世界各地でコワーキングスペースを提供するオランダの企業「Spaces」は、成長路線の同市場で大手「WeWork」の手ごわいライバルとなっている。
「人に囲まれているのが好きなのだ」
多くの起業家たちと同様に、マルタイン・ロールディンクはこの10年間、いわゆる従来型のオフィスで仕事をしていない。それもそのはず、彼はオランダのアムステルダムに本拠を置くコワーキング企業「Spaces」(スペイシズ)を2008年に立ち上げた創設者なのだ。
その従来的でない仕事のスタイルは、人が集まって一緒に働くというやり方がいかに好まれているか、それが欧米社会にどれほど深く根付いているかを示している。
ロールディンクは大学時代、乗り物で移動しているときが一番仕事がはかどったという。オランダ北部にあるフローニンゲンの実家へ帰る3時間の移動を振り返りながら、「電車にはストーリーや動きがあり、開放的な雰囲気が好きだった」と語る。
そして現在、ロールディンクはその雰囲気を、Spacesを通じて売り出そうとしている。同社の提供するコワーキングスペースは、すでに世界40カ所以上に広がっている。
「人々のつながりやエネルギー、ストーリーを感じられること。それが私の原動力になっている」とロールディンクは言う。「人に囲まれているのが好きなのだ」
そう考えるのはロールディンクだけではない。2014年半ば以降、共有オフィス各社が米国で貸し出したスペースは全体で約34万平方メートルを超え、業界全体での貸し付け面積は約250万平方メートルあまりまで伸びている。
不動産会社JLLによると、これは米国オフィス市場の約0.7%を占める数字であり、同セクターは向こう3年間に引き続き成長が見込まれるという。
調査会社Small Business Labs(スモール・ビジネス・ラボ)は、世界のコワーキングスペースは2016年の1万1000カ所から、2020年までに2万6000カ所まで増加すると予想している。
アマゾンやフェイスブックも顧客
輸送業界のスタートアップ、Via Transportation(ヴィア・トランスポーテーション)にとって、ニューヨーク市ロングアイランドシティにSpacesのレンタルオフィスを構えることは、本社そのものをマンハッタンから移転するよりも便利で安くつく選択肢だった。
Viaは実際の経費を明かさなかったが、ロングアイランドシティに5~10人分のスペースを借りて、カスタマーサービスの電話受付を連日処理しているという。
Spacesでは、月額300ドルの会費で共有スペースを使うことができる。占有デスクが欲しい場合は月額429ドルからとなっており、40人以上のグループの場合は月3万ドルの経費がかかり得る。
Viaのゼネラルマネジャーを務めるアレックス・ラボイは、ロングアイランドシティにオフィスを構えることを選んだ主な利点として、この場所がもともとタクシー運転手が拠点にしている土地であることを挙げる。
さらに、Spacesのレンタルオフィスが入る同じ建物には、ニューヨーク市のタクシー・リムジン委員会の中央本部も入居する。「当社のドライバーにとってアクセスしやすい拠点が、もう1つ必要だった」とラボイは述べている。
米国15カ所でサービスを提供するSpacesは、2014年にレンタルオフィス会社のIWG(旧社名リージャス)に買収されている(金額非公表)。Spacesは向こう3年間で売上10億ドルを目指しており、顧客にはウーバー、アマゾン、フェイスブック、ツイッターなどが名を連ねる。
Spacesの収益モデルは、他のコワーキング企業と同様だ。まずは、不動産開発業者から物件を借り、そこをデザイン性の高いワークスペースに作り替える(一部の物件は共同所有とし、開発業者と利益分配契約を結ぶこともある)。
そしてそのスペースを、デスクやプライベートルームといった単位で、従量料金でクライアントに貸し出すのだ。
シェアリングエコノミーの起点
Spacesには手ごわい競争相手がいる。ニューヨークに本拠を置くコワーキング大手のWeWork(ウィーワーク)だ。
2010年に創設され、評価額200億ドル近くとされる同社は、世界の50を超える都市に進出している。売上高は公表していないが、創設者のアダム・ニューマンが先日述べたところによると、2017年度は売上10億ドルに到達するペースだという。
Spacesのロールディンクは、たとえWeWorkが市場を支配していても、コワーキング業界には多くのプレイヤーが参入する余地があるとみている。
「WeWorkは大手だが、市場全体の規模に比べればまだ本当に小さな存在だ」とロールディンクは述べる。それにWeWorkは、Spacesとは違ってヨーロッパでの事業拡大が進んでいない。
創設まもないSpacesにとって、国際的な事業拡大はコスト面で大きな負担だったが、それでも同社は、既存市場での事業拡大に力を注いだ。本拠オランダでは、アムステルダムに加え、ロッテルダムやハーグといった近郊の都市にも拠点を構え、最終的にはヨーロッパ全域に進出している。
たとえばフランスでは、現在パリに開設している3つのオフィスに加えて、リヨン、マルセイユ、ボルドーにも進出を計画している。これに対し、WeWorkはパリに拠点が1カ所あるのみだ。
ロールディンクは、コワーキングが今後も支持を集め続けるのは間違いないとみている。彼がその確信を得たのは、会社を創設してすぐのことだ。ロールディンクが会社を立ち上げた2008年9月15日は、米国でリーマン・ブラザーズが破産を申請した当日だった。
広範囲に影響を及ぼした金融危機により、ロールディンクの会社はベンチャーキャピタリストからの資金調達にとりわけ苦労することになったが、その一方で、金融危機のおかげで同社のようなビジネスモデルの先例が築かれたとロールディンクは主張する。
「いま振り返ると、あれがシェアリングエコノミーの起点だった」とロールディンクは言う。「巨額の損失を出したあの出来事をきっかけに、自分たちはレバレッジで儲けようとするだけで、共有していなかったと誰もが気づいたのだ」
原文はこちら(英語)。
(執筆:Zoë Henry/Staff writer, Inc.、翻訳:高橋朋子/ガリレオ、写真:ismagilov/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.