【新】AI都市トロントはシリコンバレーを超えられるか

2017/7/18

IT業界復活の起爆剤に

グーグルが自動運転車の研究を始め、アマゾンがしゃべる家庭用スピーカーの開発を始めるよりずっと前から、カナダでは少数の研究者が現代のAI(人工知能)ブームの礎を築いてきた。
しかし、ゴールドラッシュの中心は遠く南のシリコンバレーに移った。
近年は多くの若手研究者が、グーグルやフェイスブック、アップルなどの魅力的な報酬にひかれてアメリカに流出している。
カナダ国内でもAI関連のスタートアップは数多く生まれているが、ベンチャーキャピタルとビジネススキルと楽観主義があふれるカリフォルニアへと、拠点を移すところも少なくない。
「カナダ政府は数十年前から投資を続け、AI技術を先導してきた。だが、カナダはその恩恵を受けてはいない」と、カナダ銀行の元上級副総裁で、現在はトロント大学ロットマン経営大学院の学長を務めるティフ・マッケレムは言う。
カナダの政府や企業、大学、技術者にとって、AIの本拠地の座を取り戻すことは最優先の課題だ。専門知識を活用できるビジネス環境を整備し、カナダの大学が育てた専門家を国内につなぎとめるのだ。

グーグル、MS、IBMが研究所を開設

その要として期待されているのが、ジェフリー・ヒントンやリチャード・サットン、ヨシュア・ベンジオなど、カナダのAI研究の重鎮たちだ。IT業界が機械学習を将来性のない周辺分野にすぎないと考えていたころから、彼らは研究に取り組み、飛躍的に進歩するきっかけをつくった。
(Aaron Vincent Elkaim/The New York Times)