『レタスクラブ』の復活から、紙の強みと可能性について考える

2017/7/27
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
27日は、小学館の常盤敬介さんが出演。「紙の雑誌の可能性を使い切れ!3号連続完売『レタスクラブ』復活の舞台裏」(AdverTimes)を題材に、について解説しました。

レタスクラブの何が変わったのか

サッシャ 今日は、「紙の雑誌の可能性を使い切れ!3号連続完売『レタスクラブ』復活の舞台裏」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の常盤敬介さんです。
常盤さんは、小学館でウェブメディアの編集・ディレクション業務を担当されています。おはようございます。
常盤 おはようございます。
サッシャ 僕は、わりと本も雑誌もデジタルで買うようにしているのですが、レタスクラブは紙媒体が売れているんですか?
常盤 創刊30年目の老舗雑誌ですけれど、3号連続で完売しています。
雑誌は、10年以上も売れないと言われ続けていて、今もつくった半分が書店で売れずに返品される時代なんです。
サッシャ ええっ、そんなに?
常盤 その意味で、完売がいかにすごいかが分かって頂けると思います。
サッシャ やっぱり、業界内でも驚きなんですか?
常盤 そうですね。メディアの根幹ですけれども「読者が何を求めているか」という読者ニーズに真摯に向き合い、紙面に反映されたことで完売に至ったんじゃないかと思います。
サッシャ レタスクラブは、具体的に何が変わったんですか?
常盤 一番大きく変わったのは、付録ですね。書籍の半分を付録にすることは、これまであまりなかったと思うんです。宝島がブランドムックを付録にすることはありましたけれど。
寺岡 付録に本が付いてるわけですね。

紙の強みを活かす

サッシャ 普通に売っている本の半分を付録として載せてしまうと。読者ニーズに関して言うと、紙面ではどう反映されているんでしょうか?
常盤 レシピに関して言うと、10年以上前からクックパッドがありますし、最近では料理動画サービスも増えています。
ただ、ウェブである一つのレシピを見て、それをつくろうと思った場合、そのためだけに食材を買わなければいけませんよね。
そこで、雑誌では1週間分の献立とともに買い物リストを載せるなどしています。これは紙ならではの取り組みだと思います。
新編集長となった松田(紀子)さんは、ウェブでできない、紙でできることに、とことんこだわるとしています。
レタスクラブの強みは、すべてプロの料理家が読者のために、味はそのままで手順を簡単にしたレシピをつくることにあり、デジタルは敵でなく、そもそもコンセプトが違うものとしてつくられているのが面白いところかなと思います。
サッシャ 今のお話を聞いていると、デジタルでもできるような気がするんですけれど、そこに紙の強みを活かしているんですか?
常盤 やはり、出版社が持っている料理家やカメラマンとのコネクションであったり、レシピのシズル感は紙ならではだと思います。
ちなみに、小学館では『やせるおかず 作りおき』というヒットしたレシピ本があるのですが、動画サービスのDELISH KITCHENとコラボして、いくつかのレシピを動画にしてプロモーションをしました。
撮影現場に立ち会って面白いと思ったのは、紙の雑誌は料理家やタレントにフォーカスするのですが、DELISH KITCHENでは管理栄養士がレシピをつくっているそうなんです。
どういうことかというと、料理が好きで管理栄養士になっても、病院などに勤務すると病人食などが多くなり、遊び心のある料理をつくる機会がなかなかないんですよね。
サッシャ なるほど。健康管理が第一になりますからね。
常盤 そうした方々の「個人としての表現」がデジタルの強さでもあるので、紙とデジタルでは活躍する人が違いますし、ユーザーの受け取り方も違うなと思います。
デジタルが紙を殺すなんて言われますけれど、これからも出版社はプロモーションのツールとしてデジタルを使う時代になってきているなと思っています。
サッシャ では、引き続き紙で読む体験は残ると思いますか?
常盤 全く違う体験なので、間違いなく、なくならないですね。
サッシャ 他社の雑誌に関する記事でしたが、どの点が一番参考になりましたか?
常盤 編集長の松田さんは、リアルな主婦の悩みやつまづきをとことん探ることに、労力を使ったんじゃないかと思います。
紙が売れないと言われていますけれど、自分の妻を見ていても、やっぱり雑誌は年に1~2冊買うかどうか。普段何をしているかというと、スマホを使ってメルカリなどで子供の服を探しています。
こうしたリアルな生活者の実態を、作り手側は見落としがちなんです。そのリアルを探っていくことで、紙とどう付き合うか、デジタルとどう付き合うかのヒントが詰まっているんじゃないかと思います。
サッシャ そのかい離がなくなれば、紙を手に取りたいと思う人も出てくるわけですね。常盤さん、ありがとうございました。
常盤 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした常盤さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
来週31日は弁護士の菅野朋子さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください