日本のビジネスパーソンが、ピコ太郎から学ぶべき7つのこと

2017/8/20
世界での活躍を目指す日本人ビジネスパーソンは、なぜ今、ピコ太郎に学ぶべきなのか。チャンピオンズリーグに関わる初のアジア人であり、世界を舞台に活躍する岡部恭英氏が、ピコ太郎に学ぶ「7つのポイント」を解説する。

海外で最も人気がある日本人

私は、大学卒業後に海外に出て以来、様々な国で、海外における日本人の苦闘ぶりを見てきました。
残念ながら、実力を出す以前に、気持ちの面で外国人に気遅れしてしまって、土俵にすら立てない日本人が結構多いのが現実です。
ピコ太郎は、6月にウェールズのカーディフで行われたUEFAチャンピオンズリーグ決勝にスペシャルゲストとして参加してくれましたが、素晴らしいパフォーマンスでした。こちらから招待しておきながら、失礼ですが、正直その凄さに驚きました。
心身ともにタフで、常に清々しいくらい自然体なので、外国でのアウェイ感を全く感じさせませんでした。
C・ロナウドとピコ太郎から考えた、一意専心と多動力
仕事柄、日本の有名人に海外で会うことがちょくちょくありますが、どんなに日本で有名な芸能人でも、海外ではまず認識すらされないのが普通です。
ところが、ピコ太郎の場合は、普通に街中を歩こうものなら、サインや写真撮影を求めるファンが殺到して、大袈裟ではなくて、まず一般道を歩けないのです。そんな日本人セレブに会ったのは、本当に初めてでした!
私は、20年以上に渡って自分なりの国際派キャリアを築いていく中で、「どうすればもっと多くの日本人が国際舞台で戦えるのか?」と、常に考えてきました。
カーディフでのピコ太郎のパフォーマンスを生で拝見し、その後に話を伺って、ピコ太郎は偶然が重なりラッキーで成功した「一発屋」などではない、と断言できます。
岡部恭英(おかべ・やすひで)
TEAMマーケティング (UEFAチャンピオンズリーグ) Head of Asia Sales
1972年生まれ。スイス在住。サッカー世界最高峰CLに関わる初のアジア人。UEFAマーケティング代理店、TEAM マーケティングのTV放映権&スポンサーシップ営業 アジア&中東・北アフリカ地区統括責任者。ケンブリッジ大学MBA。夢は「日本が2度目のW杯を開催して初優勝すること」。
むしろ、「少子高齢化と人口減」で日本経済の将来の見通しが厳しく、今後さらに海外に出ていく必要のある日本人にとって、「ピコ太郎の海外における成功」要因を分析して学ぶことは、大いにためになると思うのです。
自分なりの「ピコ太郎から学ぶ7つのこと」は、下記の通りです。
その①Rome wasn’t built in a day(圧倒的な継続的努力)
古坂さんの話からも明らかですが、PPAPは、一夜でできたわけではありません。何年もかけて、お客さんの前でライブで演じられてきたものが基になっています。
さらには、実際にメディアに出す作品にしようとした際には、会社からのサポート無しでも諦めることなく、機材、スタジオ、スタッフを「自腹」で準備(しかも、まだ「食えない」頃にです)してPPAPを完成させたのです。
かなり前に古坂さんが出演されたマネーの虎の番組にもありますが、何と10年程前から、「世界を驚かせたい!」という海外志向が明確ですし、自分の大好きな「笑いと音楽」の融合的アプローチに、長いこと取り組んできた訳です。
まさに、「ローマは一日にして成らず」です。
なぜPPAPは世界で大ウケしたのか
その②God is in the details (神は細部に宿る)
PPAPを、私たち音楽の素人が最初に聞くと、ただのコミカルなものに捉えがちですが、聞けば聞くほど、徹底的に細部に拘った「Attention to details」で創り上げられた作品であることが判明します。
ダンスミュージックの流行りのテンポ・リズムに、意図的に少しタイミングをずらした「カウベル」というサウンドを挿入。シンセサイザーは王道の機種。自ら行ったビデオ編集は、2~3週間かけて、フレーズの聞こえ方や見出しの見え方、位置まで、徹底的に修正を重ねる。
もっと遡ると、テレビに中々出られなかった昔に、インターネットの可能性を見出し、「インターネット上で受けるコンテンツを徹底的研究」。その研究を元に、導き出した拘りが「長さ」で、インターネットにおいては、「1分強の尺のコンテンツが流行る」と結論付けたのです。
「ビルボードHOT 100」誌に載っている最も短いヒット曲として、「ギネス世界記録」に載ってしまった訳ですから、見事な拘りと先見性としか言いようがありません。
その③Instantly recognizable(シンプルですぐに分かりやすい)
カーディフで、目の当たりにしたピコ太郎人気は本当に凄かったです。
歩いた途端に、ファンが寄ってきて、写真撮影やらサインのお願いで、一向に前に進めないのです。決勝が行われたミレニアムスタジアムから歩いて数分のホテルをご用意したのですが、結局、決勝当日は車でスタジアムまで移動してもらわざるを得ませんでした。
なぜピコ太郎はこれほど人気があるのでしょうか?
ピコ太郎が好き、彼のダンスや歌が好きというのは勿論ありますが、一番大きいと思ったのは、一般人が、「あの有名なピコ太郎だ!」と、パッと見てすぐ分かることです。
古坂さん曰く「得体のしれないFunnyな見かけ」に、あの何処に行っても目立つ派手なヒョウ柄。加えて、190㎝近い古坂さんの堂々とした体躯ですので、大柄な人が多い欧州でも、とにかく目立ち一目で分かるのです。これは、Appleのロゴや製品、NIKEのロゴなどにも通じる特徴かと思います。
反対に、日系メーカーの携帯電話は、よく見ないとどこの製品かわからないかと思います。ブランド、製品、ビジネスアイデアなどを扱う日本のビジネスマンにとって、ピコ太郎が海外で大人気を誇るベースの一つともなっているこの「Instantly recognizable」は、改めて注視すべき点だと思います。
その④Pause(間)
音楽の造詣の深い友人に指摘されて、なるほどと思ったのですが、PPAPは間が絶妙です。
「I have a pen, I have a apple…Uh! Apple-Pen!」と、途中で英語で言うと僅かなPauseが入り「…Uh!」が続きます。これが、「I have a pen, I have a apple. Apple-Pen!」と続くと、「間」がなく、ダラダラとした感じで余り印象が残らないのです。
これは、海外にて、外国人に、英語でプレゼンテーションをする際の日本人にとって、大いに参考にするべき点だと思います。
日本人の最大の強み。それは「間」です。
慣れない環境と言語のせいで、自信がないのと緊張のせいか、用意した文言を読むのに精一杯で、英語を喋り続けてしまう人が多いです。
大事なメッセージのところで、意図的に少しのあいだ黙って沈黙を作り、メッセージ力を強化したりと、日本では普通に使えているかもしれない「間」を、英語でも使うべきなのです。
Don’t be afraid of a bit of silence - Pause!
その⑤English
本連載の初回で、ピコ太郎が、世界のサッカー界の伝説的選手達と、英語でやり取りをする姿が映っていますが、欧州でも、終始あの調子で外国人とコミュニケーションを取っていました。
ピコ太郎の英会話コミュニケーション術も、大いに日本人に参考になると思います。英会話を苦手とする日本人と異なる、優れている点は、下記のとおりです。
● 話す前に言いたいことやメッセージが明確になっている
● 間違いを恐れずにとにかく話しかける
● 大きな声ではっきりと発音する
● 難しい単語や言い回しは使わずにシンプルな短文で話す
● 笑顔を絶やさない
非言語のボディーランゲージやスキンシップを生かす
言語そのものを超えた非言語でのコミュニケーションで言うと、余り日本で意識されないかもしれませんが、欧米の多くの国の場合、普段のコミュニケーションにおける、ボディータッチの頻度が多く大事です。
ピコ太郎もこれが絶妙です。
初回のビデオに出てくるブラジルの英雄ジーコとも、インタビュー中のボディータッチがとても自然で、相手とRapport(感情的な親密な関係)も上手く築いています。
同じく初回のビデオにある同じくブラジルのレジェンドであるデコに対しては、相手の関心を逃さないように、質問をする前に、左手で彼の動きを制して、質問に彼が集中する状況を自ら作っています。
その⑥Mental toughness
上記でも述べましたが、古坂さんは、「英語での間違い」や「受けないこと」を恐れてはいません(もちろん、ピコ太郎と古坂大魔王さんは別人(笑)なので、当然なのですが)。
ただ一つ言えるのは、日本の常識が通じない海外に出ると、色々と不都合や思い通りにいかないことが出てくるのは、当然のことです。
一々そんなことで、「心が折れる」など言っていたら日本ではありえない「想定外」ばかり起こる海外ではとてもやっていけません(正しい日本語的に言っても、「心が折れる」という表現はおかしいですし)。
「海外での劣等感」との戦い方
日本の会社や政府系組織に属しておらず「個人の力で海外で活躍している人」を、20年以上に渡る3大陸5ヶ国での海外生活で何人も見てきましたが、「Mental toughness」を持っていない人を見たことがありません。
その⑦Love(愛)
ピコ太郎のカーディフにおける衝撃的パフォーマンスに感銘を受け、古坂大魔王さんに色々お話を伺い人柄を知ってファンになり、PPAPの海外での大ヒットの秘訣を自分なりに分析しましたが、最後は、古坂さんの言う「愛」だと思います。
売れない下積み時代が長かった古坂さんですが、親の教えもあり、常に周りの人たちと真摯に向き合い誠実に付き合ってきました。
それが故に、R1グランプリを前に、いざPPAPをインターネットでバズらせようとした時に、古坂さんを慕う有名無名の多くの芸能人が、昨年8月25日「一極集中」の、SNSでの「多面的」で「スピーディー」な拡散に無償で協力してくれて、まずは日本でバズることに成功した訳です。
バズるための「3つの条件」
ジャスティン・ビーバーがどうのこうのと言う人もいますが、古坂さんを愛する多くの人たちの協力を経て日本でバズったから、アジアや欧米の専門サイトでも人気が飛び火して、それがジャスティンにまで届いて、世界的ヒットになったのです。
「海外でヒットする」、「海外で活躍する」と言うと、なんかアングロサクソンのビジネスライクな感じを想像する日本人も多いかと思いますが、どこの国に行こうと、人間は人間であり、最後は一人一人の信頼関係(=愛)が、最も大事な要素であると、古坂さんのお話から、改めて学びました。
やっぱり最後は愛ですよ
今回は、大盛況だった先月の対談イベントを記事化したものですが、当日のイベントは、古坂大魔王さんを長くサポートしているファンが日本各地から集まり、双方向からの愛と信頼関係で満ち溢れており、盛り上がるだけではなく終始和やかで素晴らしい雰囲気でした。
翌日ニューヨークの国連本部に飛ばなくてはいけないのにもかかわらず、イベントが終わった後も夜遅くまでイベント会場の玄関で丁寧にファン達とお話をされている古坂さんを、「自分もかくありたい」と幸せな気分と共に、後ろから見守っていたのをいまだに覚えています。
最近の日本はネガティブなニュースが多いような気がしますが、日本は素晴らしい国だと思います。ネガティブ・パワーではなくて、もっと大きな「愛」に支えられた一人一人の「信頼関係」をたくさん築き繋いでいって、日本をどんどん元気にして行きましょう!