上司は「小さな褒めと小さな叱り」で部下に向き合うことが重要だ

2017/7/4
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
今週のナビゲーターは、いつものサッシャさんに代わり、グローバーさんが担当します。
4日は、産業医の大室正志さんが出演。「『ボク褒められて伸びるタイプなんです』の叱り方」(読売新聞)を題材に、現代の上司と部下の関係について解説しました。
上司・部下関係でメンタル不調に
グローバー 今日は、「『ボク褒められて伸びるタイプなんです』の叱り方」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の大室正志さんです。
大室さんは現在、産業医としてベンチャーから大手企業まで、約30社を担当されています。おはようございます。
大室 おはようございます。
グローバー こちらのニュースをピックされた理由はなんですか?
大室 産業医の仕事をしていると、約半数がメンタル不調の相談なんです。そして、その8割くらいが上司・部下関係によるものなんですよね。
上司と部下のコミュニケーションは、世の東西、時代を問わず重要なテーマであるとともに、最近よく聞くこともありピックしてみました。
グローバー 昔からなんでしょうけれど、年上の人は「今の若者は!」となり、若い人は「もう古いんだよ!」となりますしね。
ただ、上司と部下は関係がはっきりしています。それでも、すんなり行かないものなんですか?
大室 そうですね。もともと日本やアジアは、基本的に上司や親といった年上の存在が「褒めない」という特徴があるんです。これはデータでもはっきりしているんですけれど。
グローバー 育て方として褒めない。叱ることが大事なんだと。
褒め言葉としごき言葉のインフレ
大室 例えば、昭和のスポ根ドラマやアニメに出てくる監督などは、選手が上手くやっても「まあまあだな」なんてよく言いますよね。
「まあまあ」が褒めていることだ、というのは日本的でアジア的です。儒教的と言ってもいいかもしれません。
その一方で、外国人は「Great!」と、普通のときであってもよく使います。
グローバー 口癖のように使いますよね。
大室 欧米圏の場合は、「褒め言葉のインフレ」が起きているんです。
反対に、日本の場合はネガティブというか、「しごき言葉のインフレ」が起きていて、「死ぬ気で働け!」とか言うわけです。
グローバー それが、欧米、特にアメリカの考え方が日本に入ってくるに従い、世代によって合わなくなってきたと。
大室 今の上司世代は、若い頃に「まあまあだな」と言ってくるような上司に育てられてきました。
一方で、10年くらい前から「部下は褒めなきゃいけない」というメソッドやコーチングみたいなスキルが求められるようになってきました。
グローバー 海外のケースを翻訳した本や記事がたくさんありますよね。それを参考にすると変わってくるんでしょうね。
大室 最近すごく多いですよね。それで変わってきてはいるんですけれど、人間は頭で理解して腹落ちするまでに時間がかかります。
グローバー 腹落ちのためには、やっぱり体験ですよね。
大室 そうですね。テニスの教科書を読んで、すぐにテニスができるわけではないので。
今、そこにおいて文明の衝突というか、カルチャーがぶつかり合うときの難しさみたいなことが起きているんじゃないかな、と思います。
言葉の再構築が必要
寺岡 では、部下の立場でキツイことを言われて悩んでいる方もいると思うんですが、上司の立場としては「どう言ったらいいか分からない」という悩みも多いんですか?
大室 そうですね。もともと日本の会社において、上司が部下のコミュニケーションで悩む姿ってほとんどなかったんです。
そもそも、部下に人権があんまりなかったんですよ。「四の五の言わずにやれ!」と。
寺岡 なるほど(笑)。
大室 だから、昔は部下とのコミュニケーションで悩むというのは、上司っぽくなかったし、「ノーケア」で良かった。部下もまた、上司の顔色だけを見ておけば良かったんです。
でも、最近はチーム全体の最大化を考えたときに「四の五の言わずにやれ!」と言ったら、チームの力は落ちるんです。
グローバー では、どんな場合にうまくいくんでしょうか? そういえば、体育会系の部活などを経験していると、社会人をやりやすいと聞きますけれど。
大室 例えば、中学校の部活で、先輩から「カレーパンを買ってこい」と、よくわからないままに命令された経験があると、そういうコミュニケーションに慣れるところがありますね。
ただ、最近だとダイバーシティと言われるようになり、外国人や女性の社員もたくさん入ってきます。
すると、体育会系の言葉だけでやっていたら、なかなかうまくいかないですよね。「死ぬ気でやれ!」と言われても、本当にビビってしまう人も出てきますから。
だから、もう少しみんなに伝わる言葉を再構築しなければいけない時期に来ていると思うんです。
やっぱり、体育会系の文化って楽なんですよ。でも、文化ってハイコンテクストなので、文脈を共有している人同士に限り、あうんの呼吸でうまくいく。
ダチョウ倶楽部が「押すなよ!」と言うのは「押せ!」という意味じゃないですか。
“マジックワード”はない
グローバー そうなりますよね。すると解決策としては、今までビジネスの中では使われていなかったような叱り方をすることなんですかね。どんな言葉がいいんでしょうか。
僕も褒められて伸びるタイプなんです。末っ子だから。
寺岡 私も末っ子なので、褒められたい(笑)。
大室 やはり言葉は文脈なので、その人のポジションに合わせる。新入社員であれば、仕事がまだ何もできないわけです。自動車教習所の初日みたいなものです。
そこで褒めるところがないのに、いたずらに褒めると根拠のない自信を持ってしまいます。最近、それはあまりよろしくないとされています。
ただ、昔の上司のように新卒が入ってきたら「とにかく一発シメなきゃ」というのも良くない。
そのため、一つひとつの仕事によって是々非々で対応する。つまり、大きく褒めるとか大きくシメるのではなく「小さな褒めと小さな叱り」を適切にチューニングすることが今風だなと思います。
グローバー そのうえで、それぞれキャラクターがありますから、最後は個々人によって対応するんですね。
大室 何か大きな一発で変わるようなマジックワードはなくて、やっぱり日々のコミュニケーションのチューニングだと思います。
グローバー 叱り方のマニュアルをアップデートすることには意味がなくて、上司であろうと部下であろうと、相手のことをしっかり見ることに尽きるんですね。大室さん、ありがとうございました。
大室 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした大室さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
5日は立教大学大学院特任教授の梅本龍夫さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください