プレミアムフライデー推進のために必要な“意識変革”

2017/6/21
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
21日は、ヤッホーブルーイング代表の井手直行さんが出演。「プレミアムフライデーは何がいけなかったのか」(ITmedia)を題材に、その推進に必要な意識のあり方について解説しました。

盛り上がりに欠ける現状

サッシャ 今日は、「プレミアムフライデーは何がいけなかったのか」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の井手直行さんです。
井手さんは、高専を卒業後、大手電機メーカーや広告代理店などを経て、クラフトビールの製造メーカー・ヤッホーブルーイングに営業責任者として入社。
その後、ネット販売担当として事業を推進し、看板ビール「よなよなエール」を武器に業績をV字回復させ、業界最大手に躍進させました。
現在は、同社の代表を務めていらっしゃいます。おはようございます。
井手 おはようございます。
サッシャ まずは、よなよなエールのご紹介から(笑)。
井手 いわゆるクラフトビールなんですけれども、すごくコクがあって、柑橘系の果物を思わせるようなホップの香りに特徴があります。
目をつぶって飲んでも、「これは大手のビールとは違う」と分かるくらいの個性があります。
寺岡 私もすごく好きです。飲みやすいんですよ。
井手 本当ですか、うれしい。ありがとうございます。
サッシャ 女性の人気も高いんですね。
さて今回選んでいただいた記事は、「プレミアムフライデーは何がいけなかったのか」です。
井手 この記事自体は、「プレミアムフライデーは盛り上がっていないよね」「そもそも無理があったんじゃないか」というものでした。実際に「盛り上がっていないな」と思っちゃいますね。
サッシャ ちなみに、御社ではどうなんですか?
井手 うちはプレミアムフライデー以前に、好きなときに勝手に帰る、という社風なんです。
サッシャ ええっ。
井手 僕のアシスタントの子は、「野球があるので」と、お昼に早退して野球を見に行きました。そんな感じなので関係ないですね。
サッシャ 仕事をしていれば、OKと。
井手 そうですね。ちゃんと仕事をしていれば。

定時退社を推進する活動

サッシャ 世の中的には、何で盛り上がっていないんでしょうね?
井手 皆さんの声を聞いていると、「会社がそんな雰囲気じゃない」「仕事の量が多い」とか、色々しがらみがあると思います。
そのため、「無理だ」と批判する方が多いんですけれども、考え自体はとてもいいじゃないですか。早く帰って、余暇を楽しく過ごすわけですから。
そこで、「僕らのクラフトビールを飲んで人生を楽しもうよ」と言いたくて、われわれとしてもユーモアのある活動をしているんです。
サッシャ 「定時退社協会」という団体の理事長もやられているんですよね。
井手 はい。先月、定時退社協会というサイトを立ち上げました。これも、早く帰って、おいしいクラフトビールを飲んで幸せになることを応援するHPなんです。
実際の活動も、「プレミアムフライデーがどうだ、こうだ」ではなく、プレミアムフライデーに関係なく、「早く帰ってビールを飲もうよ」と、クラフトメーカーだからこそ言える角度で、発信している感じです。
サッシャ PR動画も面白かったですね。
寺岡 定時退社訓練という動画も見ました。
サッシャ 時間以内にメールを打てないと「残業です」って言われるんですよね(笑)。
井手 うちのファンである、日本を代表する大企業の方々に「動画をつくるから協力してくれない?」とお願いして、集まっていただきました。実際にパソコンを並べてバーッと取り組んでもらったんです。
サッシャ 大手企業の社員さんなんですか。
井手 そうですね。本当に忙しい方に集まってもらって、「訓練」をしてもらいました。
僕たちのユーモアをご理解いただいたうえで動画をつくり、「これで早く帰れるようになりました」「明日から早く帰れる気がします」と言っていただけました(笑)。
サッシャ なるほど。その論点で言うと、御社はいつも残業なし、なんですか?
井手 いえ、残業はあります。メリハリがある感じですかね。
忙しいときは残業もするんですけれど、帰れないという雰囲気は全くなくて、帰れるときはどんどん早く帰る社風です。

トップの意識が重要

サッシャ みんな井手さんみたいな会社になるためには、何が必要なんですかね? プレミアムフライデーすら盛り上がっていないわけですけれど。
井手 日本の企業って、本当に皆さん頑張っていらっしゃるんですけれど、「意識」じゃないですかね。
サッシャ 井手さんは、意識をどうやって変えたんですか?
井手 自分たちが楽しくないと、仕事は頑張れません。
僕たちはビールを届けているメーカーなので、ファンの方に「飲んでください」と言うときも、楽しそうにしていないと嗜好品のよさは伝わりません。
自分たちも早く帰って余暇にビールを飲む、だからファンにも「これが楽しいからやろうよ」と言う。自分たちが率先してやらなければダメだな、という意識でやっています。
サッシャ 会社内の意識改革はどうやったんですか? 自分から先に帰ったとか?
井手 これも自分が率先しましたね。先に帰ったり、会社に来なかったり。その結果、休みについては、全員が有給を普通に取得しています。
寺岡 いいなあ、こんな社長(笑)。
サッシャ それは社内にアナウンスするんですか?
井手 最初のころは、「みんな早く帰って仕事もプライベートも楽しもうよ。そうしないと長く働けないじゃない」と伝えました。
人生何十年もあるのに、あくせく働いてもしょうがないので「仕事も楽しく、プライベートも楽しく」ということは、ずっと言っていました。
今は言っていないですね。それが当たり前になったので。
サッシャ このお話を聞いている経営者や社員の中には「うちもそうなりたい」と感じる方もいると思うので、何かヒントをと思ったんですけれど。
井手 その点で言うと、みなさんの意識もそうですが、やっぱりトップの意識が大事ですよね。
みんな僕みたいだったら、楽しい世の中になると思いますよ。毎日早く帰って、ビールを飲んで、幸せ、ですから。
サッシャ 人に楽しみを与えるお仕事をしているからこそ、ということですよね。
井手 そうですね。定時退社協会や動画をつくったことで「クレームもあるかな」と思ったんですけれど、全くなかったんです。
みなさんに活動を理解していただき、応援の声ばかりでした。ウェブ上のコメントだけでなく、はがきで感想もいただきました。
そういうのがいいなと思うんです。「批判するよりも、ユーモアを交えて楽しくやろうよ」と。
サッシャ 今月のプレミアムフライデーは、どれだけの人が早く帰れるのかなあ。盛り上がりを知りたいですよね。
井手 そうですね。できれば、そのときによなよなエールを飲んでもらうと、もっとうれしいです(笑)。
サッシャ 夜な夜な語り合いながら、ですね。井手さん、どうもありがとうございました。
井手 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした井手さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
22日は日本総合研究所 上席主任研究員の枩村秀樹さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください