休暇のはずが、逆効果になる場合も

ストレスの多い仕事で疲れ切ってしまったときは、休暇を取るのがいちばんだと思えるかもしれない。しかし、科学的な研究によると「カバンに荷物を詰めて、さあ出かけよう」というごく当たり前の衝動は、実は逆効果になることも多いようだ。
ハーバード大学で幸福について研究するショーン・エイカーは、たとえば最近オランダで行われた研究は「休暇後の幸福感は休暇前と変わらない」という結果を示したと述べる。
何が間違っているのだろう。ストレスでくたくたになった頭をリラックスさせるには、どのような休暇を計画すればいいのだろう。エイカーをはじめとする専門家たちは、科学研究をもとに多くのアドバイスをしている。

1. 遠くに行く(さもなければ家にいる)

たいていの楽しみは、節度をもって行うことが正しいアプローチかもしれないが、旅行に関する限り、中途半端は避けたほうがいいと専門家は言っている。まったく初めての場所に行くか、さもなければ家でのんびりとストレス無縁の休暇を過ごすか、どちらかにすべきだというのだ。
遠くに出かけることが大好きなエイカーは「目的地が遠ければ遠いほど、旅の経験は幸せなものになる」というTwitterの調査結果を引用する。しかしこれには、すべての人が同意するわけではない。燃え尽きる一歩手前というぎりぎりの状態の場合は、家にいるのが最善策かもしれない。
「ストレスに苦しんでいるときに必ずしなければならないのは、何か目先の変わったことをできるだけ減らすこと。慣れ親しんだものが必要なのだ。だが、正反対のものを求めることが非常に多い。たとえば、仕事での慢性的なストレスがあるとき、休みを取ってどこか異国の地に行くなどだ。景色が変われば気分も変わるだろうと考えるのだ」
『トレーダーの生理学』(邦訳:早川書房)の著者ジョン・コーツはそう書いている。
「こうしたやり方は、正常な状態でならいいだろう。しかし、極度にストレスがかかった状態ではやめるべきだ。なぜなら、そのようなときに外国で遭遇する珍しい物事は、生理的負荷を増やすだけということもあるからだ。旅行する代わりに自宅で家族や友人に囲まれ、聴き慣れた音楽を聴き、昔の映画を見るほうがずっといいかもしれない」とコーツは主張する。
専門家によるどちらの意見に惹かれるかはさておき、その2つのあいだを取って「よく知っている場所に出かける」という方法は、誰も勧めていないようなので覚えておこう。周りの環境をがらりと変えて、いつもの生活から飛び出すか、自宅でしっかり充電するかのどちらかなのだ。

2. ひとつのことにすべてを求めない

期待が大きければ大きいほど、その期待に見合うのは難しくなる。つまり、休暇に望むすべてのこと──休養、冒険、人とのつながり、創造力を養う刺激など──をたった1回の旅行に求めるなら、がっかりすることになるのはほぼ間違いない。
科学的な分析では、1回の旅行ですべての要求を満たそうと期待するより、1年を通して何回か短い休みを取るほうがはるかに良いという。
「人は、非常に速く、以前の幸福レベルに戻るという調査結果が増えている。つまり、たまに経験する大きな喜びよりも、頻繁に経験する小さな喜びのほうが、総合的な幸福をもたらしてくれるのだ。また別の研究では、8日間ほどの休暇が心身の健康にもっとも効果があることがわかった。祝日のある週に前後の週末を合わせれば、3日か4日休みを取るだけで、8日間の休暇を年に何回か取って旅行することができる」
そう提案するのは、時間の使い方の専門家ローラ・ヴァンダーカムだ。

3. 十分に計画をたてよう

わかり切ったことなのに、繰り返しやってしまうことがある。乗り継ぎ時間はタイト、スケジュールは詰め込みすぎ、交通機関について把握しきれていないという状態では、どんな休暇でもたちまちストレスを感じるものになってしまう。
前もって慎重に計画を立て、自分がどこへどうやって行くのかをしっかりつかんでおこう。そうすれば、空港で全力疾走したり、外国で両腕を振り回してバスを止めたり、同行者と旅程について言い争うことで旅行前よりもっと疲れ果てる必要はなくなる。
また『ニューヨーク・タイムズ』紙は、前述のオランダの研究が「もっとも幸福感が高まるのは、休暇の計画を立てるという単純な作業をしているとき」という結果を示したと報じている。

4. 働かない!

働くのが好きな人には申し訳ないが、専門家はほぼ全員が同じことを言っている。休暇でのストレスを減らしたいなら、仕事は家に置いていきなさい、と。
「言うまでもないことかもしれないが、本当に休むためには、仕事をしないということが非常に重要だ」。幸福についての専門家で著書もあるクリスティン・カーターは、専門家の見解をまとめながらそう主張している。
最近の研究も「仕事をしないこと」が休暇をずっと思い出深いものにするという結果を示している。

5. 仕事再開のショックを最小限に

のどかな海辺で至福の時を過ごすのもいいが、そのあとに山のように積まれた仕事に戻っていくのなら、結局その旅行から精神的なメリットは得られないだろう。だから、オフィスに戻るショックをどうやって和らげるかについて、事前によく考えておこう。
自分が手に負える程度の仕事量で再スタートしよう。勇気がある人は、休暇中のメールは見ないで捨てるなどの過激な方法を取ることもできる。
こうした極端なやり方があなたの仕事環境では使えないとしても、帰宅して2、3日かけて徐々に日常に戻ることはできるだろう。仕事を再開して数日間は、軽めのスケジュールにして慣れていこう。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jessica Stillman/Contributor, Inc.com、翻訳:浅野美抄子/ガリレオ、写真:ivan101/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.