賛否両論のふるさと納税、制度の目的から考える

2017/8/30
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
30日は、ドットジェイピー理事長の佐藤大吾さんが出演。「ふるさと納税返礼品、野田総務相が柔軟に認める考え示唆」(朝日新聞デジタル)を題材に、ふるさと納税の課題とこれからについて解説しました。

ふるさと納税のメリット

サッシャ 今日は、「ふるさと納税返礼品、野田総務相が柔軟に認める考え示唆」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の佐藤大吾さんです。
佐藤さんは、若年投票率の向上を目的としたNPO法人ドットジェイピーの代表として活躍される一方、世界最大の寄付サイト「JustGiving」(15年、ジャパンギビングへ改称)の日本代表に就任。寄付文化の創造にも力を入れています。おはようございます。
佐藤 おはようございます。
サッシャ まずは、この記事の内容を教えていただけますか?
佐藤 ここ数年ずっと指摘されていることなのですが、ふるさと納税をするのはいいのだけれど、それによってもらえるものが高騰していると言いますか、高額なものまで貰えることが問題なのではないか、とされてきました。
高市早苗前総務相の時は、返礼品の額は寄付の3割以内に抑えるように、という方針を出していました。それが今回、野田聖子総務相になって、それを見直そうとコメントしたんです。
サッシャ 寄付した額より高額なものがもらえるなんてこともありましたよね。もちろん、○○円相当というのは市価で、卸値ではないので、実際に寄付した金額を上回っているわけではない思うんですけれど
寺岡 それ目当てで納税をしよう、みたいな感じですよね。
佐藤 例えば、1万円を寄付して1万2千円のものが届いたら、普通はおかしいと思うじゃないですか。
行政からすると損をしているんですよね。でも、地元の企業や農家から買い上げてプレゼントしているわけですから、地場産業を支援するという意味では貢献できているんです。
本当は、地方に助成金をばらまいて支援することもできるんだけれど、それを寄付金で買い上げている点で、メリットがあるとも言えますね。
また、話題になってニュースで取り上げられると、地元の知名度が上がることもあります。
サッシャ これが、さらに柔軟になってくるということですか。
佐藤 ただ、つい先日、野田総務相が実態を見なければダメだというコメントを出しましたので、ただちに方針を変えようというわけではないみたいなんですね。
ここで問題視されているのは、例えばふるさと納税の返礼品で家電製品がもらえた時、それをインターネット上で転売する人たちがいることなどです。
これについて気をつけていきたいという発言はありました。それは、僕も同感です。
サッシャ 止められますかね。
佐藤 難しいですね。シリアル番号を付けるなどでしょうかね。あるいは、ふるさと納税用の特製にするとかですね。

ふるさと納税の目的

サッシャ そもそも、ふるさと納税自体については、佐藤さんはどう考えられていますか?
佐藤 僕は、一言でいうと賛成なんです。よく日本は寄付をしない国民性と指摘されますけれども、返礼品目的であっても寄付をする行為は尊いと思うんです。
それに、一回寄付をした人は二回目の寄付をしやすいというデータもありますので、動機は何でもいいので賛成です。
サッシャ 日本はアメリカなどと比べると寄付をしても税制の優遇が少ないので、この辺の問題点もありますよね。
佐藤 そうですね。東日本大震災が起きた2011年以降、少し法律が変わりまして、現在は認定NPO、公益社団法人、公益財団法人に寄付をした場合は税額控除がつくようになりました。
でも、知られていないことと、対象になる団体がまだ少ないので、欧米に比べるとまだまだとは言われます。
サッシャ NewsPicksのコメント欄では反対の意見もあるんですけれど、それについてはどう感じられていますか。理解できますか?
佐藤 もちろん、反対の意見についても理解できます。東京都民からすると、ある意味で都民の税金が地方に流出しているわけですよね。
その立場からすると、本当はその税金で保育所がつくれたのに、という不満は良く理解できます。
ただ、この制度の目的は、都心に集まりすぎるお金を地方に戻しましょうというところにあります。その意味では二重丸だと思っています。
そして、単に国から地方に交付金をばらまくことがやりにくくなってきているので、地方自治体にも自分たちで頑張ってもらって、ふるさと納税という形で努力しなさいと。
そこで集まった分に関して還元していくとなると、競争が生まれます。それが返礼品競争になっているから問題なのですが、首長の中には「使い道」をアピールして寄付を集めるケースも増えてきました。
サッシャ 例えば、行政施設が足りないとか、橋を建てたいとか、そういう使い方をアピールするということですか?
佐藤 その通りです。
サッシャ これが、東京一極集中から、地方にお金や人を戻したいという発想にもつながるということですね。
佐藤 東京に人もお金も集まり過ぎていますし、地方創生が政権の柱の一つにもなっていますので、そのための政策であると思います。
サッシャ 佐藤さんは寄付文化をつくることに力を入れていますが、初めての人はどうやってスタートしたらいいんでしょうかね。気持ちを持っている方はたくさんいると思うのですが。
佐藤 たぶん、きっかけや縁がないとなかなか始まらないものだと思うんですよね。
だから、返礼品が肉やカニで魅力的だから、という動機でもやってみるといいと思います。
そうすると自治体からお礼状が届いたり、情報が届いたりするようになるので、楽しくなるんですよね。
それから、返礼品がなくても応援しようという気持ちも芽生えてくると思いますので、そのきっかけを大事にアクションを起こしてほしいと思いますね。
サッシャ これは、自分の地元だけじゃなくても寄付は出来ますので、色々と調べてみるといいんじゃないかなと思いますね。佐藤さん、どうもありがとうございました。
佐藤 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした佐藤さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
31日はジャーナリストの治部れんげさんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください