読売と巨人の特別な関係。「球界の盟主」再建への道筋

2017/6/23
読売新聞社にとってプロ野球は社業――。同社ではそう考えられているというが、巨人はプロ野球界において特別な存在だ。その特殊性を理解せずして、常勝軍団復活への道は見えてこない。元読売新聞記者でアゴラ編集長の新田哲史氏が内部事情を語りながら、再建策を模索する。
NewsPicks(以下NP)編集部から本稿の依頼を受けたとき、正直なところ気は重く、速筆を自任する自分としては、最近では記憶にないほど筆が鈍った。
読売新聞で数年、野球記者だったとはいえ巨人担当の経験はない。退社から7年が経ち、いまは政治・選挙分野やネットメディア運営を軸足にした活動にシフトしているので面映ゆい。
巨人軍を経営面から語るにふさわしい在野の読売OBで、私よりはるかに適任な人材はいるはずだが、昨今の野球人気低下で、読売社外では巨人軍にまつわる「誤解」も多く、誤った認識に基づいた“改革”志向の言説もネット上でよく見かける。
義憤に駆られたこともあり、読売新聞で野球関係の仕事をしていた者であれば、誰でも言えることを中心に書くことにした。
以下は、ピッカーの皆さんが巨人軍の経営改革や球界の構造改革を議論する際の基本的なファクトとして参考にしてもらえれば幸いだ。

初代の筆頭株主は意外な会社

まずは基本中の基本から。読売新聞グループの中での新聞事業と巨人軍との関係性のおさらいだ。
意外に思われそうだが、戦前、巨人軍が発足した当時の運営会社、株式会社・大日本東京野球倶楽部の筆頭株主は京成電鉄だった。
読売新聞は複数の私鉄や吉本興業などと並ぶ株主の一員に過ぎず、いまでいう「スタートアップへの共同出資」だった。そして、戦後まもなく、読売新聞が株式を全面的に買い取り、幾度かの社名変更を経て、読売興業株式会社の名称で巨人軍を運営するようになった。
渡辺恒雄会長が近年語ったところによれば、巨人軍の経営は創設から25年間赤字だったようだ。読売新聞の子会社化して草創期の球団事業を支えた。