IS支配のモスル解放宣言=イラク最大拠点、3年ぶり奪還-劣勢で報復テロ懸念
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モスルがIS(当時はISIS)の手に落ちたのは2014年6月9日。
当時のモスルは人口180万人のイラク第3の大都市でした。
当然イラク軍の守りも硬く、精鋭のイラク第五軍団の3個師団約3万人が守備しており、それがたった800人のISの手によって落ちたとの一報が入った時、それを信じる人は全くいなかった位です。(2日後に私も現地のジャーナリストのTwitterで知りましたが、この時点では日本の報道機関は勿論、海外でもほとんど報じておらず、半信半疑だったのをよく覚えています)
この時敗走した第五軍団は、アメリカ製の最新兵器を含め、膨大な量の武器弾薬をそっくりそのまま捨てて逃走した為、豊富な武器を手にしたISが一気に勢力を伸ばしたという背景があります。
ある意味ISの興隆の始まりの場所とも言えるモスルの陥落は、イスラム国の終わりの始まりを示しているのは間違いありませんが、今回のモスルの奪還にしても、包囲の輪が閉じたのは昨年の11月。
にも関わらず、約8000のISは10倍以上のイラク軍に対し、7ヶ月もの驚異的な包囲下での抗戦を続けてきた訳で、まだまだその戦意が落ちていないのがわかります。
従ってISの壊滅までにはまだそれなりの時間を要すると考えた方がいいでしょう。
又イラクについて言えば次の焦点は、9月25日に予定されているクルド自治区の独立を問う住民投票です。
特にクルドがイラク最大の油田都市であり、IS戦のどさくさ紛れにクルドが占領したキルクークをその範囲に含めるなら、ここまで対ISの一点で協力してきたイラク政府やイラン、それにシリア側クルド人地区と比較して比較的良好な関係にあるトルコとも決定的な対立に発展しかねません。
IS亡き後のイラクに平和が訪れるのか? あるいは次の戦争の幕が上がるかどうかは、すべてこの結果にかかっています。たしかに、通常の戦争における勝ち負けの定義に照らせば、モスルのISは敗戦状態だと言えるだろう。ただし、「陥落」したというのは、ISがゲリラ戦的な自爆テロ攻勢に戦術を変えから生じた状況に他ならない。ISは、モスルの領土を守るという方針を自ら放棄したのだ。そして、今後は神出鬼没な戦法に出るだろう。そもそも、領土さえ制圧すれば危機が無いのなら、ロンドンなんて大安全だということになる。
ISには「拡張」だけでなく「拡散」という手法で世に影響を与えようとする戦略があります。移民に紛れて他国に逃れ、そこで再集結されると非常に厄介です。フィリピンのミンダナオ島みたいな事例も出てくる可能性は大いにあると思います。