スターバックスから学ぶ“フォロワーシップ”が大事な理由

2017/7/5
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
今週のナビゲーターは、いつものサッシャさんに代わり、グローバーさんが担当します。
5日は、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科 特任教授の梅本龍夫さんが出演。「スタバでバイトは就活にメリット?」(読売新聞)を題材に、フォロワーシップの重要性について解説しました。

“スタバ日本進出”に対する反応

グローバー 今日は、「スタバでバイトは就活にメリット?」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の梅本龍夫さんです。
梅本さんは、NTTなどを経て経営コンサルタントとして独立。スターバックスコーヒージャパンの立ち上げ総責任者としても活躍されました。
経営戦略やマーケティングの専門家であり、現在は立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科の特任教授でいらっしゃいます。おはようございます。
梅本 おはようございます。
グローバー はじめに、ご自身が立ち上げたスターバックスコーヒージャパンですが、何年前に始まったんですか?
梅本 1994年にやろうという話になって、会社ができたのが翌年。そして、一店舗目の銀座店が96年ですので、21年前ですね。
グローバー 僕が大学に入る前だから、日本での知名度は全然ですよね。
梅本 全くなかったですね。さらに当時の苦労としては、スターバックスが知られていないだけじゃなく、「アメリカのコーヒー? まずいでしょ」という感じだったことです。
グローバー コーヒーはイタリアなどのイメージですよね。アメリカンコーヒーの薄口が好きだと言う人もいるけれど、二番手というか……。
梅本 アメリカ人自身が「茶色いお湯」といった感じで話していて、何で飲むのかと言えば、「それで目を覚ますため」というぐらいでした。
今では信じられないかもしれませんが、「アメリカのコーヒーなんて、日本に持ってきても成功しないでしょ」と思われていました。
ただ、実際にアメリカ・ロサンゼルスのお店を訪れると良い匂いがしました。それは、コーヒーの香りだけでなく「雰囲気の匂い」ですよね。
グローバー お店の空間が革新的でしたよね。
梅本 そうですね。そして、デザインも良かったんですけれど、パートナーと呼ばれる働くスタッフの雰囲気が非常に良かったんです。

スタバは接客のマニュアルがない

グローバー その「人」で言うと、今回ピックしていただいた記事「スタバでバイトは就活にメリット?」にも関連しますよね。
梅本 今の学生は当然色んなアルバイトをしているわけですけれど、この記事でスターバックスが人気ランキング1位に選ばれていたと紹介されていて、気になってピックしました。
グローバー スターバックスが1位の理由は何となく想像がつきますよね。オシャレだったり、カッコ良かったり、ブランドとしてのイメージがあります。
ところで、就活のメリットには、どうつながるんですか?
梅本 スターバックスで働いたことのある人は、ある段階からコミュニケーション能力が高まり、チームプレーができるようになるんですが、そこがすごく大事なんです。
社会人になると、お年寄りから若い人まで色んな人と付き合いますよね。そういう人たちの中で、いかに自分のポジションを築きながらちゃんと連携していけるかが、大切になります。
スターバックスにおいては、お店をしっかりと良い雰囲気で回していくうえで、まさにそこを中心に取り組んでいるんです。
グローバー その点に関しては、梅本さんが立ち上げたときから意識していたんですか?
梅本 全く意識していないですね。スターバックスというブランドは、コーヒーのつくり方などに関してはマニュアルがあります。
でも、接客に関するマニュアルはないんです。
寺岡 ええーっ、そうだったんですか。どこの店舗に行っても対応がいいイメージがありますけどね。
グローバー ニューヨークとかだと、名前を書いて呼んでくれるとかね。
寺岡 イラストを描いてくれることもありますよね。
グローバー 何かルールを決めているんだな、と思っていたんですけれど。
梅本 それは、自然発生的なんですよ。どういう風にするとお客さんに喜んでもらえるか、お互いに良いと思うかを、スタッフが情報交換をして真似し合うんです。
名前を書いたりイラストを描いたりすることも、スタッフがやり始めたことです。
毎日来てくれる馴染みのお客さんに対して「今日もお疲れ様」と書くと、相手も喜んでくれる。それが繰り返されて、徐々に広まっていったんです。
グローバー そうすると、これは昔の日本的な「言われたことをやる」以上の話ですよね。
梅本 そうですね。そのベースとしては価値観を共有しているところにあります。スターバックスは、ミッションステートメントと呼んでいますが、企業の理念とか行動規範などです。
「私たちは何のために仕事をしているのか」「どんな思いを持ってコーヒーを出しているのか」といったスターバックスらしさ、スターバックス体験を大事にしています。
それを具体的に表現するとしたら、どんな接客がいいのかをお互いに話し合ってトライしてきたので、マニュアルがないんです。
グローバー そうすると、スターバックスでアルバイトしていた学生は、社会人なってからも会社のキモの部分を把握して、そこから自分のアイデアを生み出せる人材である、というイメージにつながるんですね。

フォロワーシップの重要性

梅本 普通は、上司がリーダーとして存在していて、その人の言うことを聞くのが、伝統的な組織の基本です。ただ、スターバックスでは、みんなが共有しているビジョンが軸になるんです。
この軸の周りにリーダーもフォロワーもいる関係の中で、自分も働きます。だから、いい感じで対等な位置づけの中でチームプレーができるんです。
グローバー それによってスターバックスが大成功しているということは、今の時代が必要としていることなんだなと思います。
梅本さんが立教大学で教えていらっしゃる「社会デザイン」にも非常にリンクしますね。
梅本 そうですね。スターバックスの経営ってフォロワーシップなんですよ。リーダーシップも大事だけれど、フォロワーシップがもっと大事だと。
寺岡 下から上に、という感じなんですね。
グローバー 本屋に行くと、リーダーシップの本はたくさんありますよね。違うんですか。
梅本 リーダーシップの本は、「リーダーが優れていて成功すれば全部解決する」という姿勢なんですが、それはありえないですよね。誰がフォローするんですかという話になります。
グローバー 「船頭多くして船山に登る」となることもありますもんね。
梅本 それでも、「みんなリーダーになろう」というメッセージは強いですよね。
学生も「リーダーシップを発揮しよう」と教育されていますから、リーダーになれない場合、自己嫌悪したり、コンプレックスを持ったりすることもあるんです。
グローバー それで「負けだ」と思っちゃうと、自分の本領が発揮できないですよね。
梅本 実は、ナンバー2やサポート役で力を発揮できていた学生であっても、それに対する自己承認や自己肯定感が低いんです。
ところが、僕がフォロワーシップが大事だと話すと、「それでもよかったんだ」となり、とても元気になるんです。
また、僕の言い方で言うと、ある種のスペシャリストみたいな人も大事だと思います。例えば、普段は静かに黙っているんだけれど、話を振ってみると、すごくユニークな意見を言ってくれる人。
そんな人の意見が声の大きい人に消されたら、チーム力って発揮できないんですよ。
実際、働くときってリーダー一人に対して、他はほとんどフォロワーじゃないですか。その人たちが生き生きして一緒に連動できるかどうか。これは社会そのものですよね。
グローバー この考え方は、企業側のヒントにもなるでしょうね。
梅本 そうですね。社会が変わる中で、企業もCSR活動のほかNPOなどと連動する必要があります。
そのときには、上から下に命令すればみんないうことを聞いてくれる、とはならないですし、通用しません。
緩やかな横のネットワークで、お互いにコラボレーションしていく。そこでミッションを共有して「これが大事だよね」と言いながらお互いにフォローする。これができるかどうか、企業も問われていると思います。
グローバー 企業も、こういうメッセージを就活生に対して発信するようになって、自分に自信を持って世の中に出て行ける学生が増えて行くといいんでしょうね。
梅本 そうあってほしいですね。
グローバー 梅本さん、ありがとうございました。
梅本 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした梅本さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
6日はスリーエムジャパン副社長の昆政彦さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください