就活に親参戦? 大学で保護者向け就活説明会が開かれる理由

2017/8/9
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
9日は、人材研究所代表の曽和利光さんが出演。「就活、親の方が熱い? 説明会盛況、大学が『心得』伝授」(朝日新聞デジタル)を題材に、保護者向け就活説明会が開かれる背景について解説しました。

就活、親の関与は当たり前?

サッシャ 今日は、「就活、親の方が熱い? 説明会盛況、大学が『心得』伝授」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の曽和利光さんです。
曽和さんは、人材研究所の代表として企業の採用コンサルティング業務などでご活躍されています。
サッシャ おはようございます。
曽和 おはようございます。
サッシャ 今回のこの記事、内容はどういったものなんでしょうか?
曽和 大学のキャリアセンターや大学側が、保護者に対して就職活動の説明会を行っているという内容なんですけれど、それだけ聞くと過保護なイメージがすると思います。
サッシャ 就活なのに親も聞くのか? という話ですよね。
曽和 今、親御さんが子供の就活にガンガン出てきているという実態があります。
記事を見てみると、大学側が「過保護にしすぎるな」と伝えているのは、「親が子供の就活をミスリードするんじゃないか」という懸念があるからのようです。
サッシャ むしろ防波堤として行っていると。
曽和 そんな感じですね。
例えば、保護者には昔の人気企業ランキングが頭の中に入ってしまっているので、昔の人気企業と、今の若い人なら誰もが知ってる企業の両方に受かって「どっちに行く?」となった時に、「あなた、こっち(昔の人気企業)でしょう」となりがちです。「そういうことを言わないように」というアドバイスも説明会でされているようです。
サッシャ そんなに親が色々言うものなんですね、今は。
曽和 ひとりっ子が増えているとか、ブラック企業の話題もあり、心配していることもあるんでしょうね。
ただ今は、産業界がどんどん変わってますよね。
例えば、メガベンチャーは、ベンチャーというより完全に大手企業なんですけれど、親御さんの中には「え、どこ?」「怪しい会社に入ってしまうのではないか」と不安に思うケースもあります。
そのため、最新の業界の説明もしてあげないと、学生の就活がミスリードされるんじゃないかという点から、大学も取り組んでいると思いますね。

企業も対策「オヤカク」

サッシャ ずっと昔から家庭では「僕この会社受かったから入る」、「お前そんな会社ダメじゃないか」という親子の戦いがあったと思うんですけど、今は大学にまで親が言いに行くんですか?
曽和 大学もそうですし、聞いた話では、入社式前に企業側が「親は入社式には来ないでください」と言っておかないと、親が来ちゃうということもあるらしいです。
他には、採用担当者の言葉で「オヤカク」というものがあるそうです。
学生が内定を受諾した後に、「親もOKと言っているか」を確認させるんですね。
そうしないと、親御さんの反対が理由で最後に辞退するケースがあることも、普通になってきているのが現状のようです。
私みたいな40歳過ぎたおじさんからすると「自分で決めたらいいんじゃないか」と思うんですけれど(笑)。
サッシャ 僕も昔、大学受験の時に、隣の受験生が親と一緒に受験する学校の門をくぐっていて、驚いたことを覚えています。20年くらい前からそんなことは普通にあったのかなとは思うんですよね。
曽和 昔も今も一部、そういうケースはありましたよね。
しかし、それがかなり多くなってきたので、大学側がまとめて対応しているのだと思います。
寺岡 曽和さんご自身も、保護者向けのセミナーの講師をされていると聞いたんですが。
曽和 保護者向けセミナーは初めて要望があって、実はこれからやるんです。
大企業を受けても内定率は1%とかしかないので、実態はほとんどの人は落ちるんです。そういう意味で心のサポートみたいな「後方支援」はしてあげた方がいいと思います。
ただ、親御さんが今の世の中をわからずに「あそこ受けなさい、あそこ受けなさい」と言うことが、学生本人にとってはマイナスになる、といった話をしようとは思っています。

希望勤務地にも親の意向

サッシャ 人の親としてはすごく気持ちがわかる部分もあるんですが、自分で決めなかったら失敗した時に悔いが残るじゃないですか。大人になったら何だかんだ失敗も含めてリスクとってやらないと、後で辛いよね。
曽和 そう思います。
あと、親御さんが自分の手元に子供を置いておきたいので「配属先はここに希望しなさい」「ここが本社の会社にしなさい」と、勤務地に色々指示を出してくるケースも結構多いですね。
親御さん自身は、子供のことを考えるとどうしても保守的になってしまうのですが、今、日本は少子化でマーケットは縮小していて、企業のグローバル化がさらに進んでいますよね。
なのに、海外で働きたくないと言っている人が7割近くもいるんですよ。それは「まずい」と感じています。
サッシャ 海外で働きたくない大きな理由として、親の影響があると?
曽和 それは今の流れを受けた私の仮説なんですけれど。
ただ、事実として、これは産業能率大学さんが3年に1回くらいやっている調査なんですが、新入社員で「海外で働きたくない」というのが、10年前だと3割弱だったものが右肩上がりで増えてきて、最新の2015年の調査だと7割弱くらい。
かなり由々しき問題だと思います。
寺岡 時代はどちらかというとグローバル化と言われ、外向きな時代背景のなかで、海外で働きたくないと。
曽和 英語はできるようになっているし、留学経験も増えているなかで、働くとなると、出張はいいけれど駐留はしたくないとか。
親御さんが、どこで働くかというところまでかなり言ってきていることも背景にあるのではないかと考えています。
サッシャ 子供を愛しているからこそ、という気持ちもすごくよくわかるんだけどね。本当に子供のことを考えるのなら、口を出し過ぎないことも大事ですよね。
曽和 「かわいい子には旅をさせろ」じゃないですけれども、本来なら我慢して見守るのが一番いいと思うんですけどね。

口出しするなら親も勉強すべし

寺岡 これまでネガティブな話が続きましたが、逆にメリットはあるんですか?
曽和 もちろん、親御さん世代は共働きも多く社会のことを知らないわけではないのと、親御さんにはポジショントークはないですよね。
例えばですけれど、キャリアセンターだったら、有名企業に入ってもらったほうが生徒募集でアピールしやすいですよね。だから「有名企業に行け」という風に言うでしょう。
人材ビジネスの方は、クライアントの会社に入れたいと思いますよね。
そういう意味では、親御さんにちゃんと情報が入ってさえいれば、一番いい相談相手にはなると思うんですね。
サッシャ 親も、就活中の学生も聴いていると思うので、何かアドバイスありますか?
曽和 先ほども言ったように、子供への愛があるので親御さんはいい相談相手になると思うんですが、自分が経験した就職活動とか見えている範囲だけで話すとミスリードしてしまいます。
もし本当に相談相手となり、口を出すのであれば、就職活動の状況や産業の浮沈など、めちゃくちゃ勉強してほしいと思います。
あとは、例えばメガバンクと、飛ぶ鳥落とす勢いの誰もが知っているベンチャーと両方に受かった場合でも、「メガバンクでしょう」と最初から決めつけでアドバイスするのはマイナスかなと思います。
メガバンクが悪いということではなくて、個々人の個性を見てアドバイスしてあげた方がいいと思います。
サッシャ さっきも言ったように、人生自分で決断したことは悔しくても次に進めるけれど、人に決断されたことって悔しさがとれないとか学ぶことが少ないと思うんですね。
だから色々なアドバイスをもらっても、最後は自分で決断するのが大事かなという気がします。
曽和 「最後は自分で決めなさい」。親御さんは子供にそういう風に言ってあげて欲しいと思いますね。
サッシャ 曽和さん、もっと話したいですね(笑)。またやりましょうね。ありがとうございました。
曽和 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした曽和さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
10日はメガネスーパーの川添 隆さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください