[ロンドン 15日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行、BOE)は15日、市場予想通り、政策金利を0.25%に据え置くことを決定した。ただ、英景気に減速の兆候が出ているにもかかわらず、予想外に3人の政策委員が0.5%への利上げを支持し、2007年以降で最も利上げ決定に近い投票結果となった。

今回は、これまでも利上げを主張してきたフォーブス委員にマカファーティー、ソーンダーズ両委員が加わった。

カーニー総裁を含む5人の委員は据え置きを支持した。

第1・四半期の英国内総生産(GDP)成長率が低調だったこともあり、ロイターが実施したエコノミスト調査ではフォーブス委員のみが利上げを支持すると予想されていた。

メイ首相が欧州連合(EU)離脱交渉を進める中で安定政権を維持できるのか不透明感が強い中で、中銀内でも意見の相違が鮮明になったことで、金融政策の先行きは一層見通しづらくなった。

ソシエテ・ジェネラルの債券ストラテジスト、ジェイソン・シンプソン氏は、金融市場は来年6月までの利上げの確率を約50%織り込んでいると話す。今週のより早い段階では20%程度だったという。

ただ、エコノミストの多くは、向こう2年は利上げがないと予想する。

金融市場は不意を突かれた格好となり、ポンドは対ドルで急伸する一方、英10年債利回り<GB10YT=RR>は8ベーシスポイント(bp)上昇した。ただ、近い将来に過半数の中銀当局者が利上げを支持するか懐疑的な見方が強まり、ポンドはその後、押し戻された。

金融政策委員会(MPC)の委員3人が利上げを支持したのは2011年以来だが、当時は9人が政策委員を務めていた。前回1票差で決定が逆転していた可能性があったのは、5対4に票が割れた2007年6月。

インベステックのエコノミスト、フィリップ・ショー氏は「景気の弱含みが長引く兆しが出ており、賃金の伸び悩みも鮮明となる中で、3人が利上げ支持に回ったのは驚き」とし、「この状況では、長期のインフレ圧力が何に起因するのかを見極める必要がある」と話す。

HSBCのエコノミスト、エリザベス・マーティンズ、クリス・ヘアの両氏は「先の総選挙では予想外に(いずれの政党も過半数議席に届かない)ハングパーラメントとなったが、今度は金融政策委も意見が真っ二つに割れていることが明らかになった」と指摘。「今後は政策決定の票が割れる事態がしばらく続くだろう。政治の不確実性、景気の勢い失速、賃金の伸び低迷といった状況と利上げの論拠を比較検討していくことになる」と述べる。

<インフレ高進>

前回5月の会合以降、インフレ加速とポンド一段安が中銀の大きな懸念材料となっている。ポンドは前回会合以降、2.5%値下がり、EU離脱を決めた国民投票以前の水準からは13%下落した。

中銀は5月の英消費者物価指数(CPI)が前年比2.9%上昇したことを踏まえ、秋にはインフレ率が3%を上回るとの見通しを示した。中銀はインフレ目標を2%に設定している。

また、前週の総選挙でメイ首相率いる保守党が過半数議席を割り込み、ポンド安が進んだことを受け、物価高がさらに進行する可能性があると指摘した。

第1・四半期の英GDPは、賃金が伸び悩む中でインフレが高進したことが重しとなり、伸びが大きく鈍化した。

ただ中銀は、消費者信頼感がなお堅調であることを踏まえればこうした成長鈍化がどの程度続くかは不透明だとし、投資や輸出に関する経済指標も好調なようだと指摘した。

中銀は「雇用成長の持続は、余剰能力が減少し、MPCとして均衡化させるべきトレードオフが小さくなっていることを示唆している可能性があり、他の条件が同じであれば、インフレのオーバーシュートを容認するMPCの余地は狭くなる」とした。

その上で「今後、適切な金融政策スタンスを判断する上で主要な検討事項となるのは、インフレ圧力の動向に加え、消費軟化の持続性、および需要を構成する他の要素によってそれがどの程度相殺されるかだ」と指摘した。

今後は、将来の金融政策委員会のメンバー構成が焦点となる。

利上げ支持派のフォーブス委員は今月末で任期満了を迎える。ハモンド財務相は先の総選挙のため、フォーブス氏に加え、利益相反問題を報告していなかったとの批判を受け副総裁職を辞任したホッグ氏の後任もまだ任命していない。

(※原文記事など関連情報は画面右側にある「関連コンテンツ」メニューからご覧ください)