米国の2つの企業が、科学実験向けの成層圏気球ミッションの費用を引き下げようとしている。大きさ、積載量、浮揚時間でNASAの気球にはかなわないが、絶対的な価格の安さには、多くのメリットがある。
実験装置を成層圏に浮揚させる
スペースX(SpaceX)とブルーオリジン(Blue Origin)のような企業が、再利用可能なロケットを使って宇宙旅行の費用を引き下げようとしている。しかし、そこまでの高度を必要としない科学者のために、多用途の成層圏気球ミッションの費用を引き下げようとしている2つの企業がある。
サイエンス(Science)誌のレポートによると、アリゾナ州ツーソンのワールド・ビュー・エンタープライズ(World View Enterprises)とサウスダコタ州スーフォールズのレイブン・エアロスター(Raven Aerostar)の2社は、科学者の実験装置を大気圏内32キロメートルの高度まで浮揚させるサービスを提供しようと計画中だ。
米国航空宇宙局(NASA)はすでに気球を成層圏に飛ばしており、第三者の実験装置も料金を取って運ぼうとしている。しかし、NASAのサービスはロケット打ち上げと同じように、相当なリードタイムを必要とするはずだ。
ワールド・ビューとレイブン・エアロスターは、この状況を変えようともくろんでいる。両社は、スペースXがNASAより速いターンアラウンドでのロケット打ち上げを約束しているのと同様に、NASAより短いリードタイムで気球を上げるつもりだ。
さらにワールドビューは、気球ミッションにかかる費用がより少なくて済むと主張している。具体的には、NASAの200万〜300万ドルに対して、数十万ドルだ。
NASAの費用が高い主な理由は、気球の体積が50万立方メートルと大きいからだ。NASAの気球は、3600キログラムまでの荷物を積載して、50日間浮揚し続けることができる。
一方、ワールド・ビューの使用する気球は今のところ、体積が2万2000立方メートルで、50キログラムまでしか積載できない。しかも、1回の飛行時間は12時間以内だ。
すなわち、荷物の運搬にかかる料金のキログラム単価はNASAの方が安いことになる。ワールド・ビューの小型気球は、少なくとも数日間のミッション飛行(ワールド・ビューが今週初めて実施しようとしている)ができるようになるまでは、限定的な用途でしか使えないかもしれない。
風の状況を分析し、定点に留める
しかし、絶対的な価格が安いことには、多くのメリットがある。科学者が装置を搭載した気球を飛ばそうとするとき、気球をまったく同じように飛ばしたいと考える相乗り仲間を探すことは必ずしも容易でない。
しかも、ワールド・ビューとレイブン・エアロスターは、NASAとは異なり、風の状況を分析し、適正な流れに乗るように気球を上下させて、ある程度定点に留められる。
ワールド・ビューとレイブン・エアロスター以外にも、成層圏に装置を浮揚させようとしている企業がある。グーグルおよびグループ企業の持ち株会社であるアルファベット(Alphabet )はこの数年間、気球を用いたインターネット接続サービスの実現を目指すプロジェクト・ルーン(Project Loon)の実験をしている。
サイエンス誌によると、少数の他のスタートアップ企業もこの構想に挑戦している。もっとも、これらの企業は、ワールド・ビューやレイブン・エアロスターと異なり、静止位置を決めるとは言っていない。ともあれ、誰が上げるにせよ、成層圏気球は確実に上昇軌道にあると言えそうだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:ジェイミー コンドリフ/米国版 ニュース・解説担当副編集長、写真:Boyloso/iStock、Image courtesy of World View Enterprises)
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