す。スタンドに南海カラーの緑が目立つことも珍しくない。
ただ、すんなりとスタートできたわけではなかった。

80周年のメモリアルイヤーへ

プロ野球12球団はそれぞれ「地域保護権」を持っている。これは野球協約で制定されているもので、各球団は都道府県単位の保護地域を持ち、公式戦ホームゲームの半数以上を保護地域内の1個の専用球場で開催する義務を負う。
そのかわり、保護地域におけるすべてのプロ野球関連行事の独占権が球団に与えられるのだ。
対象となる都道府県に権利を持たない球団が、他球団の保護地域となっている都道府県で試合を開催したり野球関連のイベントを実施したりする場合は、当該都道府県にある全球団の許諾を得なくてはならない。
つまり、福岡が本拠地のホークスが、東京で主催試合を開催する場合にはジャイアンツとスワローズの許諾が必要となり、大阪の場合はバファローズとなるわけだった。
「地元チームのホーム開催は最大でも72試合です。それ以外の日のドームの稼働率を上げなくてはならないので、そのような角度からもお話をさせていただきました」
結果、WIN―WINの関係性を築き上げ、東京から遅れること2年、2014年シーズンに「鷹の祭典in大阪」がスタートした。
京セラドーム
初年度は3万2093人だった動員は毎年増え続け、4年目の今年は3万5961人が来場した。球団公式サイトには「前売り完売」の告知が出された。「4年目にして、初めてでした。京セラドームをいっぱいにしたいという願いが叶いました」と吉武取締役は笑顔を浮かべた。
「特に今年は若いファンが多く、女性も目立ちました。毎年継続した成果だと思います」(吉武氏)
「関西地区はグッズもよく売れます。ファンクラブの地域別割合以上の売上を記録しています。毎年、大阪での鷹の祭典には想定以上の販売用のグッズを福岡から持っていくのですが、今年も完売しました。しかもかなり早い段階で。これには驚いています」(菊池氏)
来季はホークス球団が誕生して80周年のメモリアルイヤーだ。ホークスと大阪の結びつきがより一層クローズアップされることになる。
「今後、さまざまなイベントや企画を発表していく予定です」(菊池氏)
現在決まっているのは、来年2月10日に宮崎で行われるOB戦。ホークスOBとジャイアンツOBが激突する。
ホークスOBチームには工藤公康現監督をはじめ秋山幸二氏、小久保裕紀氏、松中信彦氏、城島健司氏らが参戦予定。まだ総監督は発表されていないが、すでに球団関係者が野村克也氏と接触している。
そして王貞治球団会長はジャイアンツOBチームで参加予定。こちらの総監督には長嶋茂雄氏がすでに発表されている。豪華メンバーが集うこの一戦、かなりの注目を集めることになりそうだ。
(写真:©SoftBank HAWKS)