糸井重里、堀江貴文らが絶賛する“大人のケータイ小説”の魅力

2017/8/22
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
22日は、週刊SPA!編集長の金泉俊輔さんが出演。「糸井重里、大根監督、セカオザ、堀江貴文らが絶賛する燃え殻とは、一体、何者なのか?」(otoCoto)を題材に、について解説しました。
大人のケータイ小説
サッシャ 今日は、「糸井重里、大根監督、セカオザ、堀江貴文らが絶賛する燃え殻とは、一体、何者なのか?」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の金泉俊輔さんです。
金泉さんは、『週刊SPA!』『日刊SPA!』の編集長でいらっしゃいます。今話題の作家“燃え殻”さんの小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』の魅力について、お話を伺います。おはようございます。
金泉 おはようございます。
サッシャ 燃え殻さんはどんな方で、どういう小説なんでしょうか?
金泉 燃え殻さんは今年44歳になる、テレビ制作会社に勤務する普通のサラリーマンです。裏方で、人事関係のお仕事をされているそうです。
そんな燃え殻さんのツイッターの投稿が文学的であるということで、「140文字の文学者」と呼ばれて、糸井重里さんなどに注目されてツイッターのフォロワー数が増えていたんです。
そんな時、作家の樋口毅宏さんに「君は小説を書くべきだ。編集者を紹介する」と言われて、全く小説を書く気はなかったけれど、周りの人から押される形で書いた小説が、今作なんです。
寺岡 ツイッターがきっかけとのことですが、いわゆるケータイ小説とも違うと聞いたんですけれど。
金泉 そうですね。ツイッターで書きため、スマホで編集者とやり取りして書いたんですけれど、「大人のケータイ小説」と言っていいのではないかと思います。
ケータイ小説を、ゼロ年代に女子高生などがガラケーで自分たちの限定されたリアルを書いたと定義すれば、燃え殻さんは40代に限定された人たちのリアルを書いたんです。
寺岡 読んだ感想はいかがでしたか?
金泉 まさに僕が40代の限定されたリアルなのですが、嗚咽が止まらないというやつですかね。
サッシャ そこまでいきましたか。
金泉 付箋の数だけ泣いたんですけれど。
サッシャ 本を持ってきていただいているんですけれど……9か所。
金泉 後半はもう、涙で文字が読めなくなりました。
サッシャ 9か所のうち、後半が7か所ですよ。すごいなあ。僕も同年代ですが、何がそんなに嗚咽を引き起こすんですか?
金泉 冒頭を読んでいただくとバブルのおじさんの話に思えるんですけれど、フェイスブックの「知り合いかも」の欄に元カノが出てくることがきっかけになるんですね。ありがちで、まさに今の時代を表していますけれど。
そこから話は95年までさかのぼり、当時の自分が、ものすごくダサい青春を送っていて、いかに彼女に惚れていて、無様だったかが描かれています。
われわれは40代になって家族があったり会社があったりして、大人になったつもりですけれど、実は90年代の10~20代の頃には、「こんなにピュアな心を持っていた」「こんな気持ちで生きていた」ということが呼び戻される感じなんです。
そして、色々と忘れていた当時の自分に戻っていくんですね。それが「あの頃の僕、ごめん」みたいな感じで、思い出されて涙が止まらなくなるんです。
「90年代」の議論を喚起する小説
サッシャ 確かにわれわれの世代って、90年代が大人になってきた時だけれど、携帯電話が普及する直前だったので、もう少しコミュニケーションがダイレクトでピュアでしたよね。
金泉 この小説でも、彼女と出会うシーンはラフォーレ原宿の前でWAVEの袋を持っているんです。
サッシャ うわあ、懐かしいなあ。
金泉 そして、お互いを探すところから始まるんです。90年代はそういう時代背景で、ポケベルくらいしかないんですよね。
例えば、2ちゃんねるって1999年に始まるんですけれど、そうしたネットでの情報共有もなかった時代です。
その一方で、音楽や文学などではものすごく豊潤な時代なんです。そういうカルチャーもすごく表現されていて、あるあるも多いので引き戻されるんです。
作品には、J-WAVEでも流していた渋谷系の描写も多いんですけれど、当時は小室サウンドも同時に流行っていましたし、ビジュアル系バンドもいましたし、音楽シーンだけをとってみても、あらゆる熱量があったんですよね。
だから、この本を読むと「僕の90年代はこうだった」と呼び戻されるという意味で、90年代に関する議論を喚起する小説になっているんじゃないかなと思います。
サッシャ テリー(寺岡)みたいな世代はどうですかね。「そんなのあったの」って感じ?
寺岡 私は今31歳なので、小学生くらいかな。だから、記憶としては薄いのかも知れないんですけど、こういう世代が読んでも楽しめる内容なんですか?
金泉 そうですね。初版5000部で始まったんですけれど、発売1か月半で70000部を超えるくらいになっています。
先ほど限定された大人のケータイ小説と言いましたけれど、実は若い人たちも読んでいます。
その人たちに言わせると、90年代のオフラインにおける若い人たちの関係を見ると、すごくエモーショナルな気持ちになるそうで、若い読者も増えている感じです。
サッシャ 小説だけでなく映画やドラマでも言われますが、今これだけコミュニケーションツールが増えちゃうと、話が成り立たなくなるので、昔のツールが限られていた設定に戻さないと、気持ちの描写が難しいですよね。
寺岡 ドラマチックな展開とかね。
金泉 文学の世界では、村上春樹さんなども、携帯電話やインターネットの描写を極力排除して書いています。
燃え殻さんの特徴は、物語がフェイスブックで始まり、フェイスブックで終わることです。でも、中身は90年代のオフラインの話になっています。こうした話のつくりも非常に今っぽくて、決して過去を振り返るだけではないんです。
フェイスブックがなければこの小説が成り立たないところも、非常に面白いところですね。
サッシャ なるほど、気になります。じゃあ、週刊SPA!でも、今後90年代特集がありますか。
金泉 そうですね。これから90年代の議論が高まると思っていますので、ぜひそこに乗っかっていきたいなと思っています。
サッシャ 楽しみです。金泉さん、ありがとうございました。
金泉 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした金泉さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
23日は三星グループ代表の岩田真吾さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください