庭仕事のイライラ解消、ソーラー発電で雑草を取る「ターティル」

2017/7/13

初代ルンバ開発者の家庭用ロボット

ロボット関係者に話を聞くと、これからわれわれはひとつのことをやるロボットを複数所有するようになるようだ。
つまり、家の用事を何でもやってくれる万能なロボットは、ひょっとすると何十年先まで出てこないのではないか。それまでのあいだは、単一の機能を持つロボットを必要に合わせてあれこれといくつもそろえ、そのお世話になるということである。
ロボット開発の側から見ると、すでにそうした兆しがうかがえる。家の中では掃除をしてくれるロボットがすでに数種ある。床のチリを吸い取る、床を拭く、タイルを磨く、窓拭きをするといった家庭用ロボットだ。
そして、家の外では樋(とい)の掃除をする、プールのゴミを取る、庭に水やりをする、芝を刈る、落ち葉を集める、雪かきをする、犬のフンを取るなどのロボットがいる。家の周りだけで、もうこんなにいるのかと驚くばかりだ。
そこにもうひとつ加わるのが、雑草を除去するロボットである。現在、クラウドファンディングのキックスターターで資金を調達中で、すでに必要額は集めた模様だ。
このロボット「ターティル」は、お掃除ロボット「ルンバ」の庭版という感じで、デザインも丸型、走行の方法も似ている。何を隠そう、ターティルを開発しているのは、もともとルンバの開発者に初代から関わった一員である。

終わりなき「草むしり」という仕事

庭仕事のうち、雑草を抜く作業は本当に面倒臭いものだ。花が咲いていても、雑草が生えてくると雑音が混じるかのように美しさが半減する。
何よりもつらいのは、雑草抜きに終わりがないことである。抜いてきれいにしても、美しさはほんのつかの間。数日後には憎たらしい雑草がすぐ芽を出している。
ターティルがうまく考えられているのは、ソーラー発電で動くこと。したがって、外に出して放っておけば、ずっと動き続けて雑草を取り去り、電池がなくなると太陽の下でじっとして充電されるのを待つ。充電が完了すると、また動き出す。
こうして庭を断続的に見回ってくれるので、雑草が生えているのを知らなくても、どんどん除去し続けるのだ。
ただ、この基本はいいとしても「これは、実際に使ってみなければわからないなあ」と感じるポイントがいくつもある。
例えば、雑草の除去の仕方だ。本来、雑草は根こそぎ引き抜くのが理想だろう。だが、ターティルは地面すれすれのところでカットするだけだ。
下部につけられたナイフを回転させてカットするさまは、小型ロボットの割には容赦ない感じでパワフルだが、しばらくするとこの雑草はまた伸びてくるはずである。
ターティルはいつも巡回しているから、その辺りは任せておけばいいのだろうが、この方法が気になるのは私だけではないだろう。

ロボットの動きに合わせた庭づくり

また、雑草はこのロボットの下部の空間に収まるほどの高さでなければならない。雑草が高く伸びきっていると、ただぶつかって方向転換をするだけだ。
つまり、そうした育ちきった雑草は、あらかじめ人間が引いておく必要がある。草の上をロボットが走行できれば、ターティルはそれを雑草と認識してカットする。
逆に言えば、育てている草木の場合は、ロボットよりも高くなるようにする工夫が必要だ。ワイヤで囲いをするなどの方法があるだろう。
さらに、巡回する範囲を最初に特定しなければならず、さらに急な斜面やあまりのデコボコ地面には対応できない。砂利でできた枯山水のような庭にも適さない。
こうやって見ると条件がいろいろとあるように思うのだが、要は自分の庭がこのロボットに適しているか、それよりもロボットの働きに合わせて庭を調整することができるかの問題だろう。今や、人間もちょっとロボットに歩み寄る感性が必要になっているのだから。
庭を平らにし、草木はできるだけまとめて植えたほうが効率的だろう。ロボットが通れるように、花と花との間に十分な隙間も必要だ。ターティルは、一般的なアメリカの庭づくりの状況をよく調べていて、20センチほどの幅にデザインされている。
クラウドファンディングの資金集めから推察すると、製品化された暁にはターティルの価格は250〜300ドルのあたりを狙っているようだ。面倒くさい雑草抜きを担ってくれるのならば、安いお値段かもしれない。
*本連載は毎週木曜日に掲載予定です。
(文:瀧口範子)