「核のごみ」と科学的特性マップを考える

2017/7/20
原子力発電によって発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分の方法として国際的なコンセンサスとなっている地層処分。7月下旬、日本の地下環境等の科学的特性を示す全国地図「科学的特性マップ」が提示される。地層処分について正しい理解を促し、冷静な議論の起点をつくることを目指して、竹内純子氏、吉田英一氏、増田寛也氏(登場順)から意見を聞く。(注:7月28日、科学的特性マップが発表されました。このインタビューは発表前に実施しています)
竹内純子(たけうち・すみこ)NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員、21世紀政策研究所「原子力損害賠償・事業体制検討委員会」副主査。慶應義塾大学法学部法律学科卒業、1994年東京電力入社、2012年より現職。国立公園尾瀬の自然保護に10年以上携わり、農林水産省生物多様性戦略検討会委員や21世紀東通村環境デザイン検討委員等歴任。その後、地球温暖化国際交渉や環境・エネルギー政策に関与し、国連気候変動枠組条約交渉にも参加。著書に、『誤解だらけの電力問題』『原発は“安全”か たった一人の福島事故報告書』などがある。

──高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題は、原子力政策・エネルギー政策全体の中で、 どのように捉えられるでしょうか。
竹内 私たちが好むと好まざるとにかかわらず、これまで原子力発電を使ってきた以上、どの国も避けて通ることができない問題です。
しかしながらエネルギーが今この瞬間も必要なのに対して、「ごみ」の処分についてはいま解決しなくても困るというものでもありません。そのため長く先送りされてきました。でも「ごみ」があること自体は皆さんに認識されていますので、この問題から逃げずに取り組むことが、原子力全体に対する信頼回復にも重要です。
「科学的特性マップ」の提示は、これまでの先送りを政府が反省し、自ら行動する姿勢に転じたということだと思います。
高レベル放射性廃棄物は地下深くに処分するというのが政府方針ですが、その方法に不安の声もあります。科学的・客観的な情報をもとに、冷静に議論を進めることが大切であり、その一歩としてマップの提示は評価できると思います。
先進事例はスウェーデン、フィンランド
──海外では、どのように取り組んでいるのでしょうか。
竹内 長年の研究や検討を経て、地層処分がいま考えられるベストであろうということは、国際的にもコンセンサスが取れています。
しかし「最終処分地をどこにするか」では各国とも試行錯誤しながら検討を重ね、少しずつ前進している状態です。
進んでいる事例としてはスウェーデンとフィンランドが挙げられるでしょう。スウェーデンでは8つの自治体が調査の受け入れに応じ、2つの自治体の間で誘致競争をした結果、候補地がエストハンマル市のフォルスマルクに絞られました。
以前、エストハンマル市長が来日されたときのお話によれば、最終処分地を受け入れることによってハイテク技術や研究者が集まり良質な雇用がもたらされるといったメリットと、事故が起きる可能性などのリスクを総合的に考慮した結果、メリットが勝ると判断し、積極的な誘致活動を行ったとのことです。
そうした結論になったのは、まずプロセスが透明であること、そして処分の実施主体が対話活動を丁寧に行ったことが大きく作用しているのだろうと思います。
安全性に関してエビデンスに基づく説明があり、自分たちで判断するというプロセスの透明性が確保されていた結果、自らの発展のための起爆剤として受け入れる自治体が現れたということでしょう。
──リスクとメリットの両方を吟味したということですが、今の日本ではなかなか難しい気がします。
竹内 福島第一原発事故の被害を目の当たりにすれば、致し方ないことだと思います。それに今まで、特に原子力に関してはリスクをきちんと伝えてこなかったのは事実だと思います。政府も事業者もその点は猛省する必要があるでしょう。
ただ、国民もどんなものであってもゼロリスクはないということは受け入れ、どこまでのリスクなら許容できるのか、という視点で考えるべきだと思います。ゼロリスクを求めるのは無いものねだりです。
──うまく進んでいない国もありますか。
竹内 ドイツでは、この問題が原子力発電の政策に左右されてきたところがあります。最終処分候補地とされてきたゴアレーベンは、いったん白紙に戻すことになりました。
イギリスでは、カンブリア州西部の自治体が候補地に挙がっていましたが、こちらも調査段階で次のステップに進まないことが議会による投票で決まり、選定プロセスそのものが見直されることになりました。
しかしながら、両国とも地層処分を行うという方針は変わっていません。どの国も地点を決めるという政治的な難題で行きつ戻りつしてはいますが、方針を変えたという事例はありません。
──「核のごみ」の処分について、日本の状況を整理したいです。
竹内 まず、ウラン燃料の有効活用や廃棄物の減容化などを目的として、一度使った核燃料をリサイクルする方針を採っています。使用済燃料をそのまま埋めるわけではなく、再処理して、まだ燃料として使えるウランやプルトニウムを取り出すのです。
取り出した後に残った廃液を、ガラス原料と高温で融かし合わせ、容器に入れて冷やし固めた「ガラス固化体」は高レベル放射性廃棄物として処分しなければなりません。
これまでイギリスやフランスに使用済燃料を送って、再処理を行ってもらっていましたが、今後は青森県六ケ所村にある施設で再処理を行おうとしています。この施設は、現在竣工に向けた最終的なチェックの段階にあります。
そして、ガラス固化体については、日本のどこかの地点で、地下300mより深い安定した岩盤の中に埋めることになっていますが、場所の選定はまだこれからという状況です。
竹内 処分の候補地を見つけるにあたってまず調査をしなければなりません。
調査は、まず文献や資料に基づいて、処分場として適切かどうかを調べる「文献調査」、次にボーリング調査、地表踏査、物理探査など地上から調べる「概要調査」、最後にトンネルを掘って処分場としての性能や安全性を総合的に評価する「精密調査」の3段階です。
現状では「文献調査」を受けてもらう自治体を公募している段階ですが、手を挙げる自治体は現れていません。
そこでまず、国民や地域の方々に地層処分に関する理解と関心を深めてもらうために、地下環境等の科学的特性を示す全国地図である「科学的特性マップ」が公表されることになっています。(注:下の吉田氏のパートで詳述)
放射性廃棄物はすでに生まれている
──竹内さんから見て、この問題についての関心はまだ低いと感じますか。科学的特性マップの提示は、どのようなインパクトを与えそうでしょうか。
竹内 そもそもこの問題を知らない方も多いでしょうし、関心はあっても「日本は地震があるから地層処分はダメでしょう」と議論の入り口で耳を閉ざしてしまっている人も多いのではないでしょうか。
マップが提示されたからといって議論が急に進むというものでもないでしょう。とはいえ、科学的な情報に触れることで、この問題を真剣に考える機運はできると思います。
原子力発電への依存度など、原子力政策が仮に変わろうとも、すでに高レベル放射性廃棄物は生まれ、貯まっているという現実とは向き合わねばなりません。マップの提示を契機に、問題解決に向けた議論をスタートさせること自体が重要だと思っています。
吉田英一(よしだ・ひでかず)名古屋大学教授(環境地質学)同大学院環境学研究科教授兼任。1986年名古屋大学大学院理学研究科博士課程(前期課程)地球科学専攻修了、核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)主任研究員を経て、2000年名古屋大学・博物館 助教授(同大学院理学研究科兼任)、2009年同資料基盤研究系教授(同大学院環境学研究科兼任)、同博物館館長(2010~14年)。2013年より総合資源エネルギー調査会 地層処分技術ワーキンググループ 委員を務める。
──高レベル放射性廃棄物の処分方法として、なぜ地層処分が選ばれたのでしょうか。
吉田 高レベル放射性廃棄物は、長期間にわたって人間の生活環境から隔離する必要があります。1960年代から各国で、南極の氷の中などに埋める氷床処分、深海底下堆積物中に埋める海洋底処分、ロケットに積んで宇宙に輸送する宇宙処分などの方法が議論されてきました。
宇宙処分は、万一の場合に大気圏汚染のリスクを伴い、コストも甚大になる。それ以外についても、「発生した放射性廃棄物は、自国内で処分するのが筋だ」という合意や国際条約の締結などにより選択肢から外れるものが出てきました。
そうした過程を経て、現在では地下深くの安定した岩盤の中に埋設する「地層処分」が国際的なコンセンサスを得ています。地下深くは、国によらず基本的に安定していて、長期にわたる隔離が可能というわけです。
20億年前の「天然の原子炉」から学んだ手法
吉田 「臭いものにフタをする的な手法では」といった批判もありますが、実はこれは、自然から学んだ方法なのです。
1970年代、アフリカ・ガボン共和国で「オクロ天然原子炉」という地球科学的現象が発見されました。地下400mくらいの場所のウラン鉱から、自然の状態の劣化ウランや核分裂生成物が見つかったのです。ここでは約20億年前に自然の中で核分裂反応が連続的に起きていたことが分かったのです。
「天然原子炉」が成立する条件のひとつは、ウラン235の割合が原発の燃料である低濃縮ウランと同じくらい高く、そこに中性子が当たることです。現在の岩石の中に含まれているウラン235の割合は0.7%ですが、ウランは7億年で半減します。約20億年以上前に遡ると、約5%のウラン235が濃集していたことになり、つじつまが合います。
つまり「オクロ天然原子炉」 は、天然のウランだけでなく核分裂反応で生じた放射性物質が、地層の中に閉じ込められ、約20億年間保存されていた証拠なのです。こうした自然現象から、地層処分というアイデアが有力視されるようになりました。
地層処分では数万年以上の安全が議論されますが、オクロの事例は、20億年前に起きたことです。数万年程度の時間は地質学的には一瞬のことだとも言えます。
日本にも「適した地層」はある
──20億年前の地層が存在するアフリカ大陸とは環境が異なる日本で、同じ方法は可能になるのでしょうか。
吉田 20億年前の地層がなければできないということではありません。日本の地質は基本的に不均質で、若い地層から数千万年、数億年という古い地層まであります。100万年程度の若く未固結の地層ではダメですが、それより古く固結していれば、十分候補になり得ます。
日本では1970年代からの検討を経て、1999年に日本でも地層処分が可能という報告が出ています。
地層処分には数キロ四方程度の地下空間を必要とするだけですから、火山、活断層といった場所から距離を置くなどして選別していけば、地質環境的に適した場所はあると私も考えています。
こう言うと、原発推進派のような言われ方をすることもあるのですが、原発の推進、反対とは関係なく、あくまでも地質の研究者としての考えです。
議論のたたき台としての科学的特性マップ
──政府が提示する「科学的特性マップ」は、日本のすべての地域が「好ましくない特性があると推定される(オレンジ、シルバー)」「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い(グリーン)」など、4つに色分けされます。これは、地質学の観点からみるとどのような意義があるのでしょうか。
吉田 処分地を決める議論を始めるにもたたき台が必要です。このマップは、そのたたき台として自分たちが住んでいる国土を理解することにつなげようと、約2年半かけて議論を進めてきました。
一般の多くの方は、地上よりも地下の方が不安ということかと思います。知らないということが不安につながるのだと思います。
マップを通じて、科学的に分かっていること、分かっていないことの両面を広く共有していくことで、処分の実現に向けた議論が進んでいくことを期待しています。
──具体的にどういった調査をしたのでしょうか。
吉田 科学的特性マップは既存の情報を取りまとめたもので、新規に調査したものではありません。
例えば、120年の歴史がある日本地質学会から出しているリーフレットがあります。昔から資源の埋蔵を知るためにも地質を知ることは重要とされ、過去のデータが集積されています。
火山や活断層、鉱物資源の位置など、地層処分に関連する様々な基礎データを組み合わせて、そのような懸念材料が少ないところを示すというのが、今回のマップです。最終的には、200万分の1の日本地図の形で発表される予定です。
このマップは科学的なエビデンスです。自治体に、活用できる部分は例えば防災用のデータなどとしてもぜひ活用してほしいと思います。
「マップが出たら決まり」ではない
──予定よりも、科学的特性マップの提示に時間がかかっているようです。
吉田 後世に残せるきちんとしたものを出すため、日本地質学会など関係する学会や国際機関でレビューを受けるなど、慎重に進めています。
日本のような変動帯の地質環境は 、地球上ではイタリア、トルコ、アメリカ西海岸などにも存在します。そうした環境の中でのマッピングの公表は初めてのことですから、提示後は国際的にも注目されていくことになるでしょう。
──科学的特性マップの「好ましくない特性があると推定される」「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」という表現は、随分と持って回った言い方ですね。
吉田 当初は「有望地」という言葉を使っていたのですが、それでは最終的な適性が保証され、処分地として決まってしまうような印象を与えかねない、との指摘を受けました。
本当に安定した地点を見いだすためには、綿密な現地調査が必要です。言葉の印象だけで誤解を与えるようなことを極力避けて、「これから調べていく」「そのために必要な客観データ」というメッセージが伝わるように正確な表現に見直した結果です。
公開後は、マップを元にざっくばらんに国民と対話できるようなコミュニケーションが重要になります。そのためには、国もNUMOも各地でわかりやすい説明をしなければなりません。
自然に委ねることで責任を果たす
──今私たちが決めたことが何万年も先まで責任が取れるのだろうか、と考えてしまいます。
吉田 素直なリアクションだと思います。責任は負えないですよね。私たちが生きている間だけでは責任が負いきれないから、自然に委ねるのです。
石油・石炭などを含むさまざまな鉱物資源は、すべて地下環境中にあります。これは、地下環境が、数百万年、数千万年以上もの間、それらを地表風化から守り、保持する力を有しているからに他なりません。この自然の持っている地下環境の働き・仕組みに委ね、その力で数万年だけでも隔離してもらおうということです。
地球科学的に、地上は非常に物質循環が激しい。それに対して地下は非常に安定しています。そもそも地下が安定していなかったら化石が出てくることもない。
最初に述べた、地層処分が自然から学んだアイデアだということを思い出してほしいのです。
すでに地層処分の候補地を決めたフィンランドやスウェーデンの人たちは、国土がいずれ氷河に覆われることを理解しています。
3000mの氷河に覆われたら氷の上か氷の中に住まなければ町そのものが存在しない。そんな未来が見えている状態では、放射性廃棄物を地上に置いてどうする、という話になります。
ちなみに氷河期になると、日本は、水が150mくらい引いて大陸棚くらいまでは国土になるでしょう。瀬戸内海も陸になります。それが最低でも200年、もしかしたら1000年続くかもしれません。そこまで長く考える必要があるのです。
科学的特性マップの発表を受け、まずは日本の国土のことや地下の世界の特徴を知り、地層処分への関心を高めてほしいと思う次第です。
増田寛也(ますだ・ひろや)野村総合研究所顧問・東京大学公共政策大学院客員教授。1977年東京大学法学部卒業、同年建設省入省。1995年より岩手県知事を3期務め、環境政策を推進する。2007~08年総務大臣。2009年より野村総研顧問、東京大学公共政策大学院客員教授。2013年より総合資源エネルギー調査会 放射性廃棄物ワーキンググループ 委員(2013~2016年は委員長)を務める。
──増田さんはこの最終処分、地層処分の議論に長年関わってきました。
増田 2013年から、最終処分の問題について議論する経済産業省資源エネルギー庁の「総合資源エネルギー調査会 放射性廃棄物ワーキンググループ」の委員長を務めていました。
2016年に委員長は降りていますが、その後も委員として活動しています。最終処分政策の見直しに向けた中間のとりまとめなど、かなりの部分は委員長として関わっています。
──最終処分についての議論の経緯を教えてください。
増田 日本では、2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が成立し、処分事業の実施主体として原子力発電環境整備機構(NUMO)という組織が設立されました。必要な資金は、発電事業者がNUMOに拠出します。
候補地選定に向けた調査を受け入れていただける自治体を公募していたのですが、東日本大震災と福島の原発事故が起きました。原子力に対する諸々の信頼が崩れ、単に待っているだけで手を挙げてくれる自治体が出てくることは考えられなくなってしまったのです。
「なぜうちなのか」の疑問は絶対に出る
──総合資源エネルギー調査会 放射性廃棄物ワーキンググループの設置は、震災後の“仕切り直し”なのでしょうか。
増田 そうですね。2007年、高知県東洋町の町長が、処分候補地選定調査の第1ステップである「文献調査」を受け入れるという発表をして町全体が大騒ぎになりました。
高知県知事、徳島県知事も反対を表明、町長選挙に発展した結果、現職の町長が落選し、調査への応募は白紙撤回になりました。
町民の立場に立てば、地層処分とは何なのかほとんど聞いたことがなかったし、全国の中で自分たちの町がどれくらい適した場所なのかを示す根拠もなかったのです。自治体の自主的な挙手を募るのなら、地層処分事業とはどんなものかを広く周知した上で、議論のための科学的なデータも積極的に示していかなければならない。
私は当時、岩手県知事でしたが、例えば産業廃棄物の処理施設を作るとなった場合、候補地では必ず「もっと適したところがあるのでは 」という意見が出ます。その際、根拠を示して、対話で理解を深めなければなりません。
また、建設に際して、周辺地域にはこういった影響が出るかもしれません、地域社会に貢献できるようこうした用意があります、という説明もする。良い点・悪い点両方の説明がないと、次へは進めません 。
全国が4つに色分けされる意味
──近く、「科学的特性マップ」が政府から発表される予定です。このマップの意味を教えてください。(NewsPicks注:科学的特性マップは7月28日に発表されました)
増田 マップの目的は「まず、みんなで勉強をしましょう」ということです。マップでは、日本全国が4色に色分けされます。
地層処分の科学技術的な側面について多くの方がご存じではない中で、地図を見ながら「この場所の色はどんな意味なのだろう」「火山や活断層はどのように分布しているのだろう」と、行政関係者だけでなく、一般の人もかなり関心を持つでしょう。
原発事故の後、原子力に関わる人たちと一般国民の信頼関係が崩れてしまった今、「勝手に決めている」「情報を隠している」といった、信頼関係を損なうことは決してあってはなりません。原子力の話は難しいですし、原子力発電所などの施設がある自治体と施設がない自治体では、住民の知識にも差があります。時間をかけなければなりません。
さまざまな疑問や要望が出されるかもしれない。それらに丁寧に答え、科学的な知見や海外の事例などの情報も伝えながら、対話し、再び信頼を積み上げていくしかありません。
再稼働と最終処分地の問題は分けて考える
増田 原発再稼働に反対する方の中には、「核のごみ」の最終処分の話が前進すると、結果として再稼働を進めてしまうことにならないか、と懸念している人もいます。
しかし、すでに再処理された分を合わせて、「ガラス固化体」は約2万5000本相当存在することになります。とにかく、あるものを何とかしなければなりません。
我々の世代は、今まで原子力発電の恩恵を受けていたにもかかわらず、最終処分に対する責任を果たしていません。難しい問題を次世代に先送りにしてしまう、これは(年金をはじめとした)社会保障と並ぶような大きな世代間問題だと思います。
ただし、処分事業は長い期間にわたるものですから、私たちが生きている間に全てを見届けることはできません。将来、今の方法よりもっと良い方法が開発されるということも(現実的な選択肢としては世界中どの国も持ち合わせていませんが)あるかもしれません。このため、地層処分と決めずに暫く地上で保管を続けたらどうか、という声もあります。
しかし、現時点で最適とされる地層処分の実現を目指すことと、将来世代が選択し直す余地を残すということは、二者択一ではなく、両立できればより望ましい。こうした観点から、私たちの審議会では、地層処分を前提にしつつ、一度廃棄物を地下に運び込んだ後でも一定期間は回収可能なようにしておくことで、将来世代の選択の余地を残すべきと考えました。それが国の新たな方針にも反映されました。
そのような工夫をしながら、難しい問題であろうとも最善を尽くし、道筋をつけていく。原子力に対するスタンスの違いを超えて、そうした世代責任の意識を共有することが、いま求められていると思います。
(聞き手:久川桃子 構成:阿部祐子 撮影:北山宏一、的野弘路 デザイン:九喜洋介)