【若林秀樹】トップアナリストから技術経営、企業分析を学ぶ

2017/8/16

2日間限定の特別講座

電機分野のトップアナリストである若林秀樹氏。NewsPicksでもプロピッカーとして活躍。その深い知見に多数のピッカーから支持を集めている。
そんな若林秀樹氏は今年4月から東京理科大MOT(Management of Technology)大学院教授に就任した。
東京理科大MOTは、来年の新課程にむけてMITスローン校のマイケル・クスマノ教授の指導の元、カリキュラムを一新した。そして教員などの陣容も大きく変わる。
若林教授だけでなく、既に、元セールスフォース常務を歴任した関教授、著名なエコノミストであるフェルドマン教授が就任した。
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そのような新しい変革の中で、理科大MOTとNewsPicksが共同研究による講座、将来の教育ツールの1つの要となる実空間(教室)と仮想空間(情報メディア)がクロスする共同講座を特別に2日連続で企画する。
今後の企業経営、特に、MOTが競争力の中核となり、企業の盛衰を分ける重要な鍵になると言われている。
本講座はトップアナリストから技術経営の真髄や企業分析、未来予測を学ぶ絶好の機会になるだけでなく、新しいMOTの変革の一端を理解することができるだろう。
若林秀樹(わかばやし・ひでき)/東京大学工学部、同大学院修士了。野村総研、みずほ、JPモルガンで電機アナリスト。かつて、ヘッジファンドも共同創業した。30年の実証分析に基づく「経営重心」理論を構築、NoSideのシンクタンクである(株)サークルクロスコーポレーションを創業。東京理科大学大学院、イノベーション研究学科教授になった現在も、現場を重視、アナリストとして、取材や説明会に参加。

【講座概要(1日目)】

講座タイトル:若林教授の「社長の再定義」
日程:9月9日(土)
時間:13時~14時30分、15時~16時30分
※お申し込みはこちら
内容:NewsPicksでも多くの反響のあった若林教授の
をベースに、スライド解説では語りつくせなかった多くの事例も踏まえ、深掘りの講義や、討論、演習で相互に理解を深める。
前半:若林教授の講義
会社法が変わり、M&Aによる異業種参入で、ポートフォリオ激変、さらに、コングロマリットとファンドも垣根がなくなりつつある中で、新たに社長、CXOの再定義を試みる。
電機メーカーの歴代社長や、電子部品などのオーナー系トップなど、実際に親しく付き合いをしてきた社長に加え、「私の履歴書」に掲載されている著名社長、海外の著名トップを独自の切り口で分析し位置付けをする。
後半:グループワーク
参加者の所属先の企業の社長や、孫正義、テリー・ゴゥなど著名経営者などを例にディスカッション、演習、グループワークを行う。
講義で紹介したトップだけでなく、参加者の所属会社のトップなど、質問にも答える形で、分析を試み、ディスカッションを深める。
また、参加者の所属会社の経営の実態や戦略に基づいて、役員組織や、あるべき社長のキャリアパスを「設計」するグループ討議も行い、発表してもらう。講義だけでなく、こうした演習を通じて、社長の再定義について、理解してもらう。
定員:90名
参加費:10,000円(税込み)
場所:理科大キャンパス PORTA神楽坂5F P51教室

【講座概要(2日目)】

講座タイトル:若林教授の「電機業界の未来予測塾」
日程:9/10(日)
時間:13時~14時30分、15時~16時30分
※お申し込みはこちら
2016年から2020年にかけては、電機業界にも、大きな技術変化の波が押し寄せる。
その中で、OLED化の影響をケースとして取り上げ、電機メーカーだけでなく、製造装置、材料メーカー等への影響について考える。
本講座はイノベーションや新技術が、経営にどのような影響を及ぼすか、またそこでトップや政策当局はどう考えるべきかについて深く考える機会となるだろう。
前半:若林教授の講義
前半は、NewsPicksでも寄稿したOLED動向について最新動向もフォローしながら、LCD産業離陸の当時と比較しながら、未来予測、市場規模予測のノウハウも含め、講演。
後半:グループワーク
後半は、サムスン、LG、シャープ鴻海、JDI、さらには、関連するINCJも踏まえ、参加者が実際に、もし、こうした各社のトップになれば、どういう決断をすべきか、ロールプレイングをしてもらい、議論を深めたい。
定員:90名
参加費:10,000円(税込み)
場所:理科大キャンパス PORTA神楽坂5F P51教室

特別メッセージ:若林秀樹

本講座は、これまでの大学での講義を更に進めて、より討論や演習、ロールプレイを取り入れたものだ。
また既に、前期のMOTの講義で履修生に好評を博したものであり、その新しい教育の場のあり方を、広くNewsPicksの利用者にEnjoyしてほしいという想いもある。
同時に、本講座は教室での講義に留まらず、NewsPicks がもつプラットフォームを活用して、講義のエッセンスやそこで提起された課題について、社会に発信しコミュニケーションする。
これはライブとネット、リアルとバーチャルのクロスによる新しい講義のかたちを創造するものだ。
そして、新しい大学×メディア(理科大MOT×NewsPicks)のあり方をも社会に訴えるものである。
ロールプレイで経営を学ぶ
各社の経営戦略を考察する場合には、そのトップの立場になって考えることが必要だ。
そうでないと業績予想もできないし、コンサルティングもできないし、適切な助言もできない。
ディープラーニング的に経営判断を予想
外部からの判断ゆえに、外部環境分析はわかっても実際に経営トップが、どういう内部情報を得ているのか、社内外の誰に相談するのかは不明だ。
もちろん、経営トップの頭の中の思考パターンや性格まで想像するのは困難を極める。
さらに、外面のいい方はいるだろうし、経年変化もするだろう。また、わざと、読まれないように、誤魔化したり、ノイズ情報を与えて煙に巻く経営者も多い。
しかし、いわばディープラーニング的に過去の経営判断を分析していけば、トップも含めた経営陣の判断は予測できる可能性はある。
すなわち、経営トップの経歴を精査し、発言や過去の行動パターンを分析しさらに、面談や会食を共にし長年付き合っていれば、ある程度は想像できる。
そしてある環境変化をINPUTとした場合の経営判断というOUTPUTの予想精度を上げることは不可能ではない。
実際の世界は複数の生身のプレーヤー
この予測は、あくまで外部環境変化をINPUTした場合のある1社のOUTPUTであるが、それでは、ライバル関係にある2社がどう判断するかは、まさにゲーム理論となり、複雑化する。
机上のゲーム理論ではなく、個性もあり相手の性格にも影響される生身の人間である。
さらに、実際は複数の異なる会社のサプライチェーンの中で、各社の経営者の判断が複雑に影響しあう。
以前、AIに関してゲームと経営への応用において、1:1の将棋や碁に比べ4人の麻雀はより難しいという考察をしたが、経営ではそれ以上だ。
1人では複数社のトップになり切れない
ある時点で、A社の経営トップの気持ちになり、経営戦略と判断を想定し、次にライバルB社を考え、さらに関連のC社を考えるというと難しい。
どうしても同時に、A、B、C社のトップの気持ちになるといういわば多重人格者のような発想は無理がある。
役者でも1人の英雄の役を、そのつもりになり切り演じられても複数となり、それが同時だと混乱するだろう。
また、どうしても、どこかの1社に肩入れし、そこに拘泥するのが人情だ。
複数での社長ゴッコ
そこで、数人で数社、それぞれのトップを演じればある程度こうした混乱は避けられる。
1時間くらいならその会社のトップになったつもりで、相手のトップ役と戦略判断を考え、複雑に変化する環境の中での各社の戦略、打ち手がどう変わるかを模擬できる。
ただ、判定助言役がいて、これは市場の神様、あるいは、株主や政府(監督官庁など)だが、あまりに、実態と外れた経営判断をする場合は注意をしリアリティを増すように努力する。
簡単にいえば、複数で社長ゴッコをするようなものだが、当然予め、会社の業績、経営動向、経営陣と社長の経歴や過去の判断や性格エピソードなどは頭にいれておく。
これは、映画で役者が演ずる歴史上の人物の伝記を読み、縁のある土地を訪ね、その人物になり切るべく努力するのと同様だ。
液晶からOLED化での各社の判断
今回は、液晶が有機ELに変わる中で、シャープ、鴻海、JDI、INCJ、サムスンといった関連会社のトップになったつもりで、お互いに経営判断を示し、それにより「どう経営判断が変わっていくか」の演習を行った。
よりイメージをふくらますために、トップの顔写真を頭にのせて話し方もまねてもらった。
これは、いわば経団連か、業界内での会議でお互いの戦略を言い合うようなものだ。
おそらく、実際にもこうした場で、トップ同士が忌憚なく経営を議論し、そこで提携などに至る例もあるだろう。
例えば、最近の報道から、鴻海は次の積極的な打ち手を発表すると、当然それに対しシャープ役も、従うだけでなく提案や反論もあるだろう。
また、INCJ役、サムスン役も、それぞれの立場で行動する。その結果、積極投資、M&A、事業撤退、会社再生法・上場廃止などという判断も出てくる。
予想外の結果や参加者の学習効果
そこで、面白かったのは、鴻海のテリー・ゴゥ会長役であり、彼がその性格になり切ることにより自身1人では想像できなかった経営判断予測が出てきたことだ。
そして、それが実際、その後、調べる過程でそういう結果になる可能性もあり、大変参考になったし示唆的であり効果的でもあった。
また、参加者達も、自身は社長にならなくても社長に仕えるスタッフとして、非常に参考になったようだ。
また、社長の大変さが身に染みて理解でき、そういうトップのためにどういうサポートをすべきかについても深く認識したという。
これは、東芝メモリー社を巡る各社、役所も含めての事例にも有効た。今後はさらにノウハウを蓄積し、ブラッシュアップしたい。