(Bloomberg) -- 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が今後10年程度で過去最大となる1万人規模の人員削減を検討していることが分かった。超低金利の環境下で収益性が低下する中、金融と情報技術(IT)を融合したフィンテックで業務合理化を進め、店舗の閉鎖や軽量化などによって余剰人員削減につなげる方針。MUFGの社員数は世界で約14万7000人おり、約7%の人員カットとなる。

事情に詳しい複数の関係者が、情報が非公開であることを理由に匿名で明らかにした。削減する1万人には、MUFGの平野信行社長が昨年表明した傘下銀行で採用抑制と自然退職などで総合職3500人を減らす計画も含まれているという。人員削減は中長期で実施する計画だが、加速させる可能性もある。削減のほか事務合理化で生じた余剰人員は営業職に振り向けていく予定だ。

日銀によるマイナス金利政策の下で、本業の融資などからの収益性低下が経営課題として浮上。MUFGは5月に組織内再編を盛り込んだ「再創造イニシアチブ」を公表し、コスト削減策を打ち出した。フィンテックの進展でバックオフィスなどの事務効率化を進めるほか、フルサービスの営業店を見直してデジタル化した軽量店舗とすることで人員削減につなげる計画を示している。

MUFG広報の北浦太樹氏は、人員や店舗見直しについて「デジタライゼーション活用による業務量の削減などさまざまな検討を行っている」と述べた。

MUFGが取り組む再創造イニシアチブは、人件費抑制を中心に1200億円のコスト削減を図る一方で、粗利1800億円を増強することによって合計3000億円の営業純益増を計画に掲げている。グループ内再編では、傘下の信託銀行が持つ取引先数約2600社、約12兆円の法人融資業務を商業銀行に移管する計画。グループ内で業務を分担し、一体経営で効率化し収益力を強化する狙いだ。

フィンテックの進展や店舗政策の見直しによる人員削減は三井住友フィナンシャルグループも取り組んでいる。5月に公表した3カ年の新中期経営計画で、店舗のデジタル化や事業の効率化などで人員削減効果を約4000人とし、これらは営業部門エリアに再投入する方針。三井住友Fでは、店舗改革などで中長期的に1000億円のコスト削減効果を狙っている。

平野社長は15日の全国銀行協会長会見で、マイナス金利下の銀行経営について「預貸金利ざやの縮小や少子高齢化など構造的な問題が顕在化する中、フィンテックに代表される新たな技術を取り入れ、従来型の預貸ビジネスを超えたソリューション提供機能を進化させるなどビジネスモデルの変革が必要」と述べていた。

海通国際証券集団のアナリスト、マイケル・マクダッド氏(東京在勤)は、MUFGの人員削減や業務の見直しについて「非常に大きな動きだ」と述べた。その上で「日本の金融機関が直面している課題を良く理解した上で、その先を見越した取り組みだと思う」と話した。

MUFG株は16日、前日比2.1%高まで上昇した後、1.1%高の722.6円で取引を終えた。

(第8段落にアナリストコメント、第9段落に株価を追加しました.)

記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 河元伸吾 skawamoto2@bloomberg.net, Tokyo Gareth Allan gallan11@bloomberg.net.

記事についてのエディターへの問い合わせ先: 中川寛之 hnakagawa11@bloomberg.net, 持田譲二

©2017 Bloomberg L.P.