【第8回】歴史は繰り返す。後藤新平と震災復興
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所有者不明土地の問題について、整理しておきます。
地価下落や人口減によって、誰が所有しているか不明な土地が年々増しています。そして、久保田さんが関わった陸前高田市が象徴となりましたが、東日本大震災で復興が遅れたことを契機に社会問題化しました。
動いたのは今年2017年。国土交通省が粘り強くこの問題にあたり、今年の「骨太の方針」に盛り込まれ、来年の通常国会に法案が提出されることになっています。NewsPicksでも話題となりました。
所有者不明の土地、公的利用へ新制度着手 道路や公園に(朝日新聞)
https://newspicks.com/news/2278917
骨太の方針2017 (p37-38参照)
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2017/2017_basicpolicies_ja.pdf
その後、有識者会議が進められていて、九州よりも広い土地(410万ヘクタール)が所有者不明に陥っていることが明らかになっています。
持ち主不明の土地、九州より広く 「満州国在住」登記も(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASK6R3VX0K6RUUPI002.html
東日本大震災から得た教訓として、次に大きな震災が起きる前に、ぜひこの問題に決着をつけていく必要があります。第8回のNewsPicks連載は、在任中理不尽だと感じた話、復興事業と財産権がテーマです。
関東大震災でも、東日本大震災でも問題になりました。今後の災害時にも、必ず同種の問題が出てくると思います。後藤新平の帝都復興計画が頓挫したのは、地主の猛反の為、というのは間違ってはいませんが、もっと大事な論点があります。
それは、当時の山本権兵衛内閣が、政党の支持基盤を持たない脆弱なものだったという点です。
その為、強力な指導力を持たない山本内閣は帝都復興を進める為に、形の上ではオールジャパンの形式を作らざるを得なくなり、その結果政府を主体とした帝都復興院、関係省庁からなる参与会、政党、財界人からなる帝都復興審議会の3つの組織を作り、その合議制で東京再建を進めることになりました。
結果的にはこれが大失敗の元でした。
帝都復興で地方に回す予算が少なくなり、次の選挙で敗北することを恐れた与党政友会が政府案に反対(政友会の支持基盤は地方の農家だったのです)、次いで土地収用は政府による私有財産の侵害に当たり、また巨額の復興費用は財政を危うくするとして渋沢栄一らの財界人からも反対に回ります。
この結果当初30億と言われた復興予算は4億5000万円に減額され、被災地公有は区画整理に格下げ(これがのちの都市計画法になります)されました。
また肝心の帝都復興院の費用まで削減された為、復興院も僅か半年で解体されてしまいました。
その後、政友会や憲政党はこれを好機とみて一斉に山本権兵衛内閣の倒閣に走り、火災保険法案を巡って帝国議会は紛糾。
二進も三進もいかなくなった山本権兵衛内閣は、その後起きた皇太子暗殺未遂事件により退陣することになります。
この様に、根本的な問題は、地主の反対などではなく、国家の一大事にあっても纏まることができずに、内閣打倒を目指して政争を繰り返した政治家にあったといえます。
もっともその意味では、確かに今もって、歴史は繰り返している、と言えるかも知れませんね。