大規模な企業や組織向けに卓越したソリューションを提供し続けるドリーム・アーツ。同社代表、山本孝昭氏は、ビジネスの場において「現場」「現実」「現物」「本人」に触れなければ、本質的なことを感じ取ることはできないという点から、徹底した「現本主義」を提唱し、顧客と直接現場で対話し、ふれ合う。他に類を見ないアナログ重視のシステムソリューションプロバイダーは、なぜそこまで「現場」にこだわるのか? その理由を探るべく、著書に「現場力を鍛える」(東洋経済新報社)等を持つ、ローランド・ベルガー日本法人会長であり、ドリーム・アーツの社外取締役でもある遠藤功氏と対談してもらった。
大事なのは現物に触れること
遠藤:日本の企業が世界で戦って行く為に、とても重要な競争力の源泉となるのが、現場力だと考えています。そして、ドリーム・アーツも、現場力を大事にするという考え方が根底にあり、とても共感できるというところからお付き合いが始まり、共著で出版させて頂いたり、ドリーム・アーツの社外取締役に就任したりといった関係に発展しました。
山本:あるとき、たまたま読んでいた本の中に遠藤先生の著書があって、それを読んで大変感銘を受けました。『現場力を鍛え上げることによって、企業に本質的な強さが宿るのだ』という先生の考え方がピタっとハマりまして。大事なのは現場へ行って、現物に触って、そして人と人の間に漂っている空気や、現場にある気とか匂いみたいなものから何かを察知すること。それを、仕組みや仕掛けに昇華させることだと思うんですよね。つまり、アナログな感覚こそ大事だということです。
遠藤:私は以前から経営コンサルタントとして様々なクライアントの改革を支援してきましたが、中にはどうしても上手く行かない企業もある。よく考察してみると、現場にその気がなかったり、能力がなかったり、熱気に欠けているんですね。やはりそこを是正しなければ、どれだけ卓越した戦略を考えてもそれは形になりません。実行を担う現場から経営を立て直していかないと、多分未来はないんだろうと。山本さんが私の著書を読んで共感して頂けたということは、やはり同じ様なビジョン、思いを持っていたからなのだと思いますね。
山本:戦略よりも大事なのは現場です。仮説である戦略は常に相対的であって、より優れた戦略が突如として現れた瞬間に、それまで良いと思っていた戦略の価値は激減するものです。しかし、現場はそうではない。たとえライバル会社に突如として良い現場が現れたとしても、こちらの現場が目減る訳ではありませんよね。
遠藤功(Isao Endo)株式会社ローランド・ベルガー日本法人会長
著書に『見える化』(2005年、東洋経済新報社)や『新幹線お掃除の天使たち~「世界一の現場力」はどう生まれたか?』(2012年、あさ出版)、『五能線物語~「奇跡のローカル線」を生んだ最強の現場力』(2016年、PHP研究所)ほか多数。

遠藤:戦略は真似することが容易ですが、現場力を真似することは非常に難しい。そういった意味では、経営において、より競争の核となるのは「実行」の部分なんです。実行する能力が高ければ、時代、環境の変化にはもちろん、新しい戦略にも対応できる。実行できる現場力を経営のど真ん中に置くべきだと思います。
山本:我々はIT企業ですが、いかに良質なアナログ時間を確保するかが大事だと考えています。実際に現場へ行って、人と会って話をする。圧縮できる業務はできる限り圧縮して、それ以外をアナログ時間にあてて欲しいという思いから、様々なサービスやツールを展開しています。
遠藤:そういう点に着眼しているところが、山本さんに共感するところです。現場に重きを置いた考え方をしているIT企業というのは中々ありませんしね。
熱量が多い企業ほど、良い結果を生む
山本:我々は欧米で先行するキーワードやテーマを追随している会社ではありません。そういったものをより良く模倣して日本流にしましたという時代はもう終わったと思います。それより既存のものを疑い、考え、新たに生み出すという行動。それも現場力だといます。
遠藤:欧米とは基本的に考え方が違いますよね。だから欧米を模倣したところで日本人にとって役立つシステムを生み出すのは難しいと思います。最近ではその点に対する問題意識が高まりつつありますよね。
山本:そうですね。少ない時間、人材で、より価値の高いものを生み出さなければならない訳ですから。大事なのは『質』でしょう。
遠藤:そう、体格より体質で戦うべきです。その体質というのがズバリ現場力のことなんです。現場を見れば、体質の良さが分かると思うんですよね。
山本孝昭(Takaaki Yamamoto)株式会社ドリーム・アーツ代表取締役社長
遠藤功氏との共著書として 、『「IT断食」のすすめ』(2011年、日経プレミアシリーズ)や『行動格差の時代 心の勢いで壁を突破する8つの力』(2013年、幻冬舎)
山本:そういった意味で我々は、現場に良質なアナログ時間を増やすことを貢献するためのツールを作るというのが、全サービスに共通した意図です。例えば、最新のサービスである『知話輪(ちわわ)』※1が持つコンセプトは『意識共有』なんです。具体的な情報ではなく、各々が持つ感覚や感情、知性といった意識を共有し合って欲しいという思いが込められています。おそらくそういった商品コンセプトだからだと思いますが、 自らリスクテイクしてでも新しい挑戦をしてみたいという熱量の多いお客さんがすごく目立ちますね。
組織における“意識”共有を促進するビジネスチャットアプリ「知話輪®」https://www.chiwawa.one
遠藤:その熱気というのがとても大事なのだと思います。私がこれまで見てきた事例をもとにすれば、良い会社というのは組織密度が高くて、組織熱量が多いというのが共通項でした。経営者の熱が社員たちにも伝わり、会社全体が熱を帯びている。オリンピックのリレー競技で日本が銀メダルを獲ったのが良い例ですね。個人では難しいけど、チームで戦略を考えて、しっかりと練習する。そしてそれを本番でいかんなく発揮したことによって大きな結果を生んだ。これぞ現場力でしょう。
「建設的な対立」は何を生む?
山本:先ほどの『知話輪(ちわわ)』の話に紐づくのですが、我々のコーポレートスローガンは『アーツ オブ コミュニケーション』なんです。良い対話がある組織やチームは現場力も高いものです。しかし、大事なのは対話する回数ではなく、質にあるという点です。そしてその質の高い対話を手助けするための我々の製品やサービス。そこにこだわってます。
遠藤:ドリーム・アーツの製品には知恵が詰まっている。現場が困っていることを解決できるメニューが盛り込まれているので、現場の方々からの共感性は高いですよね。そこがドリーム・アーツの強みですよね。
山本:さらに言うと、現場のことをつぶさに聞いて作っているだけじゃないんですね。聞いたことを聞いたまま具現化するのではなく、自分たちできちんと咀嚼して、問題を解決するために必要なことを議論した上で作り出す。つまり、現場間で遠慮があってはいけないんです。その上で掲げた今年のテーマが「建設的対立」。つまり、意味のある議論をしようということです。議論なくして良い製品・サービスは生まれません。
遠藤:私が考える現場力を鍛える7つの条件というのがあって、その中のひとつが正に「建設的な対立」なんです。意見をぶつけ合い、昇華することによって、より良いものが生まれてくる。つまり、対立がない現場は強くならないんです。相反する考えをぶつけ合う土壌がないと、単純に感情的な対立で終わってしまいますからね。
山本:部門利害のぶつかりではダメですね。共通目標に対して意見の違いがあるという時に、建設的対立が生まれるんです。
遠藤:普通の組織は対立を避けたり、対立が尾を引きます。だから結局『言わない』という選択をしてしまいますよね。つまり、「建設的対立」を実行するのは非常に難しいことなのです。でもそれをしないと現場力は高まらないし、新しいものは生まれません。
山本:それともうひとつ大事なのは、現場が活きるためには、良質なリーダーシップが必要だということです。起点はトップダウンであって、経営責任のもと指針が示されて、どこで賭けをするのか、勝負をかけるのかというエリアを決めて、ボトムアップで具体的に動いて行く。それを取り戻さなければならない時期にきていると思いますよね。
遠藤:例えば経営者が『こういうことをやりたい!』と言ったときに、現場へ行ったら『人はいないしお金もない』と。その場合、欧米は『できません』となります。でも日本の場合はそうではなくて、知恵と工夫で何とかしようとする訳です。それが現場力なんですね。さらに、日本の場合は「品質もよくて、コストも下げる」といったに二律背反の克服もやってのける。日本企業の現場にはとてつもない潜在力が眠っています。
山本:正にそういうことですよね。
遠藤:まずは現場力の重要性を理解し、経営者と本社、そして現場が一体となり現場力を高める努力を積み重ねることが大事です。
山本:リーダーシップと現場力が求められる時代ということでしょう。今回の募集についても、IT企業での就業経験よりも、弊社が唱える現本主義や企業理念を理解し、共感してくれる方が望ましいと考えています。
※1『知話輪®』は、エンタープライズに特化したコミュニケーションを支援する、タイムラインをベースとしたビジネスチャットサービス。組織における“意識”共有を促進し、現場からの働き方改革を支援する。詳細は、https://www.chiwawa.one を参照