都会と地方で暮らす「二地域居住」可能となるには何が必要?

2017/8/31
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
31日は、ジャーナリストの治部れんげさんが出演。「『二地域居住』を促進、地方の人口減対策に 国交省、30年度概算要求に関連費用盛り込む」(産経ニュース)を題材に、“二地域居住”という新しいライフスタイルについてお話いただきました。

住まいの維持費と交通費が壁

サッシャ 今日は、「『二地域居住』を促進、地方の人口減対策に 国交省、30年度概算要求に関連費用盛り込む」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の治部れんげさんです。
治部さんは、ジャーナリストとして男女共同参画やワークライフバランスの分野で精力的に取材・執筆活動を行ってらっしゃいます。小学生の男の子と幼稚園児の女の子のお母さまでもいらっしゃいます。
サッシャ おはようございます。
治部 おはようございます、よろしくお願いします。
サッシャ まずはこの記事。どういう内容で、なぜピックされたんですか。
治部 もともと国土交通省は、何年も前から二地域居住推進の取り組みはしていました。この記事は、来年度予算案の概算要求に、国交省が二地域居住の推進をするための予算を盛り込んだ、というニュースです。
サッシャ 「二地域居住」って何ですか?
治部 簡単に言うと、今は私たち東京で仕事をして、家がその近くにあると思います。ですがもう一つ、別の拠点を地方・田舎の方に持つことを、二つの地域に住む「二地域居住」と言います。
サッシャ 仕事のない週末は別荘で、というような発想ですか?
治部 この記事にはそういう書き方がしてありますね。私はイノベーションを考えると、平日にも移住ができたらいいと思いピックしました。
寺岡 離れたところでも仕事ができたり、週末に東京から離れたりすることなども選択肢に入るわけですね。
治部 そうです。

まずは北海道「合宿」から!?

サッシャ 家を2ヶ所借りるのは大変じゃないですか?
治部 コストがかかりそうですし、交通費も気になりますよね。
その中で一つ、先進的な事例があるのでご紹介したいと思います。北海道にある斜里町です。世界遺産で知られる知床の自治体なのですが、そこが町を挙げて「斜里ふるさとテレワーク」というプロジェクトを推進しています。
サッシャ どういう取り組みなんですか?
治部 インターネットがつながり、パソコンなどを備えたオフィススペースがあって、同じ建物の上のフロアに居住空間があり、それを町が無償で貸してくれる、という取り組みです。
時期によっては町が交通費を支給するトライアルケースを公募することもあるようです。詳しくはHPを見て見てみてください。
サッシャ 交通費を負担してでも来て欲しいんですね。ということは、ここでは完全移住はメインになっていないんですか?
治部 もちろん、国交省が掲げる元々の「二地域居住」は、地方で減っている人口をなんとか補いたいということがあると思います。
ただ、斜里町のケースに関しては、必ずしも完全な移住でなくても少しの間、例えばJ-WAVEのチームで1週間住んで仕事をするような、「合宿」みたいなことでもいいようなことが書いてあります。
サッシャ 北海道から放送できるのはいいですね(笑)
ただ、現実的に考えると、元々住んでいた家のローンがあったり家賃があったりする上、そこまで行くには交通費もかかる。
お金持ちの人が別荘を持って週末移動するというのは昔からよくある話ですが、なかなか庶民には手が出ないと思います。
どうでしょう、現実的なんですか?

都市住まいからアイデアを

治部 今の国の施策は、とにかく「地方に人口を移したい」という一心だと思います。
ただ、国とか霞ヶ関とかだけで考えていくとアイデアが固定的になってしまうので、逆に、例えばJ-WAVEのリスナーさんのような都市生活者の方から、どういう形であれば魅力的かを提案していったらいいんじゃないかと思います。
今おっしゃったような「交通費がネックです」とか、例えば「住宅ローンに関して二地域居住をする人は軽減されるような仕組みがあったらいいな」とか。
寺岡 ですが、平日に仕事をテレワークで地方に持っていくことはできても、子供さんがおられる家庭は「学校どうなるの?」となりますね。
サッシャ これは難しい話ですね。曜日ごとに違う小学校に行くわけにもいかないですし。でも週末は現実的だと思います。ちなみに、成功したケースもあるんでしょうか。
治部 日本では個人ベースで色々と取り組まれている方はいるんですが、自治体レベルで「これが成功です」といえるケースがあるかどうかはわかりません。
ただ以前、アメリカで共働きの子育て層50人くらいに取材をしたことがあるのですが、いわゆるプロフェッショナル職の方たち、弁護士とかIT関連の方、大手企業の人事部長などで、ワークライフバランスを取りながら、子育てしながら、働き続けている方は多かったです。
郊外とか田舎のほうに住んでいる方も多く、多くの方はテレワークを当たり前にやっていました。
サッシャ このケースは可処分所得が高めの方ですよね。少し余裕がある。
治部 そうですね。
サッシャ 現実的に、例えば週末は田舎で過ごして、その分都会で借りているマンションは、寝るためだけの目的で借りるとかもありますね。
治部 それだと狭くていいですよね。
寺岡 あとは民泊として貸すとか。
治部 それはいいですね。
サッシャ おっしゃるように、週末貸し出せばプラスマイナスゼロになるかもしれないし、そういうことができるといいですね。
国としては地方創生を掲げて、地方で人に働いて欲しいということもあって、僕らは「完全移住」という選択肢をつい思ってしまうけれど、二つ地域での生活がうまくできるようパラダイムシフトできると非常に面白いかもしれませんね。
そうすると都会の住み方も変わってくるかもしれませんしね。
僕は自然があるところに住みたいなぁ。
寺岡 住環境としては憧れますね(笑)
サッシャ 僕たちからアイデアを出していくことも国を動かすためには大事、という治部さんのお話でした。ありがとうございました。
治部 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした治部さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
9月4日はコーポレイトディレクションの占部伸一郎さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください