解体される外食産業、テクノロジーが拓く飲食店の未来

2017/6/26
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
26日は、トレタ代表の中村仁さんが出演。「飲食店のあらゆる業務がロボットで代替可能になったとき人は何を求めるのか」(AMP[アンプ])を題材に、飲食店の未来について解説しました。

外食は他領域にも進出できる

サッシャ 今日は、「飲食店のあらゆる業務がロボットで代替可能になったとき人は何を求めるのか」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の中村仁さんです。中村さんは電器メーカー、広告代理店を経て、2000年に飲食店を開店。とんかつのお店「豚組」のオーナーであり、飲食店向けの予約管理サービスを運営する「トレタ」の代表でいらっしゃいます。
中村 おはようございます。よろしくお願いします。
サッシャ まずはこの、飲食店がロボットに変わっちゃうということですが、このニュースをピックした理由を教えていただけますか?
中村 今、飲食店周りの色々なニュースがあるなかで、バラバラに見えているものも実は同じ流れにあるんだよと、皆さんにご説明するのに一番わかりやすい記事かな、ということで今回ピックアップしました。
サッシャ 具体的にどんなことが取り上げられているんでしょう?
中村 この記事は「『人間がコーヒーを淹れずにロボットがバリスタとなってコーヒーを淹れる』というものが出てきました」という話です。
ここから色々なことが見えてくるかなと思っています。ひとことで言うと、「外食の解体」です。
サッシャ 解体ですか?
中村 アンバウンドリングみたいなことが起きている、象徴的な話だと思っています。
飲食店は大きく3つで構成されています。1つが「料理」。2つ目が「場」。3つ目が「人」なんですね。これら3つが一緒くたになって提供されていたのが、これまでの飲食店なんです。
それが色々なテクノロジーが発達してくるなかで、3つの要素それぞれに対して置き換わるサービスが出てきている。そのうち、わかりやすいのが「ロボットが料理をする」ことなんですよね。
サッシャ 人が調理しなくても済むようになっちゃう。
中村 そうです。
サッシャ 飲食業界のど真ん中にいる中村さん。これ、どういう風に感じてらっしゃいますか? 現状も含めて。
中村 これを「外食が解体されてバラバラにされていく」と取るのか、それとも「外食がどんどん色々な領域に進出していく」ことなのか。これは見方によって違うと思います。

変わる「料理」「場」「人」

サッシャ 解体されていくという見方でいうと?
中村 例えば、料理でいうと、最近よく耳にするニュースにデリバリーがありますよね。
あれは「お店に行かなくても料理をデリバリーで食べられるね」っていう流れじゃないですか。あるいは、最近、コンビニでも焼き鳥とかが食べられる。
もしかしたら美味しくない居酒屋よりは、コンビニの焼き鳥の方が美味しいかもしれない。そうすると、美味しい料理はお店じゃなくても「コンビニで良くない?」っていう世界がある。
もっとわかりやすいところでいうと、今はシェフの派遣ってあるんですよ。自分の家や指定した場所にシェフを派遣してくれて料理してくれて「お店に行かなくても美味しいものが食べられる」となってきているんですね。
それで二つ目の「場」のところ。場とか雰囲気。
今まではお店って独特の雰囲気があって「その雰囲気を味わいたくて行く」ところがあったと思うんです。これも、ご存知だと思うんですがエアビーアンドビーとか、日本でいうとその流れを汲んでスペースマーケットという、場所を借りられるサービスが出てきています。
そうすると「お店に行かなくても素敵な場所があるじゃない」となるわけです。
この前、ある知り合いと話をしていて、面白いことを言っていたんです。その人は、合コンをする時に「もう今は合コンでお店を使わない」と。
お店を使うと、すぐにそのお店を口コミサイトで検索されて、そのお店の点数がわかっちゃう。「なに!私たちは3.0の価値?!」みたいな(笑)。
サッシャ なるほど!その合コン相手がね。
中村 そうです(笑)。そうなるくらいだったら、マイシェフとかシェフを派遣するサービスで、腕の良いイタリアンのシェフとか呼んで、場所はスペースマーケットなどで、東京タワーの見えるお洒落なタワーマンションの1室を手配して、そこで合コンをやると一番ウケるっていうんですね。
寺岡 すごいですね(笑)。
サッシャ それは男性側の、女性に対するもてなしの精神ですね。
中村 そうすると、お店に行かなくてもそういう体験ができちゃう。だったら「外食って何のために(お店に)来てもらうんだっけ?」と問われるわけですよね。

おもてなしか、機械化か

サッシャ では、これからは外食じゃないところでも外食のノウハウが活きてくるってことですか?
中村 そうです。なので、外食産業は、攻め込まれているのと同時に、料理の技術が元々ある人たちが外に出て行って自分たちの領域を広げることも可能にしていると思っています。ある種のビジネスチャンスでもあります。
そして3つ目、「人」の問題です。
まさにこれがさっきのロボットと似た話ではあるんですけれど、料理以外でも機械の方が得意な仕事ってお店にいっぱいありますよね。
例えば伝票を整理するとか、お客さんのことを覚えるとかは、絶対人間より機械が得意なわけですよ。なので、こういうのをどんどん機械にやらせちゃいましょう、と。
それで、何が起きるかというと、例えばマクドナルドです。
アメリカのマクドナルドは、年末まで約2500店舗にオーダーの端末を置いてセルフオーダーできるとしました。そうしたら、マクドナルドの株価が過去最高になった、というニュースがつい数日前に出ていたんですよね。
そうするとお店はどんどん無人化の方にいくという話があるわけですよね。
サッシャ レジ係がいらなくなるわけですからね。
中村 そうです。ファストフードみたいなカジュアル店はそういう方向に行くんですけど、一方で僕がこれから一番面白いと思っているのが、いわゆるフルサービス型と言われているお店です。ちゃんとおもてなしをしてくれるお店ですね。
ああいうところは絶対に無人にならない。あそこでロボットが接客したら味気ないじゃないですか。
サッシャ そうですね(笑)。結構な金額を払っているのにな、というのはありますね。
中村 なので、ここはいかに逆に「付加価値をつけることができるか」。そこをどんどん強化する流れもあります。
飲食業界はブラック化や生産性の低さがよく指摘されるじゃないですか。そのニュースは実はここに繋がってくるんですよね。
今起きているのは単なる無人化ではなくて「機械と人間の役割分担を見直しましょう、今まで人間はほとんどの仕事をしていたけれども、これからはもっと機械の得意なことをやらせて、人間は人間の得意なことに専念しましょう」っていうのが起きています。
サッシャ 豚組さん、僕もよく利用させていただいていますけれど、確かに人がちゃんと料理を作って接客しているけれど、例えば、タブレットみたいな端末もいち早く導入して注文のオーダを受けるとか、その辺の役割分担はずいぶん昔からやっていますね。
中村 やっていますね。まだまだ過渡期ですね。
サッシャ まだ過渡期ですか?

経営哲学が店をつくる

中村 はい。多分、お店によってどこを機械にしてどこを人間がやるのかは、これから全部お店によって変わってくると思うんです。それがお店の個性になる。
サッシャ そうか。それが業態とか、価格帯とか。
中村 そうです、経営者の哲学とか、に関わってくるんですね。
経営者の方も、今までだと「機械は苦手」と逃げていたんですけれど、そろそろ逃げきれなくなってきてるので、もうちょとその辺を意識して取り組むと、面白いお店づくりができるようになるんじゃないか。こうしたことが大きな流れになって、今起きています。
サッシャ じゃあ、コンピューターも含めての機械的なコンサルティング業的なものが飲食店にはもっと求められてくる可能性も出てくるってことですかね?
中村 あると思いますね。その辺は業界にもまだまだ知識や知見が集まっていないので、ニーズはすごくあると思います。
サッシャ なんか、今後はお店の選び方が変わってきそうですね。
中村 そうですね。例えばファストフードなんて突き詰めると、自動販売機になるわけですよ。
寺岡 そうか。オーダーしてお金を出して、モノを受け取るだけっていう。
中村 そう。安く美味しいものが食べられる究極の姿は、多分そういう形なんですよ。それがいいっていう人もいるでしょうし、「全部アナログでやってくれるのがいいんだ、ただしお金かかりますよ」っていうのもあるでしょう。
そこらへんはライフスタイルとか価値観でみなさん選ぶんでしょうね。
サッシャ 中村さん、次は何を仕掛けるんですか?
中村 僕は今、機械でお店をいかにハッピーにするかを、トレタってサービスでやっています。
サッシャ なるほど。新しい店舗を出店するのではなく、現在のお店でですか?
中村 どっちかっていうと自分のお店をやるよりお店を応援する側に回りたい。
サッシャ なるほど、もっと魅力的な店になるように支援をすると。また、新しい話題がありましたら是非お越しください。ありがとうございました。
中村 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした中村さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
27日は、忠北大学天文宇宙科学科 助教授の早崎公威さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください