なぜ、中国でルイ・ヴィトンの実店舗が閉鎖に向かっているのか

2017/8/24
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
24日は、産経デジタル社長兼CEOの鳥居洋介さんが出演。「ルイ・ヴィトン 中国でオンラインショップオープンへ 実店舗は閉鎖の動き」(AFP)を題材に、中国のルイ・ヴィトンをはじめとする高級ブランドの動向について解説しました。

高級ブランドの店舗が撤退へ

サッシャ 今日は、「ルイ・ヴィトン 中国でオンラインショップオープンへ 実店舗は閉鎖の動き」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の鳥居洋介さんです。
鳥居さんは、産経新聞社東京本社編集局編集長、大阪本社編集局夕刊編集長、夕刊フジ代表などを経て、産経デジタル社長兼CEOでいらっしゃいます。おはようございます。
鳥居 おはようございます。
サッシャ まずは、記事の内容から教えていただけますか?
鳥居 この記事は、もともと東方新報という日本在住の中国人に向けたメディアによるものなんです。創刊して20年くらいになるんですけれども、「相当深掘りしてあるんじゃないかな」ということで目につきました。
そして、見出しと同じで、いよいよルイ・ヴィトンが中国でオンラインショッピングを始める一方で、いわゆるリアル店舗が2年ほど前から撤退してきています。
そのうえで、北京や広州、深センなどの大都市で、ECの基地ができる動きが広がっているという内容なんです。
サッシャ ルイ・ヴィトンに限らず高級ブランドの閉店は、世界的にその傾向にあるそうですね。
鳥居 中国に関しては、2015年だけでルイ・ヴィトンのほかグッチなど11のブランドが合計で34店舗を閉めちゃっているんですよね。新しくオープンしたのは14店舗です。
去年も、上期だけでバーバリーをはじめ6つのブランドが10店舗を閉鎖しています。
その一方で、オンラインショップに関しては、すでにコーチ、バーバリー、グッチが始めていて、ルイ・ヴィトンに続いてプラダも開始するとニュースになっています。
サッシャ なるほど。なぜこうした傾向になってきているんですか?
鳥居 先ほど世界的な流れというお話も出ましたが、日本などでは必ずしもそうなってはいないんです。
そもそも、ブランドの直営店には直営店ならではの良さがたくさんありますよね。
お二人もよく、高級ブランドに行かれていると思うんですけれども。
サッシャ そんなには……すいません(笑)。
寺岡 フフフ(笑)。アフターサービスや接客が良いイメージはありますよね。
鳥居 おっしゃる通りですね。お店の中も高級感にあふれていてセレブな感じですし、小さなお子さんを連れていったら、面倒を見てくれるとかですね。
サッシャ 僕も経験あります。
鳥居 そういうトータルでのブランド戦略があるので、必ずしも直営店がバッタバッタと閉店しているかというと、そうではないわけです。
寺岡 それじゃあ、ブランドとしての価値が下がってきているわけではないんですね。

オンラインショップが合う

鳥居 そうです。中国では記事にもありますが、地価が高騰してきていて、なかなかリアル店舗を維持できなくなってきています。
そして、国土が広大ですから、そもそもオンラインショップが合うんですよね。
サッシャ そうか、買いに来れる人が少ないと。
鳥居 ですから、アリペイなどによるスマートフォンでの決済がすごく発達しています。
さらに、中国の方が海外旅行に行くケースが増えてきて、日本でも銀座などで爆買いをしています。
すると、中国の本店で買うより何万円も安いことに気付くわけです。
例えば、パリのルイ・ヴィトンの本店でネヴァーフルのLサイズのバッグを買う場合は995ユーロ(約13万円)ですが、北京では1万元(約16万4000円)以上になります。
そのため、海外やオンラインで買う流れが出てきています。
ただ、思い出してみると、日本の若い女性もバブルの時に、ブランド品をパリの本店で買っていましたよね。だから、この件は必ずしも中国の事情だけではないとも言えます。
サッシャ 時代がズレて、中国に来ていると。

従業員を信頼していない

鳥居 そのうえで、中国ならではのもっと特殊な事情が記事に隠されていると思います。ここでは、「公式ショッピングサイトで購入されても、当店舗では商品の引き渡しはできない」とあるんです。
サッシャ 普通だったら、オンラインショップで買えば、商品を実店舗で受け取りできますよね。
鳥居 この疑問については、複数のピッカーの方がコメントを寄せていらっしゃって、なるほどなと思ったんです。つまり、「商品のすり替えリスク」です。これがベースにあると。
中国の方も、ブランドは信頼しているんです。でも、そこで働いている従業員の方はそれほど信頼していないんです。
サッシャ ええっ。従業員によるすり替えですか?
鳥居 はい。いざ、お金を払っても、偽物とすり替えられることが、まれにあるらしいんです。
サッシャ つまり、従業員が安い偽物を購入しておいて、すり替え、本物は換金しているんじゃないか、と。
鳥居 これは、日本人にはメンタリティー的に分からない話ですけれど、被害に関するコメントがいくつかありました。
オンラインショップでは、そうしたリスクが回避されますから。
サッシャ そこで発送する人は大丈夫なんでしょうかね。そこまで信頼できなくなっちゃいますよね。
鳥居 そもそも、中国のオンラインショップでは偽物がたくさん売られているわけですよね。これは、日本でもないことはないわけですが。
ただ、本家本元のルイ・ヴィトンが直営で売れば、そういうリスクを下げられるんだと思います。
サッシャ ブランドとして傷がつくことがないように、防衛策としてやっているんですね。
鳥居 おっしゃる通りですね。これはかなり意地悪な分析かもしれませんけれど、なるほどなと思いますね。
サッシャ いやあ、これは中国ならではですね。日本に買いに来る気持ちも分かりました。鳥居さん、ありがとうございました。
鳥居 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした鳥居さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
来週28日はgumi代表の国光宏尚さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください