C・ロナウドとピコ太郎から考えた、一意専心と多動力

2017/6/20
毎年のことですが、長いようで短い欧州サッカーのシーズンが終わりました。
欧州サッカークラブの頂点を決めるUEFAチャンピオンズリーグに携わってから、毎年慌ただしくあっという間にシーズンがすぎていくのですが、今回で、何と自身11回目のチャンピオンズリーグ決勝でした!
今年は、ウェールズの首都カーディフにて決勝が行われたのですが、毎度のことながら、貴重な気づきや学びがありました。
「2シーズン続けて優勝したチームがいない」というチャンピオンズリーグ創設以来のジンクスを見事に破り、レアル・マドリードが史上最多の11回目の優勝を決めたのですが、大舞台で2得点を決めたエースのクリスティアーノ・ロナウドの勝負強さが際立った試合でした。
そのチャンピオンズリーグ決勝という大舞台に、日本からスペシャル・ゲストが来てくれました。スカイパーフェクトTV(スカパー)と一緒に、チャンピオンズリーグ決勝プロモーションをして下さったピコ太郎さんです。
ロナウドとピコ太郎というまったく異なる性質の2人のパフォーマンスを生でそばから見ていて、共通点を見出したというか、とても勉強になりました。

得点に一意専心するロナウド

レアル・マドリードとユベントスの両雄譲らない緊迫した状況の前半途中に貴重な1点目をたたき出し、さらにもう1点決めたロナウドは、やはり世界的な点取り屋であり、ある意味、彼の一人舞台になったと言えるかもしれません。
しかし、試合を見ていた人は感じたと思いますが、点を取る前(もっとクリアに言うと、点をとる以外のところ)は、ロナウドは、活躍というかチームへの貢献をほとんどしていない感じでした。
決して調子が悪かったわけではないと思います。チャンピオンズリーグに携わって以来、多くの彼の試合を生観戦していますが、実は、最近のロナウドは、いつもこんな感じのプレーぶりなのです。
鹿島アントラーズとの激闘を制した2016年クラブワールドカップ決勝@新横浜の記憶がある方もいるかもしれませんが、得点以外のところで大した貢献や活躍をしていないのが最近のロナウドなのです。
サッカー選手として体力的にベストとは言えない30代ゆえ、プレーぶりを変えざるを得なかった、もしくは意図的に変えたと言う人もいます。
そうかもしれません。
しかし確実に言えるのは、彼は、自分の「最も得意なこと(=得点すること)」に、全身全霊を注ぎ集中しているのです。「最も得意なこと」にフォーカス(=一意専心)することによって、「チームに貢献(=バリュー「価値」を創出)」しているのです。
前線からのディフェンスや体を張ったポストプレーや他の選手へのアシストなどはほとんどありません。
すべてのプレーに真面目にひたむきに頑張りすぎる日本人選手とは、まるっきり異なるスタイルなのです。

多動力と一意専心

この「一意専心」は、ホリエモンこと堀江貴文氏が最近著書で唱えた「多動力」などとは、対極的なやり方とも言えます。
私自身も、テレビ放映権セールス、スポンサーシップ・セールス、新規ビジネス開拓、本やコラムの執筆、講演、アドバイザリー、大学院講師、旦那、パパなどいろいろなことをしており、マルティ・キャリア的な感もあるかもしれません。ある意味、「多動力」的な生き方をしているのかもしれません。
しかし、チャンピオンズリーグ決勝というクラブサッカー最高峰の試合にて、見事なまでに「一意専心」を貫きかつダントツの成果を見せつけるロナウドを見て、改めて「一意専心」の力を感じざるを得ませんでした。
「一意専心」の力に関しては、「人より先に始める」「あきらめずに長く続ける」という感じで、本連載の前回「広瀬一郎さん追悼」にても、かなり文脈は異なりますが少し似たようなことを述べました。
また、昨年に日本でも出版された米国ジョージタウン大学カル・ニューポート准教授の著書「Deep Work(大事なことに集中する)」においても、似たようなことが述べられています。
要するに、超情報過多社会となり気が散るものだらけのこの世界において、「成果を出す」「生産性を最大化する」ためには、「一意専心」が有効であるという論理です。
これに関しては、少し背景が異なりますが、最近アメリカにおいて、ADD(=Attention Deficit Disorder)に関する研究が進んでいます。インターネットやスマホの普及に伴い、IQ的には問題ないにもかかわらず注意力に問題を抱える学生たちが最近増えてきたことが背景にあります。
超人的な才能を持った天才や秀才であれば別でしょうが、私含め多くの普通の人間にとっては、「一意専心」したほうが「成果」を出しやすいのは自明です。
さらに言えば、「一意専心」で「一つのことを極める」ことができれば、その方法を利用して、新たな分野にてパラレルもしくはマルティ・キャリアを築くことも可能だと思います。
一つも専門分野や極めた分野がなく、すべてにおいて「50~70点人間」では、周りに対して大した「成果を出す」には至らず、結局は、「多動力」にて述べられている境地に至らない気がするのです。
なぜならば、仕事とは、自分ではなく周りが認める「バリュー(=価値)を出す」ことができて初めて、対価が支払われるものだからです。
ロナウドは、それを「得点する」という最も「価値」が見えやすいことに「一意専心」することによって、世界のサッカー界に君臨しているのです。

世界で圧倒的人気のピコ太郎

ロナウドの圧倒的な「成果を出す」力を目の当たりにしたカーディフの決勝にて、もう1人、「一意専心」の力を感じさせてくれた人がいました。ピコ太郎です。
仕事柄、日本の有名人に海外でお会いする機会が結構ありますが、ピコ太郎は、今までお会いした日本の有名人の中で、海外で断トツに人気のあるセレブでした。
スカパーとともに今回の決勝のプロモーションをして下さったので、結構行動をともにしたのですが、サインや写真を求めるファンが殺到して、まず一般道は歩けない程の人気でした!
一般人だけでなく往年の名選手たちにも大人気で、こちらからお願いして写真を一緒に撮るだけでなく、写真撮影のお願いまでされていました。しかも、あの神様ジーコに至っては、一緒に撮った写真を、自分の公式Facebookページにうれしそうに載せていました!
ジーコのフェイスブック公式ページより
では、ピコ太郎の何がすごいと思ったのか。やはり、「一意専心」の力です。
ご存知の方も多いと思いますが、ピコ太郎は、お笑いタレントかつDJの古坂大魔王さんが演じている「ピコ太郎」というキャラクターです。PPAPの歌というかダンスは1分半にも満たず、その背後に潜む努力というか演出は、はたから見るとわかりにくいかもしれません。
しかし、現地で、産みの話を伺ったり、海外ファンの間での圧倒的な人気を目にしたりすると、古坂大魔王さんが考え抜いて実践している「一意専心」の力が浮かび上がってきました。
ピコ太郎が人気なのは、ある意味、言語化がいらない非言語的で「シンプル」なキャラが際立っているからです。世界の他の誰も出せない際立つキャラを出しているゆえ、「バリュー(=価値)を出す」ことができているのです。
• シンプル(=簡単に誰でも認識できる)
o 世界のどこの国の子どもだろうと覚えやすい楽しい歌と振り付け
o 世界のどこで見かけてもわかる見かけと衣装
さらには、あの見かけと衣装に加え、日本人離れした190センチ近い堂々とした体躯ゆえ、とにかく目立つ。イタリアが世界に誇ったあの長身DFマルコ・マテラッツィと並んでも、まったく引けを取らない存在感でした!
この「シンプル」な際立つキャラが、インターネット&ソーシャルメディア時代にうまく乗っかり、「ピコ太郎」は世界的なヒットとなったのです。
しかも、その成功はいくらかの幸運はもちろんあるのでしょうが、決して偶然ではないと思います。
「練習場に最初に来て最後に帰る」と言われるロナウド同様、古坂大魔王さんも、とても研究熱心です。インターネット黎明期にインターネットの持つポテンシャルに気付き、長いこと企画を温めプロデュースして世に出したのが「ピコ太郎」なのです。

Power of Concentration

「得点する」ということに「一意専心」するロナウド。
「世界中の人にわかりやすいシンプルで際立つキャラ」の演出に「一意専心」するピコ太郎。
世界最高峰チャンピオンズリーグ決勝にて、まったく異なる二人から「一意専心」の力を、改めて学ばせていただいた貴重な機会となりました。
私も、「W杯を日本で再開催して日本代表初優勝!」という夢に向かって、改めて「一意専心」で進んでいこうと決意をお新たにした次第です!
(写真:VI Images via Getty Images)